なんだかんだと時間はかかりましたが。 やって来ました未知なる世界へ!! すでに日も落ち辺りは薄暗い。 そんな中幼い子供達は小さな手を繋いでえんやこらと歩いていた。 隣の子供のスピードに合わせてのんびり歩きつつシカマルは思った。 (とりあえず晩飯無しは決定だな) 奈良家の夕飯開始時刻から推察するにあの母はすでに問答無用に後片付けを終えているはず。 そして幼い一人息子の為にご飯を残しといてくれるような両親ではない事をシカマルは嫌になるくらい知っていた。 飯が食いたきゃ夕飯の時間までに帰って来い。 そういう方針に不満は無い。 4才の分際で夜遊びする自分が悪いのだ。 「これはなぁに?」 キョロキョロと落ち着き無く自分の手を引っ張る子供・・・未来の俺の嫁さん(←勝手に決定(笑)) 「んあ?ああ、これは」 人通りが少ないおかげか怯える様子もなくキラキラ目を輝かせ右へ左へシカマルを引きずりまわす。 彼の好奇心を満たすべく面倒臭がりのはずの少年は丁寧に答えてゆくのだった。むしろ (教えてやれる事がうれしい) のかもしれない。 「ほらここだぜ」 一軒の大きめな家の前で立ち止まり指さしてみせたらさっきまで輝いていた瞳が急に曇った。 「あ・・・うん」 反応したのは手の平と瞳だけで表情は変わらず笑顔。 こんな年からポーカーフェイス身につけちまうとはな。 驚くより先に悲しみが胸に広がる。 そんな処世術を身につけなければ生きてこれなかっただろう今までのナルトの人生を思うと・・・ (なんで俺はもっと早く会いに行かなかったんだー!)←知らなかったし 後悔がムクムク沸き上がる。ちくしょ俺のバカやろぉ と可愛い罵りをしつつ地面に足が張り付いてしまったようなナルトを強めに無理矢理引っぱり家の中へと導いた。 「たでーまー」 ガラリと戸を開いても何の反応も無かったので、そのまま(相変わらずの抵抗を続ける)ナルトをひきづり居間へと向かえばようやく母がいた。 「あらお帰り。ただ今の時刻は?」 「とっくに夕飯時を過ぎました」 「はい、よろし。今日の夜ご飯はすでに片付けましたー」 さらりと言ってのけた母は可愛いはずの一人息子の帰りを待ち構えていた様子もなく、優雅に食後のデザートなんぞを食っていた。 ちなみに父は多分風呂だろうと推測。 ・・いや、もしや父の居ない隙に一個しかないプリンを平らげている図なのかもしれない。 そんな母にあきれ返りつつ、未だ手を繋いだままのナルトを振り返れば目をパチクリさせて、それから慌てた表情を見せた。 「あっあの・・・遅くなっちゃったのナルのせーだからシカに御飯食べさせて――――」 「んんっ?なにっあんたその可愛いのどこで拾ってきたの」 ぴょこんと背中から顔だけのぞかせたナルトに目を輝かせた母。 ちなみに母ちゃんや、ナルの言葉最後まで聞いてやってくれや。後ろで哀しげに唸ってんですけど。 「森ん中」 「ふむふむってこんな時間に家族の人が心配してるだろう?」 「あー・・・・。ナル、大丈夫だって言ったろ?」 「でも」 シカマルの背中に隠れてしまい髪の毛だけフワフワさせたその子供に苦笑を漏らす。 「母ちゃん。こいつナルト」 「・・・え?」 「だから大人の事怖がってんだよ。腫れ物に触る勢いで取り扱い注意してくれよ」 「ナル腫れ物じゃないもん」 「例えだっつーの。おらっ出てこいっ」 「やー」 可愛い引っ張り合いは頑固なナルトが勝ったが 「へっ腰抜け」 「・・・今すっげ聞き捨てなん無い言葉が聞こえたけど・・・気のせいだよね?」 あ、黒い。可愛いけど黒いよナルト君。 母がそんな二人を面白げに眺めていると 「さあてな、腰抜けとは言ったけど。それともチキン野郎がいいか?」 「なる鳥じゃないっ」 「いやちげぇし臆病者っつー意味だ」 「・・・はぁぁ?なにそれ。本気で言ってるの?」 「今の自分の姿見て否定できっか?」 シカマルの背中に必死にへばりつき未だ黒髪、黒瞳の自分。 「うう。口喧嘩で負ける日がくるなんてぇ」 しぶしぶシカマルの背中から出てきたナルトにシカマルは心の中でガッツポーズ。 未来の旦那としての威厳を今から培う気なのかもしれない。 |