かけおちしてやるっ


「じっちゃーーん遊ぼっ」
「・・すまぬのう。まだお仕事が沢山残ってて遊んでやれんのじゃ」

ナルトはぷくぅと頬を膨らました。
毎日毎日毎日毎日まぁぁぁぁぁいにち。
この人は忙しいのだ。
だからナルトは火影という仕事を憎んでいた。

「じっちゃんばっか忙しすぎ!もっとお仕事減らさないと不公平じゃんかっ」
「こればかしはのう」

小さな子供の癇癪に苦笑しながら三代目火影は頭をなでた。

つい最近3つになったナルトは沢山の忍術を教えてもらい、沢山の世の中の仕組みも教えてもらい、そして3歳では知りえないであろう事も沢山、教えてもらっていた。
それは一重に他の子と違いナルトの頭が良すぎたから。

3代目は何度も自問自答しながら、それでもこの子の為になれば、といろんな知識を与えていった。

あまりの吸収のよさにまさかお主生れたときから知っておったか?
と言わんばかりだが、よくよく考えてみればこの子の父も恐ろしい程の頭脳の持ち主だったことを思い出し、血筋か、と納得した。

沢山の事を知っているナルトは自分が里人から憎まれていることも知っている。
その理由ももちろん知っていて、更にはそれを受け止め、"ま、仕方ないか"とすらいえるほどの広い心まで存在している末恐ろしいガキだった。

「人の心は時にはどうしようもないから」
と、まだ3つに満たない子供の口から語られたとき3代目はそこまで考えて生きなければいけないこの幼子のあまりの不憫さに泣けてきた。
「それでも、なるにはじっちゃんがいるから」
平気だよ。
そうはにかんで言われた時はそれ以上に泣きそうになったが。

まぁそんなこんなで二人の仲は実に良好。
里人との関係もそれなりに、気をつけている今日この頃。
ナルトは久方ぶりに噴火した。


ナルトが3つになるまではと毎日のように構ってくれた三代目が3つになる少し前から全然構ってくれなくなったのだ。
2年かけて貯まりにたまった仕事をしているのは幼くとも頭の切れるナルトには理解できる。

だがしかし理解はしても所詮子供なのである。後ちょっとで誕生日が来るというのに、それすらも待てないくらい忙しいのかっっ。と半分切れかけて、祖父との約束を破って家の外へ気分転換に出かけたのが約1週間ほど前のこと。ナルト2才最後の日の冒険であった。




「もう一週間もお話してないっっっっっっ」
「すまぬのう」
「すまぬのうっじゃないっっ。なんでじっちゃんばっか忙しいの?あそこらへんで暇してる人におしつければいいじゃんかっ」

と外を指すのはもちろん職にあぶれた里人を示しているのだろう。

「ワシでなければ出来ぬ仕事が沢山あるんじゃよ」
「わかってるっっ。わかってるけど解りたくないっっっ」

頭はよくともまだ子供。
たまに、本当にたまに三代目はハッとさせられる。
この子供はまだ3歳だということをいつも忘れてしまう。

小さいのに、大人のように聞き分けがよく、人の心を気遣える。
そんな子供にどれだけ負荷をかけているのだろうか。

「ナルトは良い子じゃのう」
「そんなんでごまかされないもん」
「うむ。困ったのぉ」
「むーーーーー。じっちゃんはナルのことキライなんだっ」
ウルと瞳をうるませ震える声でそう搾り出したナルトに三代目は本気でウロタエタ。

「いや、まさかそんな事あるわけないじゃろう?」
「あるっ。じっちゃんナルとお仕事どっちが大切?」

ヴ・・・

よもや仕事のために何度も約束を破った恋人に言われるような言葉をこんな小さな子供から言われるとは・・・・

あまりの予想外の質問に三代目は言葉につまる。

「やっぱり。ナルよりお仕事のが大事なんだ・・・じっちゃんに嫌われた・・・」

ガァァンと悲劇の主人公のごとく三回転しそうな勢いでよろめくナルト。
ちょっと演技くさいがその心情はといえば泣き出す寸前。

「まてっまつんじゃ。もちろんナルトの方が大切に決まっておろう」
「ウソだもん。じっちゃん迷ってた。もういいっナル、ぎゅーって目がつりあがったパイナップル頭のへんなピッチピチの子供とかけおちしてやるーーーーー!!」
「駆け落ち!!?しかもなんじゃその細かい人物指定はっっっ」

自分以外でナルトと親しいものがいない現在。
火影様はかなりあせった。
というかどこで覚えてきたんだ『駆け落ち』なんて言葉ーーーー


たった一週間。
されど一週間。
会話を怠ったせいである。
そのパイナップル頭の子供の事はまったくナルトから聞いていない。
いや、きっとナルトはそれが話したくて仕方なかったのだろう。
それでも一週間まって、それでもまだ話せない状況にぶちきれた。


「ち、ちなみにその子は女の子か?」
「男だもん。ナル、初めて『結婚してくださいっ』て言われたの」
クラッとした。
確かにそこらの女の子よりかわいい。身内の欲目を差し引いたとしてもかなりかわいい。
そんなナルトに求婚者。
しかも男から。
これは由々しき事態である。

「まだ3つじゃ。嫁にはやらんっ」
「じっちゃんはナルの事なんてどーでもいいんだもん。だから知らないっ」
「まてっっ。とにかくその子について話してくれないことには・・・」

「ふーんだっ」

そっぽを向いたまま一向に口を開かないナルト。
そうとうご立腹の様子。

「とにかく駆け落ちだけは許さんっっ。」
「ぶーーー」

不服そうなナルトをなんとか宥め、三代目はこれからは出来る限りナルトとの時間をひねり出すことを心に誓った。


ちなみにパイナップル頭の少年については2年後、ようやく正体が判明する。
それまでナルトは絶対に口を開かなかったそうな。



言うまでもないだろうがパイナップルはシカでぇす。
こっちの話を先にアップしちゃったから二人の出会い編どうするかなぁって感じです。
もしや書かなくても皆さんの素敵な頭で想像できちゃうかも(笑)