遠い日の誓い 3

うおーー何やってんだ俺っ。もっと先に他に言うことあんだろっ。
なんでいきなし結婚!?

自分で本当に驚いた。だけど納得もしていた。

ああ、俺こいつとずっと一緒にいたいんだ・・・・。
親父とお袋みたいに一緒の家に住んでずっとずっと笑ったり喧嘩したりしたいから・・だから結婚・・ああ、なるほど。


なんて自分の言葉に今更頷いていると木の上の子供はポカンと口をあけていた。
それから

「はぁぁぁ?」

素っ頓狂な叫びと共にその子供は枝から滑り落ちた。
驚いたのだろう。


慌てて花を放り出し落下地点に駆け寄る。
体を張ってでも受け止めるつもりだった。

だがその子供は・・・


スタン。

見事な着地を決めてみせた。
あの高さから。
いきなり落ちたにも関わらず・・・。

やべぇ。こいつ俺より運動神経いい。
旦那としてピンチだろこれは。←気が早い


「えーっと。今何て言った?」
「は?」
「さっき言った言葉っ」
「ああ・・・・・結婚してくださいって」
「マジ?」
「一応。嫌か?」
「いやって言うより・・・ナルあんたのこと知らないし。」
「あーそうだよな。俺は奈良シカマル。お前は?」

そりゃそうだ。
名前すら名乗る前にプロポーズをしでかした自分が悪い。
居た堪れない気分で頭をかきながら名乗り、目の前の金の髪の子供に尋ねてみた。



生まれて初めて自己紹介と言うものをしたかもしれない。ナルトは思った。
姓から名乗るという初めての行為に、一瞬戸惑った。

「えっと・・・うずまきナルト」
「んじゃナルト。俺はシカマルでいいぜ」
「あ、うん。」
「ナルトさ、さっきあの上から綺麗に着地したよな」
「うん。それが?ってあーしまった。せっかくのスコーンがっっ」

シカマルのその言葉にようやく思い出した。

「あ?」
「おやつに焼いてきたの。さっきの衝撃でちょっと崩れちゃってるけど食べる?」

開いてみせる。
こんな気軽に対応したのはじっちゃん以外には初めてかもしれない。
っていうか絶対にさっきのワケわかんない言葉のせいだ。
なんかこいつは敵意がない。
むしろ結婚したいって言ってる。
それってさ、俺のこと好きってことだよね?・・・違うかな?

「いいのか?」
「うん。たくさん作ってきたし」
やけ食いしてやるーって思っていたから。こんな変な奴と一緒に食べるのもいいかもしれない。


「へー美味いっ」
「ほんと!?」
「ああ。甘すぎなくて美味い」

次々に手を伸ばしてくれることから本当に気に入ってくれたのだと分かって嬉しかった。
・・・本当に嬉しかった。

「はい、オレンジジュース」
「これには紅茶のほうが合うんじゃねぇ?」
「だって茶葉が切れてたんだもん」
「あーなるほど。サンキュー」

遠慮なく紅茶を所望するシカマルにこちらも遠慮なく唇をとがらせ言い返す。
気持ちいい会話。

「で、さ。シカマル。結婚ってのはなに?」
「あーや、いきなし悪かったな。なんっつーか一目ぼれ?」
「・・・・・・ナルに?」
「ん。悪いか?」
「悪くないけど。なる男だよ?シカマルもしかして女の子?」
「俺が女に見えるってぇならお前の目は腐りきってるな」
半眼で言い切られナルトはちょっと腰が引けた。
(お・怒ってる?)
と思いきやシカマルはふいに空を見上げて呟いた。

「別に俺はいいんだけどな。男だろうが女だろうがめんどくせーし」
よ・・良くないと思いますっっ。
ってかこういうことにめんどくさいを使うのはどうかと思いますーーー。

「なんっつーかよ。俺はお前の顔が気に入ったし、お前のその小動物みてぇな動きも気に入った。んで、このスコーンも気に入った。きっとお前は俺の気に入る要素を大量に持ってると俺は確信したんだ」
「まだ早いと思うけど」
「そうか?声も気に入ったし、結構気も合う。充分じゃねぇ?」
ニッと満足そうに笑ってみせたシカマル。
しかしどうしてそれで『結婚』に至るのかナルトには理解不能だった。

「でも結婚って」
「ん、まぁまだ気が早いけどとりあえず先手をうたねぇとぜってーお前もてるし」
「へ?もてる?」
「ああ、他のヤローに奪われたらムカつくっ」
「奪うって。シカマル、よく話が解らないんだけど」
「そのうち解るだろ。・・や、わかんねーままかもしれねぇけどよ」

天然に育ちそうだなぁと思ったシカマルの予想通りのちにナルトは3代目とシカマル、そしてシカマルの両親の手で見事素直で可愛い天然に育ったわけだ。
まぁ彼らの苦労はそのうち実るのである。

――――――――――――――――――――

日が傾き始めた時刻。
2人はスコーンを介して会話が弾んだ。最初はシカマルがナルトを褒めた事から。
いつしかナルト独説、じっちゃん自慢大会が始まっていた。
そう、ナルトは3代目を心から尊敬し敬愛していた。いささかシカマルが嫉妬を覚えるほどに。

「ね、じっちゃん酷いよねっっ。」
「ああ。誕生日くらい祝えって感じだよな」
「シカも祝って貰った?」
「あー…饅頭にローソク3本突き刺して祝われたな」

饅頭に突き刺さった3本の光りの中誕生日の歌を歌われた。←祝いと言うより呪いのようだ(笑)
異様な光景だったと思い出すたびシカマルは思うが。

「マンジュウ?」
「ケーキの代わりにな。まあ俺が甘いもん嫌いだから苦肉の策だったんだろうけどよ」
「なるマンジュウ知らない」
「…マジかよ。お前あんな旨いもん知らないのかっっ」

初めて、ナルトを可哀相だとシカマルは思った(笑)
「人生の30%くれー損してきたなお前」
しみじみ言われナルトはがぁぁんとショックを受けた。

「そんな人生の30%に関わるほどの物を知らなかったなんてっっ」

もちろん勘違いである。
だがシカマルは心から言っているらしく
「これからの為に饅頭をきっちり教えてやるよ」
「うんっっ」


「ってことでうちに行くぜ」
「へ?」
「饅頭は我が家に常備してあっからな。っつかうちのかあちゃんお手製のアレは旨い!」
拒否する間もなくシカマルはナルトの手を引っ張りサクサク森の出口へと向かって行った。


つづく


マイペース万歳シカマル君。気に入ったといってるけど本心は
「可愛くてしかたねぇぇ」でしょう。
すっげーメロメロっすね
2006.7.13