対角 反響 Reflection ──表裏一体。重なる光陰──





Reflection





 深夜の薄暗いビルの屋上に真っ白な影が降り立つ。

 周囲の静寂を壊すことなく、そこにある空気と同化するように…


 …そしてそんな影を出迎える──もう1つの影。



「よぉ」

 軽く手を上げ降り立った怪盗へと声をかける探偵。
 その気軽な挨拶に、怪盗は内心で苦笑を浮かべつつ、

「これは名探偵。今日の警備には参加されていなかったはずですが…?」

と、返した。

「いつも言ってンだろ。オレは警備には参加しない」
「そうでしたね…、それでもこうして来て頂ける」
「…お前とのやり取りは楽しいからな」
「光栄です」

 フェンスに寄りかかりながら探偵らしからぬ言葉を口にする相手に、今度は隠すことなく苦笑を浮かべる怪盗。
 そして離れていた距離を埋め、そっと探偵の手を取る。

「それでは、今宵もこの怪盗に一時の幸福を、お与え下さいますか?」

 己の口元まで手を掲げ、口付ける直前で言葉を紡ぐ。


「……いつもの事だろ」

「ありがとうございます…」


 その仕草を自然に受け入れ当たり前のように答えた探偵に、怪盗はこれ以上にないほど幸せそうな表情でお礼を述べた後、そっと掲げていた手の甲へと唇を落とした…。



「…こんなことで『幸福』なのか? お前」
「私にとっては至上のお時間ですよ」
「そんなもんか? 意外と手軽だな、お前の『幸福』って」
「手軽なんかではありませんよ」

 首を傾げながら呟く探偵に、怪盗は当然のような顔をして否定する。

「私と貴方──探偵と怪盗。追う者と追われる者。暴く者と暴かれる者。…本来なら相反する位置に立つ存在です。それなのに、こうしてお傍に近付けて……言葉が交わせる」

 望んでも叶わないと思っていた、奇跡のような時間…

 だから、この時間はたとえ僅かであっても、自分にとっては『幸福』なのだと告げる怪盗。
 そんな怪盗の言葉に探偵がきょとん…とした表情を浮かべる。


「……お前、そんなこと考えていたのか…?」


 ややあって漸く言葉を発した探偵に、今度は怪盗が首を傾げた。
 しかしそれに構うことなく、探偵は言葉を続ける…。

「オレはお前が言う通り探偵だ。だけど、探偵であって警察じゃない。オレにとって重要なのは『法』じゃなく『真実』だ。自分が正しいと思ったことをする為に…『法』に縛られない為に探偵を名乗ってる」


 慧眼の蒼い瞳が、真っ直ぐに怪盗を見つめる。


「確かに、オレとお前は探偵と怪盗。立場は愚か立つ位置も正反対。相対どころか反発したっておかしくない」

「………」

「でもそれは、『法』と言う名の下での話だ。オレは、オレの思う『真実』の下でお前と接している。正反対でも、オレとお前は背中合わせにあると思ってる」


 何も言わない怪盗を気にする事もなく、探偵は自分の考えを言葉にした。

 それは探偵が常に思っていること。
 探偵にとって、目の前にいる怪盗は相対する立場の人間ではない。

 むしろ…自分と相手は裏表のような存在だと、そう思っている。


 そして、決定的な言葉を口にする──


「オレだってお前の立場だったら…取っていた行動はお前と同じだ」

「…っ!」

「だからさ…、今この時間だけじゃなくて、いつでも、オレといる時は『幸福』だって…思ってくれよな」

 苦笑を浮かべ、何処か照れた様子で呟く。


「……新一…」
「お前がオレの事解ってる様に、オレだってお前の事は解ってるつもりだからな?」


 昼間、何気ない会話の中で「快斗」がふと見せる表情。
 普段はしつこいくらいの連絡が、「キッド」の仕事の前には必ず途絶える。

 自分のしていることに、誇りと信念を持っていても…

「…解ったら、さっさと帰ってきて美味いコーヒーでも淹れてくれ」

 そう言いながら怪盗に背を向ける。
 今だ茫然としている怪盗は、視線でそれを追う事しか出来ない…。


「──あ。そーだ」


 出入り口の扉へと手をかけた時、何かを思い出したのか不意に探偵の動きが止まる。

 …そして、一言付け足して屋上を後にした──






 閉まる扉の音と共に、我に返った怪盗が笑い声を上げる。


 危険だから…巻き込まないようにと必死に隠していた事は、どうやら既に見抜かれていたらしい。
 それを思うと、なんて無駄な努力をしていたんだろうと笑いが止まらない。


 そもそも相手は稀代の名探偵と、色々と世話になっているお隣サンなのだ。


「…隠し通せる訳がない…ってね」

 それでも、自分が何も言わないから黙って騙されていてくれた2人。
 2人の大きさと暖かさに、思わず涙が出そうになる。
 でもそれを笑い泣きだと自分を偽り、最後に残された言葉をどうしようかと考える。


 ──まあ、とりあえずはさっさと帰って、美味しいコーヒーを淹れて差し上げなければv


 決めたら即行動とばかりに羽根を広げ屋上を飛び立つ。

 向かう先は昼間には毎日顔を出す立派なお屋敷。
 夜の訪問は初めてだけど、不思議と違和感がない自分にまた笑みが零れた。






「宮野も心配してたから、なんか貢物用意しておいた方が良いぞ?」





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【感激の涙と鼻水が溢れるお礼】←汚っ!

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 作成時間が短い上に本文も短く意味不明な点が多いのですが、コレを相互記念にお届けしたいと思います。宜しければお納めください(土下座)
 …あ。だからと言ってサイト掲載はしなくても構いません。はい。
 なんたって貴殿サイトのイメージとレベルを下げる事この上ない駄文ですから…;

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Whisper of Night 桜月 雪花 拝