最近の火影の執務室は入るとまず最初に
「うわっっなんですそれっっ」
と声がもれでるらしい。
そう噂で聞いていても、それでも入った瞬間思わずやっぱり叫んでしまった。
「なんですかそれはっっ」
ああ、俺も噂の仲間入りだよ。
「これ?」
ニコヤカに答えてくださったのは過去、自分の担任をしたことがある一応先生という立場だった男である。
先生らしいことをされた覚えは一つも無いものの、最初から最後まで徹底的に彼のペースに巻き込まれた記憶だけはどっかりある。
無口無愛想無表情の三種の権化だった自分を振り回し、叫ばせ、いいようにおちょくれたのはきっとこの人くらいだろう。
「あんた」
と呼べば
「なんだいお・ま・え♪きゃ新婚さんみたい〜」
と返され即刻呼び方を「先生」に改めた。
「先生らしいことの一つでもしてくれませんか」
と言えば
「先生らしいことってどんなこと?たとえば人生について語ったり?木の葉の行く末について語ったり?」
「いや、語られても困りますけど」
「人生について語らせたらセンセー凄いよー。も、何時間でも語れちゃう。」
すっげ聞きたくない。
「でもさ、人の人生なんてしょせん人のじゃない?自分の人生の役に立つかって言ったらたぶん1%も役に立たないと思うし。
先生はね。カカシ君たちに毎日の楽しさを教えたいの。強くなるのも大切だけど、人間として生きる楽しみ?そんなのいっぱい知って欲しい。」
言ってることは立派なんだが、
やってることはただのいたずら。
3代目火影様の血管をぶちきりたいのだろうか。
毎日毎日いたずらをしていた気がする。
「はーい今日の任務はーDランクっ薬草探しでーーす。その後でおおよそBランクの火影岩のペインティングが待ってまーす。今日も頑張るぞーーおーーー!!」
先生。
後ろのBランクは必要ないです。
スリーマンセルの子供たちの心のうちは今ひとつだった。
そしてそんな先生は4代目火影というものすっっっごくドエライ立場になったと言うのにやっぱり昔のまんまだった。
「いいでしょーーナル君がお絵かきしてくれたんだ♪」
「はい?」
「僕がなる君と遊べなくて寂しい〜って言ったらこれ描いてくれたの」
これで寂しくないってば!!
「かわいーでしょ!!!!」
「はぁ」
確かに可愛らしい。
だがしかし、
「よくあの秘書が許してくれましたね」
「うん。ちょっと怒られちゃったけどなる君に免じてお咎めなし♪」
あの人もナルトにめちゃ甘だから〜
と先生は言う。
「ここにね、ナルトのサインがあるの」
「ああ、字が書けるようになったんですね」
ホコホコと二人で嬉しそうにそこを見る。
「うん。まだ象形文字みたいだけどね」
でもなる君賢いからすぐちゃんと書けるようになるに決まってるよ。
親ばか炸裂。
「確かに。」
あの年でここまで書ければ天才ですね。
ここにも兄?バカが一人。
「その隣に並ぶ名前は一体なんですか」
「うん〜これを見たほかの人たちが書いていったんだけど」
ずらーっと並ぶ名前の羅列。
ここに書かれた名前全ての人間がナルトラブなのは確かだろう。
しかと記憶にとどめておくことにするカカシ。
もちろん4代目火影様の要注意リストにも記載されているだろうことは聞くまでもない。
「ふむ」
一つ頷くと
どこからともなく筆を取り出し
サラサラサラ。
「よし」
「全然良くないよカカシ君」
「ナルトの隣は俺です。なんか文句でも?」
「そこは僕が書くつもりで空けておいたのにーーー」
「早い者勝ちですね」
ふふん。
「ぐぬぬぬーこうなったら・・ていっっ」
「あっ勝手に人の名前消さないで下さいっっ」
「ふーーんだ。カカシ君なんてここに名前書かせてあげなーーい」
「大人げないですよっ」
「いいもーーん。」
カカシが書いて
注連縄が消す。
書いて消して書いて消して。
ナルトの名前の周りは消されたカカシの名前だらけ。
「これ以上はナルトの芸術的な絵に被害が出るからやめましょう」
「賛成」
それはそうカカシが提案するまで続いたらしい。
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