クレヨン  1


「とーちゃっ」
「なる君っ」

先日のクリスマスにプレゼントしたクレヨン。
それはそれは嬉しそうにお礼を言った我が子。

仲良し親子はそれで落書きをしていた。
でっかいでっかいカンバスに。


二人は手に手を取り合うと喜びの叫びをあげた


「完成っだってばーーー!!」
「うーん素晴らしい出来映えだねっ」

二人は完成品を見上げ、ふうっとワザとらしく額の汗を拭うしぐさをした。
べつだん汗をかいているわけではない。
室内である。
適度に温度調節された最高の室内である。


「火影様・・・・いい加減執務をしていただかないと困るのですが」

呆れたように大量の資料を持ってやってきた秘書に4代目火影はにこやかに振り返った。

「見てみてっっ上手いでしょっ」

誇らしげに胸をそらし、目を輝かせるその姿。


(すみません。三歳児に見えます。)

秘書はクラリとくる額を押さえながらそんな上司の指し示す先を見た。
その瞬間クラリどころかぶっ倒れそうになった。


「な・・・な・・・・・・・・・・・なにやってんですかーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」




火影の執務室の壁一面に描かれた虹の絵。
何かやっているとは思ったがこれまたダイナミックなことをしでかしてくれたものである。



「・・・・ダメだった?」

あれ?と4代目は首をかしげる。

(似合わないのでカワイ子ぶりっ子しないで下さい。)


その隣で息子も同じように首をかしげた。

「だめ・・だってば?」

(いやその仕草はサイコーに可愛くて胸がキュンなんだけどね。)
ナルトの様子にそう心の中でつぶやきながら秘書はナルトの前にしゃがみこんで目線を合わせた。



「ナルト君。お部屋の壁に落書きしたらいけません」
「ええーーでもとーちゃ、いいって言ったってばーー」
「この人の言うことは信じちゃだめです」
4代目の威厳形無しである。

「そうなの?」
「そう。」

コックリ強く頷けば小さな子供は金色の髪をふわりと揺らして

「うー。ごめんなさいってば」

素直に謝った。
なんて可愛い子供なのだろうか。

怒ってる?
やっぱり怒ってるよね?
と、見上げてくるうるんだ瞳で見上げられていつもは厳しい表情の秘書ですら思わず綻んだ。

「もう怒ってませんよ。ちゃんと謝った良い子にご褒美です。」
「わあっ!!」
ポケットから出されたチョコレートと飴玉に青い瞳を輝かせる

「あのね、あのね。とーちゃ叱っちゃめっなの。」
さあっ次は困った大人の番ですよ。とばかりに4代目火影様を振り返った秘書の服をつんっと引っ張って一生懸命ナルトは言った。

「え?」
「なるが描きたいって言ったの。とーちゃ遊びにいけなくて寂しいって。だからなるが寂しくないよーにって描いたのっ」

だから怒っちゃだめっ


「は・・あ」
なるほど
肩をすくめる大人を見やってナルトを見て。
苦笑をもらす。

こんなこと言われて貴方が駄目なんて言えるわけが無いですね。

愛する我が子にこんな可愛いこと言われて
「でもね、壁に落書きはだめなんだよ」
なんて言えるようなら秘書はこんなに苦労していない。

そして自分もこんな小さな子供に甘かったりする。
ああ、4代目を諌める役目のためにナルト君に嫌われるなんていやだし。
でもあんまり甘い顔ばかりしてると4代目が付け上がるし・・・

ジレンマは募るばかり
だけれど、結局ナルトに甘い秘書なのだ。


「はぁ。仕方ありませんね。ナルト君に免じて今回は大目にみましょう。次に壁紙張り替えるまでこのままということで」
「やった♪」
「ありがとうってばっっ」

喜びあらわな二人。
でもしっかり者の秘書は最後の釘刺しを忘れなかった。


「でも、次やったら二人ともお仕置きですからね」


「リョーカイ」

です。
だってばっっ

パパはナル君にメロメロ〜
秘書もなる君にメロメロ〜
縁真もメロメロさーー
By縁真