里内を歩くことを怖がるナルトにシカマルは苦肉の策として変装を提案した。 「髪の色と目の色変えりゃ大分違うとおもうけど・・・」 せっかくのその綺麗な金色の髪と空色の瞳を隠すなんてとんでもない。最悪だ。ムカつく。 というのがシカマルの心情ではあるのだが、そうでもしないとテコでもこの森から出ようとしないナルトにようやくシカマルは折れた。 しかし 「そっか。うん、その手があった♪変化の術があったじゃん!」 ナルトは初めて気づいたとでも言ったように嬉しそうな表情を見せる。 それに 「・・・使えるのかよお前」 「あったりっまえー」 サラリと肯定されまたもや夫としての自信を失いかけたシカマルがいたりしたのだがそこはソレ。これから要修行と強い決意を心の中に秘め、気にしないように努める。 「大体なんでナルがそんな事しなきゃなんねぇんだよ。里のバカなヤツラが悪いんだ。くそっ」 ブツブツ呟くその声をバックにナルトは初めての変化を自分にかけた。 「っと。どうシカー?」 シカマルに合わせて黒髪黒目になったナルトはニコニコと機嫌よさそうにクルリと1回転して見せた。 「・・・・元のほうが可愛い」 「シカ・・・」 なんでそんなに不満そうなのかさっぱり検討もつかないナルトは多分問題ないだろうと一人満足してシカマルの手を握りしめた。 「いざ行かんっ未知なる世界へっっっ」 ウキウキと森の出口を指差すナルト。その髪が黒いこともそのキラキラ輝く瞳が黒いこともやっぱりシカマルは気に食わない。 「けっ。最悪な大人どもがいる世界なんざどうでもいいんだよ。俺んちだ俺んち。それ以外はどうでもいい。」 「さっきからシカは何怒ってるの?」 「ああ?お前がわざわざ髪と目の色隠さなきゃいけねぇ元凶のヤツラのことだ!!」 ついついナルトに怒鳴ってしまってからシマッタと思う。 「あー。いや、ナルに怒ったんじゃねぇからな?そんな目ん玉おっこちそーなくらい目ぇ見開かないでーあーーー泣くなっっ泣くなって」 初めての友達に怖い顔で怒鳴られたのだ。ナルトの心境といえば世界は真っ暗といっても過言ではないくらいショックだったであろう。 ボトボト大きな瞳から落ちてくる綺麗な涙にうろたえるシカマルを見あげながら 「うえっ・・シカ怒ってる。ナルなんかした?」 「違うってーの。だから泣くなって。な?」 「ん・・」 困った顔をしたシカマルにポンポンと頭をなでられナルトはようやくグシグシと袖で目元をぬぐい頷いた。 「悪い。お前が変化しないと外いけないのがムカついただけだから。それ、里のバカな大人どものせいだろ?お前ただ押し付けられただけじゃねぇか。ナルはなんも悪くないのにむかつく・・すっげーームカつく。だから・・ナルに怒ったんじゃねーよ。」 シカマルがそのことを知っているのにナルトはちょっと驚いた。小さな人間には伝えていないと3代目は言っていた。 だからシカマルが髪と目の色を変えることを提案した時、ただ変装すればいいと言いたかったんだと思った。 そうじゃない。木の葉の里には自分以外には居ないというこの金色の髪とうずまきナルトという名前を隠すことが重要なのだ。目の色を変えたのは黒い髪には青い瞳が似合わないから。それにシカマルとお揃いなら兄弟みたいかもと楽しかったから。 だから知らないはずのシカマルがさっきから「バカな大人」とか「元凶のヤツラ」とか言ってても何の事を言っているのかサッパリ分らなかったのだ。 何で知っているのだろう? 全てをきちんと知っているのだろうか? その上で、さっきの「結婚してください」発言ならば・・・それは・・・懐が広すぎでは? 「ナルとね、一緒にいるとシカ嫌な思いすると思ったの。ナル、シカとお外行けない。でもナルって分らなかったらシカと一緒にどこにでも行けるって分って。・・ナルそれすっごく嬉しい。・・・だめ?」 でも。 知ってて、それでも自分と一緒に居たいと思ってくれる人なんてこの世に一体何人いるだろうか?限りなく少ないに違いない。 「ダメじゃねぇ。一緒にどこにでも行けるのは・・・俺も嬉しい」 「シカは・・全部ナルのこと知ってるの?なんで?」 「本で読んだ。後は推測。結論から言うぜ。お前は英雄だ。この里を護った一番凄いヤツだ。それを分らないバカなヤツラが多くてな。」 「・・・・」 「大人は子供に何も教えないんだ。全て隠して、その上で金の髪と青い瞳の子供には近づくなという。だから俺は調べたよ。このめんどくさがりの俺が2ヶ月もかけて調べ続けたんだぜ。」 シカマルを見つめたまま微動だにしないナルト。 その瞳がまたもや潤み始めたのを見てシカマルはポリっと頭を掻いた。 「や、泣くな。お前に泣かれるとマジ困る。焦る。俺はさ、お前とあったら絶対友達になろうと思ってた。お前が嫌なやつじゃなかったらって」 「な・・ナルと友達?」 うくっと涙を飲み込みながら聞き返されコックリシカマルは頷く。 それから頬を染めて 「でもお前見たらあんまりにも可愛すぎてついプロポーズしちまったけどな」 ハハッと情けない笑みを見せるシカマルにナルトはぎゅぅっと抱きついた。 「ど・・同情じゃない?」 「ありえねぇな。友達云々は少しくれー同情が混じってたかもしれねぇけど、間違いなくあのプロポーズは本気だ。無意識に求婚してたんだぜ。名前すら名乗る前によ。アホだよな俺」 自嘲気味に笑うシカマルにナルトはブンブン首を振った。 「アホじゃないもん。・・すっごく嬉しい。」 「お?って事は返事はオーケーってことか?」 「それは別っ。まだシカのこと知らないもん」 「ちっ」 この勢いで頷かせてしまえばこっちのもんだと思ったのに。と唇をとがらせたシカマルにナルトはぷっと吹き出した。 変なヤツ。 頭がよくて、優しくて。 ナルトを大事にしてくれて。 それから・・・ちょっとだけ卑怯。 「って事で。あー・・・真っ暗になる前に俺んち行かねぇか?」 照れ混じりの苦笑をみせシカマルがそう言えばシカマルの胸の辺りにうずめていた顔をパッとあげナルトは一生懸命頷いた。 つづく |