遠い日の誓い 1


その日俺は、めずらしく探検なんてものをしていた。


「へーこんなトコがあったんだな」
森の中。
小さな空間に花畑が存在していた。
色とりどりの花達は、シカマルの知識と示し合わせてみればどれも合致しなくて・・・

「なんだこれ?」
新種か?
と思わず興味を引くには最高の存在であった。

「イノが見たら喜びそーだな」
花好きの幼馴染の顔を思い浮かべるとフと笑ってしまう。
お土産にでも・・と思ったが、どーにもめんどくさい。
なにせ花だ。
切って持って帰れば怒るだろうし、かといって根っこから持って帰るなんてめんどくささの極み。

「・・・今度つれてきてやるか」
気が向いたらな。

そう思いつつ、きっとつれて来る事はないだろうとわかっていた。
なにせめんどくさい。
この森に入る事は実は大人から禁止されている。
更には結構深くまで入ってきているのだ。
連れてくる前にイノに「だめだって言われてるでしょっ」と怒鳴られること請け合い。

「あー・・・ま、いっか」
自分だけの楽しみとしてとっておこう。


それから花を踏みつけないようにゆっくり歩いて一通りの花をチェックする。

それに夢中で気が付いたときは夕日が木々の隙間から差し込んでいた。
「やっべ」
早く帰んねーと帰り道が真っ暗になっちまう。
ただでさえ初めて来た森。
明るさがなくなれば当然方向感覚も鈍り下手をすれば遭難・・・。
別に遭難にビビっているのではなく(たまにあの親父に森に置き去りにされたりしてるし←修行のいっかんらしい)問題は・・・

「母ちゃんがうるせぇよなぁ」
夕飯に間に合わなくても特に何も言われないが(夕飯が抜きになるだけ)朝帰りなんかした日にはもう。

『どこの女のところに通ったのシカッッッ。詳しくお母さんに教えなさいねっ。可愛い?美人?どこまでいったのっっ?』
なんてワクワク聞いてくるのだ。←過去経験有り
最近3才になったばっかだっちゅー息子にあんた何聞いてんだ?って感じだが。
あのしつこさにはヒッジョーーに辟易したのでもう2度とあんな目には会いたくない。


そこまで考え、慌ててしゃがみ込んでいた体を起こした時、

真正面のでっかい木の上に・・・太い枝に誰かが立っているのに気が付いた。
ジッとこちらを見ているその人物はどうやら子供らしい。

(ガキがこんなところに?)
自分のことを棚にあげそんなことを思う。


思わずこちらもジッと見上げているとその子供の様子が見て取れた。

髪は金。
まさかと思ったが見間違えようのないくらいに綺麗な金。
瞳は青。
キラキラ輝くその瞳。空と同じ色だと思った。

そして顔立ちは・・・・・・。



その日ナルトは生まれて初めて火影宅を抜け出した。
明日誕生日を迎えるナルトは、ただいま2才まっさかり・・ってか最後の2才デー。
だというのに育ててくれている3代目火影様という役職をもったジジィはメチャメチャ忙しそうで構ってくれない。
これは間違いなく明日の誕生日も祝ってくれないな。
とナルトは読んでいる。

悔しいが、悔しくて仕方ないが、それでも一応理解はしているつもりだ。
あの人が自分を大事にしてくれていることも。
今までかなりの無理をして自分に構ってくれていたことも。
それでもやっぱり・・・・・・。

「ムーーかーーーつーーくーーーーー」
のである。


「いいもんいいもん。ナル勝手にお外で遊んで知らない誰かと楽しくしちゃうもんねーーだっ」

なんて事思ってもいいじゃない?
なにせこんな陰気な屋敷に閉じ込められて、唯一の優しい手は離れていて。
気が重くてたまらない。
少なくとも運ばれたご飯には絶対手をつけないくらいには誰も信じてはいない。
最近まで一緒にいた3代目はまず最初にご飯の作り方を教えてくれた。
それは一重にこんなことを想定していたのではなかろうか?

「ふんっだ。今日はじっちゃんが好きなナル特製ヨーグルトスコーン作っちゃうもんねっ。一人で全部食べてやるーーー」

そんなこんなでナルトは作成したスコーンとジュースを片手に『知らない誰か』を求めて外へと出かけたのである。
一応大人はパス。なにせ危険だ。
そんじゃあ子供?
子供ってどんな生き物だ?
生まれてこの方大人以外見たことがないせいで全く想像が付かない。
一応ちっちゃいのだろう事はわかる。
後は・・・・どんなんだろう?
ちょっぴりワクワク、だいぶドキドキしながらの外出。

とりあえず3代目とよく散歩にきた森の中、一番大好きなお花の園へと向かった。
ちなみに人があまり来ない場所・・・である。
このときのナルトは知らない誰かに会う気はサラサラなかったのだろうと思われる。

「・・・・うげっ誰かいる」

せっかく花畑のところでオヤツ食べようと思ってたのに。

とりあえず手近な木の上で息を潜めて監視する。さっさとどっか行けーー。←知らない誰かと出会いましょ計画はいずこへ?

だがよくよく見ているとどうもその人物。

「・・・小さい?」
ようである。

あんな小さい生き物がこの世にはいるのかっ。って、あれがもしや「子供」ってやつ?
興味津々で見つめ続ける。

その子供はせっせと色んな花を観察しているようだった。
一々首をかしげている所を見ると知らない花ばかりなのだろう。
花好きとしてはうずうずしてしまう。
飛び降りて説明したくなってくる。
いや、駄目だ。あの「子供」って生き物がどんな奴かわからないんだからっ。

うずうずを押し殺し、危険な人物かどうか様子を見る。

黒い髪をギュッと頭の上にしばっている。まるでパイナップルのようだ。
興味深そうに花を見つめる黒い瞳は真剣で、でも時々優しく笑っているようにも見える。

こんなジックリ誰かを見たのは初めてかもしれない。

もうちょっと近くで、なんて好奇心がいけなかったのかもしれない。
ヒョイッと枝に飛び移り花畑に一番近い大きな木の枝にたった俺はその瞬間顔をあげた子供とばっちり目が合ってしまった。


(わ・・・)
驚いたなんてもんじゃない。思わず木から落ちそうになった上に、慌てて木にへばりついた姿をバッチリ見られてしまった。
はずいっ。
こんな失態他人に見られたの初めてかもしれない。

「お前・・・・」

自分に向けられた言葉。
自分に向けられた瞳。

それが嬉しくて。



「な・・・・なに?」

枝の上からちょっと身を乗り出してみれば
そのパイナップル頭の子供は真剣な顔で自分を見ていた。

それからおもむろに手元の花を掘り返し、根っ子ごと抱え、深呼吸を繰り返すと、


土まみれのそれを差し出しながら、とんでもない爆弾発言をかましやがった。



「はぁぁぁ?」




今度の驚きは凄すぎて、俺は面白いくらいに見事に枝からずり落ちた。





さて。以前言っていた2人の出会い編です。
シカマルの第一声は一体なんだったでしょー?
答えは次回でっすっ。
2006.1.10