いらない。
こんな存在なんかいらない

生まれた時からソウだったから
不思議でたまらなかった
なんでオレばっかりと理不尽で世の中すべてを憎んでいた

彼に出会うまで
オレは火影のじっちゃん以外のすべてを嫌っていたんだと思う

オレの世界に最初の色をつけてくれたのは
イルカ先生

いつも気にかけて
いつも声をかけてくれた
それが不思議で・・・

「どうした?腹減ったのか?」
いつもそれ
なんでオレが静かだと腹減ってると思うのやら
でも決まって笑顔でこう言うから
「仕方ないなぁラーメンでも食いにいくか」
嬉しくなって
「とーぜんイルカせんせーの奢りだってばよ?」
最近覚えたいたずらっ子の笑みとともにそんな事を言ってしまう

「ばか言えっこないだ奢ってやったばっかだろ」
ポンっと頭をはたかれる
「へへっ」
でも知ってる結局は今日も先生が奢る気だって
こんな何気ないやりとりが楽しくて
アカデミー入学を勧めてくれた火影に感謝した

奢ってくれるのが嬉しいんじゃない
誰かと一緒に何かを食べる喜び・・・
誰かが自分の存在が此処にあることに気づいてくれる喜び

それは酷く歪みきったオレの心に不思議なほどしみこんだ

日を重ねるごとに増えていく
友人知人。
そんな彼らに囲まれて笑ってる自分。
未だに信じられない時がある。
朝起きて全て夢だったらどうしようと怯えてしまうくらいに。
絶望しきってた昔の自分に教えてやりたい

未来のオレはこんなに幸福だと。

「だーーかーーーらっなんでついて来るんだってばよ」
「なんでってナルトが逃げるからでしょー」
「逃げてないってばっ」
「逃げてるってーー一緒によるご飯食べようーって言ってるのにさぁ」
「だから今日はイルカ先生と・・」
「却下っっっ」
「は?」
「今日はせんせーと食べるのっ」
どこの我がまま小僧だ
額に手を当てた
「万年中忍のあいつよりセンセーのほうがお買い得ヨー」
「そーゆー問題じゃなくって」
「いーやっお前はよく解ってないっ。あいつもその気。先生のその気。
将来のこと考えて選びなさいっ」
何故そこまで言われなければなないのだろうか
っていうか
(その気ってなに?)

「はぁ?」
ムムムンと腰に手を当て力説する自分の担当上忍
やれやれだってば
いつまでも途切れることのない勧誘にため息をついたとき

「お前今日暇か・・・」
ボソリと聞いてくるやつが登場
「ふっふっふっ残念でした。ナルトのアフターファイブは全てこのカカシ様で埋まってまーーす」
「あんたには聞いてない」
(あんたって先生に向かってなんたる暴言。
今度の任務のとき覚えてろよ)

心の中でぐっとこぶしを握り締めた大人気ない上忍はほおっておいて、
ナルトは新たな誘いに目を丸くした
しかも相手はあの、あ・の・サスケだ

「どうしたってば?」
なんか変なもんでもくった?
「別に。ただ今日は鍋をやるつもりだから」
一人で囲むのもどうかと思い・・・と
あらかじめ用意しておいた誘い文句を口にする

「そっかー鍋は沢山の人で囲むと楽しいってばっ」
このあいだ初めてナルトは沢山の人と鍋を食べた

三班合同のときだ
任務帰りによったお店でみんなで食べたのは
おでん
心も体もあったまった

「あっあっじゃあさーイルカせんせーも一緒でいいってば?」
「う・・・まあ・」
否定する言葉もなくしぶしぶうなづけば
金の髪の少年は青い瞳をきらきら輝かせた

(この顔が見れただけでよしとするか)
本当は二人で囲みたかったが
仕方あるまい

カカシよりちょっぴり大人なサスケはアンニョイに微笑むとカカシにちらりと目を流し
勝ち誇った笑みを見せた




「うぬぬぬぬぬぬ・・・」
オレのときは一緒になんて言ってくれなかったのにっっっ

いや、もし一緒になんて言われても「いや」の一言で却下するだろうことが
解っていたのでは?


「えーーーずっるーーーいっ」
その声ではっと正気にかえると(正気じゃなかったんかい)桜色の髪の少女がナルトを後ろから羽交い絞めにしていた

(なんて羨ま・・・いやいや。)
「こぉらっ。ナルトが失神しかけてるでショ〜」
さりげなくサクラから奪い取る

「だって先生ナルトったらずるいんですよー私ですらまだサスケ君家行ったことないのにーーー」
心のうちのサクラが絶叫しているのが見えた
魂が形つくり腕の中にいるナルトに絡みつく
(サクラさん・・人間離れしすぎっ)
カカシすらビビッタ


「じゃ・・じゃあさ、サクラちゃんも来ればいいってばっっそんで皆で鍋ーーー!!」
魂攻撃に恐れをなしたのか
名案とばかりにナルトで腕を突き上げた
「えっいいの?いくいくーーっ」
サクラの勢いに勝てるはずもなく、断る明確な理由のないサスケはそれを見て
(ふ・・・・現実なんてこんなもんさ)
青い空を儚く眺めた。


家主のしぶしぶの了承を得、
バンザイするナルト
手を叩くサクラ

カカシの視界にはサスケの引きつった顔が映った


その日の夜ご飯は

7班+イルカ先生


こんなはずではと、苦悩するサスケ
ヨッシャーとこぶしを握るサクラ
そしてちゃっかり混ざったカカシはさりげにナルトの隣をゲット

イルカはというと

「よかったなーナルト。こんなに沢山の人と食べれて」
「うんっでも明日はイルカせんせと一楽だってばよっ」
「はいはい」

幸せそうなナルトと
明日の約束を交わし
カカシとサスケの殺人光線を受けていたという

だが、残念ながらそれは軽く受け流されたらしい


ああ、あなたは最強です






最初は青
銀が増えて桜色が増えて黒が増えて

どんどん増える
心のカンバス

でもね、

最初の色は
いつまでも特別なんだよ



シリアス系かと思いきや実は和み系話・・・ですよね?←自信がいまいち(笑)
03.10.13