新たな一年

数度目の三年生が今日から始まる。


去年はいままでで一番楽しい一年だった。
なにしろ大人から忌み嫌われた自分に分け隔てなく・・・っつーかナルト自身をかなり気に入ってくれていた二人がいたから。

片方は熱血げき眉リー・・・。なんっていうか濃かった。
とりあえず一緒に行動してて自分が薄いなぁと感じたくらいだからあいつは濃すぎたのだろう。
だが幾度となく護ってもらった。
大人からも、大人に毒された子供たちからも。

もう一人は何故かそのリーに気に入られたが故に一緒にいることが多くなった日向家のひねくれ者ネジ。
真面目で堅物。
間違いなく金勘定にうるさいだろうそんな男。
だが何か見事な一本が彼の中に通っていて、周りのヤツラがどれだけ止めても、周りのヤツラにいやみを言われても
鼻で笑ってそばにいてくれた。

そんな二人に挟まれて一年。
それはナルトにとって掛け替えのない大切な一年だった。

その二人が卒業。

今年ばかしはじっちゃんの言いつけ(火影の命令)破ってあの二人と一緒に卒業してやろうかと思ったが、それでも残り一年あの大量の旧家メンバーの護衛が待っていたから仕方ないと諦めたのだ。
俺以外にあの人数を気づかれず護衛できる奴なんているか?
シカマルくらいしかいねぇっての。

んでもってシカマルにあいつの入学式の時にきっちり言い渡された。



「どうやら俺の同期軍団の護衛は俺とお前の仕事らしいぜ。っつかよ俺任務どころかアカデミー通うことすら前日聞いたんだけどな」

しかめた顔でそう言い放ったのはあのアカデミーでの衝撃の出会いの後。
入学式の後にシカマルは三代目からこの任務を言い渡されたらしい。

「あーそういやもう一人後からつくって言ってたな」

と思いだしたのはその時。あんまり期待してなかったからどうせ俺一人で護るしかねぇんだってばーとか思ってた。
それがもう一人が相方なら負担もかなり違うってなもんだ。
っつかこの護衛に暗部のトップの2人使うってかなり贅沢な話じゃねぇ?

「っつーわけで黙ってたーーとかいって怒るなよ」
あ、先に言われちまった。
「だってよーせっかく隠しに隠しにひた隠してた俺の恥を・・・・」
「や、結構洩れ出てたからよ」
「ええっっでもシカマルびっくり仰天って感じたったじゃん」
「あーまぁ全開の"だってばよー"を目の当たりにしたのは初めてだったからな。誰だよお前?とか思っても仕方ねぇって」
「むぅ・・。そうだけど。んじゃもう隠す必要ないってばね」
「だな。」
「あー安心してしゃべれるってばよーーー」
「・・・・・・・ある程度は自嘲しねぇか?」

「だってさだってさ、一回使ったらすっげーくせになるのコレ。最初は気を付けて"だってば"を使ってたのにいつの間にか気を付けて"だってば"を使わないようにってなってたもんなぁ」
慣れってこわーい。

「まぁいいけど。とりあえずあの旧家のガキどもの護衛を俺一人に任せようとかしやがったら俺は夜の任務を放棄するからな」
・・・・わぁお。俺もしかして脅されてる?
そうなのかーしら?

「へっどっちかってゆーとシカマルの方がめんどくさがって俺に押し付けそうじゃんか。そしたら俺シカマルと口きいてやんないからなっ。」
「・・・・・へいへい。」
こちらの脅しのほうが効果的だったようだ。

勝った!と内心拳を握り締めた俺にシカマルは苦笑をみせた。
そんな訳で約束破ったら任務放棄されちゃうからなー。じっちゃん命令より怖いこわい。


俺は留年。
リーとネジは見事下忍に合格した。

来年はぜってー下忍になるからさ、中忍になるのは待っててくれってばよっ。
そんな約束をして。





新しいクラスメート。
今年はシカマルがいるから気分が違う。
とは言え共通点がないから近くにいても話せないけどさー。知らないフリしなきゃいけねぇけどさー。
でもやっぱりそばに居るってだけで精神が安定する。

斜め後ろに座ったシカマルの気配を感じ内心ほくそえんでいると隣に誰かが腰かけた。

「僕秋道チョージってゆうんだ。君は?」
誰もが何となく離れて座るというのに迷いなく真隣に座ったかと思えば突然話し掛けてくるへんな少年。
「へ?」
「なーまーえー」
「あ、うずまきナルトだってば。」
「そっかナルトお菓子好き?」
「うん」

あくまでニコニコと会話を続けるチョージにナルトはうろたえながらも即答した。あれ?
今呼び捨てされた?
あまりにナチュラルだったのでサラリと流してしまったが見事な違和感の無さにナルトは
驚いてしまう。
「よかったぁ。じゃ、食べる?」
ハイと差し出されたのは封があいたポテチの袋。

食べるって・・・
よもや初対面の人間から食べかけのお菓子を薦められる日がくるとは・・・

「い、いいってば?」
「うん。おいしいよー」
他意はなさそうなほのぼのした声音に恐る恐る一枚つまむ。
初対面の人から食べ物をもらうのは初めてかもしれない。それでも相手がシカマルの幼なじみでなければ理由をつけて食べなかっただろう。

「おいしいってば」


「よかった、これ僕のとってもお勧めのやつなんだ。ナルトって和菓子とかも好き?」
「うんっサカサの饅頭は絶品だってば!!」
「あっあそこのおいしいよね〜金魚の水饅頭とかすごくないっ」
「あれは芸術だってばよ!」
「だよね、栗の饅頭もおいしいけど羊羹も絶品だし」
「俺ってば栗キントンは外せないってば!」
「あっうんそーそー、お得な栗キントンセットは必須だよね!」
「5個であの値段は破格だってばよ」

どこまでもヒートアップする和菓子談義。ここまで気の会う和菓子仲間はなかなかいないっっ。

「最近出始めた芋のヤツ食べた?栗キントン好きなら絶対気に入るよ」
「え?あれ限定のヤツっ食べたことあるってば?」
「うん朝から並んじゃったよ〜」
「うわぁいいなー」
心からの呟きが漏れ出る。

「今度手に入ったらナルトの分も買っておくよ」
「マジ!?」
「うん。僕の幼なじみって和菓子食べないからさー一緒に食べよ」
ニコニコとそう言われナルトはまだ見ぬ限定の和菓子に心が高揚していくのを感じた。

「うんうん!食べるってば!」



一気に打ち解けた2人を背後で何気ないそぶりで見守っていたシカマルは

「・・・饅頭くれぇ俺が用意してやるのに」

ひそかにちょっと嫉妬していたり。


チョージ初っ端から全開です(笑)
モーレツアタックって感じ。