まだ秋だってのに寒い日々が続いたから、あたしはその日、常に暖かないわゆる非難場所である温室に駆け込んだ。
いつものように。
そろそろ楽しみにしていた花が咲くと思うので今週はそれが目当てで通っている・・・って事にしている。
やーもうすでに日課になってるんだから言い訳なんて要らないんだけどねぇ。
ま、実際花が咲くのを楽しみにしているのは本当だし〜。


「ふわぁぬくぬく〜」
適温に保たれた温室にポカポカな太陽の日差しが差し込む。
実はここでナルトが帰ってくるまで昼寝をするのがイノのひそかな楽しみだった。
「んしょっと」

隠してあったブランケットを引き出しから取り出しクルリと包まる。

おおよそのナルト帰宅時間を予想しそれより少しだけ早い時間にタイマーをかけた時計を側におく。完璧である。
今まで予想がはずれた事は無いのでイノがこんな行動を取っているなんてナルトは知らない。

いつも遅刻する7班の担任といつも遅刻しない10班の担任(この時間差がイノの睡眠に充てられるらしい(笑))に感謝を抱きイノはいつものようにゆったり夢の世界に羽ばたいた。




           それがあたしのファイナルアンサー 2




ガシャンっっっ

(へ?)
おおよそこの温室ではありえない激しい音のせいで目覚ましが鳴る前にイノの意識が浮上した。

さっきからなにか声が聞こえるとは思っていたが・・・。
客?

そーっとブランケットをはぎとり植木鉢の間から覗きこんでみれば



「・・・」
(なにこれ)

散々破壊されつくした植物達。そしてまだ活動する大人達。
イノは呆然とそれを見てしまった。


(な、ナルトは!?)
目覚まし鳴ってないのだからまだ来てないのならいいけど。
まさかまさか・・・・・あの悪意の塊のような大人達に何かされてはいないだろうか?
大事な植物たちの哀れな姿よりもずっとずっと深い恐怖で心臓がバクバク鳴る。
息を潜めながら視線をめぐらせれば

「も、やめてくれってば」
1つの鉢植えを抱え叫ぶ姿。
すでにボロボロのナルト。

(なんて・・・・なんってことをっっっ)

「狐の分際で」
だとか
「お前がいなければ」
とか
意味不明な言葉を叫びながら彼らがナルトを蹴り飛ばした瞬間・・・


頭が真っ白になった。


ジリリリリリリー

止まない破壊音。
寝起きの悪いイノ専用目覚ましの音である。

そしてそれをバックにゆらりと立ち上がった1人の少女。






「あんたたちぃぃ・・・・・・」

無表情に大人達を眺め、それからブワっっと殺気を彼らに向ける。




真っ白だった頭がカーと真っ赤になってそれからまた真っ白になり・・・無意識に腹の底から叫んだ。

「あたしのナルトになにしくさってんのよーーー!」



驚いたのは里人達。
だがしかし最も驚愕していたのは・・・実はナルトであった。

気配に敏感なナルトは誰もいないのを確認した上で大人しく攻撃を受けていたのだ。
そうでなければとっとと結界張るなり記憶操作するなりして追い払っている。

「い・・・いたってば・・・?」


ナルトにしては実に珍しい、演技ではない心から呆然とした表情と声音。

そんな事を知らないイノはそれをサラっと無視して

「大の大人が寄ってたかってこんなちっちゃい子をリンチ?うっわ、最悪ーー」
ちっちゃい子って貴方と同じ歳ですけど・・・。

「大体あたしに断りなくナルトに近寄らないでくれるー」
あんた達みたいのが近寄って来るってだけでムカつくわ。

サラリサラリと大変失礼な言葉。

「んで?なんの理由があってあたしのもんに手ぇ出してんのかしらぁ」
ああん?と巻き舌で問いかけるイノ。
どこのやくざだ?とナルトはつっこみたくなる。
素晴らしく堂に入った恫喝に里人は大分腰が引けていた。


だがしかし、ナルトとしてはまず最初に問いたい。
なあイノ・・・・


(俺はいつからお前のモンになったんだぁぁぁぁ)

混乱寸前のナルトを置いてイノと里人との戦いの火ぶたは切って落とされたのだった。


喧々囂々。
やまない口喧嘩。
手が飛ばないのは相手が小さな女の子である事と。
彼女の親が山中イノイチであると里人が知っていた為。

血継限界を受け継ぐ上忍でありながら花屋でもある彼は、先の戦乱の際、里を守り、近所の住民たちを守った。
そして妻は薬草を作り無料で支給したり、治療に駆けずり回ってくれたのを彼らは心から感謝していた。

その2人の手中の珠。
両親がイノをとても溺愛しているのは自他共に認める事実である。
そんな彼らを見て取りイノは苛立ちが更に募る。
あーーもうっこいつらどうにかして最高にダメージ与えてやりたいわーーー!
そう内心高らかに叫んでからフイに気がついた。

そうだ、あたしには最高の攻撃文句があったじゃないのっっっ。
こいつらの度肝を抜けるくらい強烈なのがっっっ。



「なによっパパ達が怖いからあたしに手が出せないわけ?だいたいナルトに手ぇ出した時点でパパたちの怒りの対象よ」

ふふんと自信満々に前ふりとなる文句を言い切ってみせたイノ。
なんでだ?
と疑問に思う里人にイノはにやりと心の中で笑みを作った。

誰もがイノの言葉を聴こうと、口をつぐむ。
どんな言葉が飛び出すのか。ゴクリと息を呑む彼らの様子をしっかり見て取り、充分だろう間を置いて胸を張って言い切った。


「なんでかって?それはねぇ、ナルトが、あたしの、未来の旦那さま、だ・か・ら・よ!!」


きっぱりはっきり、ひと言ずつ区切って。
間違っても聞き間違いなど無いように、これでもかとビシィィィと。

そして、イノの予想以上にこの爆弾発言は大きな衝撃を生み出した。

主にイノ以外全ての人間に。



「「「は?」」」

ちょっとその間抜けな反応は何?
ってか後ろからも疑問の声があがったよーな気がするんですけど・・・気のせいよね。
ええ、気のせいに決まってるわよねー。

ねぇ後ろで転がったままのナールートーーくーーーん♪←どす黒い声音(笑)



「って訳で将来の我が家の大事な家族に手ぇ出されたらあたしはもちろん、パパもママも怒りまくり確実じゃない。でも別にパパたちの威光を笠に着る気はさらっさらないしー。あたしはあたしのやり方で報復させてもらうけど」

両親を話に出したのはただの嫌がらせだ。
とっても効果的で後でじわじわと染みてくる嫌がらせ。
だから後々はそっちに任せて現時点での報復はもちろんあたしの手で。

「あたしはね〜自分のもんに手ぇ出されるの・・・すっごく嫌いなの」
ねぇ解る?

優しい声音でニッコリ微笑む。

なんだこの子供は?あまりの殺気に腰が引けている大人は
「狐をかばうのかっっ」
怒り心頭中のイノを更に煽る様な言葉を吐き捨てた。

バカである。

「かばう?違うわよあたしは、あたしのもんに手ぇ出すバカに当然の主張をしているだけ。ちなみに狐ってのが良くわからないんだけど・・・まぁ聞いても胸くそわるそーだしスルーしてあげるわ。」

にっこり。
転がった植木鉢を起こしながら

近寄ってくるその姿は恐怖以外の何物でもない。

「もちろんそれなりの覚悟は出来てるわよね?」

まさか仕返しされる事を考えず傍若無人の数々をしでかしたってーなら考えが甘い。

「い・・・いの?里の人に手ぇだすのはーー」
「うるっさいわよ。黙ってなさい」
「・・・はい」

とりあえず落ち着けと声をかけたナルトをあっさり切捨て←ナルト素でビビリ中(笑)

「よく解んないけどね。あたしにとってあんたたち最悪の大人よ。1人に向かって大人数で暴行。更にはかわいーーいこの子達(←植物たち)を問答無用に破壊しつくして。・・・人間としてヤバイんじゃないのー?」
「そ・・そいつだからいいんだ」

「わー素敵な反論♪大体こーゆーバカげた事する人って正当な理由をひっさげてただの憂さ晴らしとか八つ当たりする人が多いのよねぇ。さ、言いたきゃ正当な理由をどうぞ」

聞いてあげるわよ?ただしその後納得行かなかったら今ナルトにしでかした事と同じ事を仲間達と1人1人にお返しするから期待しててちょーだい。

「ま、あたしの知る限りールーキー3班の担任も合わせて10人喜んで襲撃の手伝いしてくれるわよ」
間違いなく。確実に、ね。


「それを踏まえた上で。さ、言い分をどうぞ?」
ニコニコと理路整然とした皮肉と脅しまみれの言葉が優しい声音で紡がれるのが怖い。


「とりあえず・・・貴方から言ってみる?」
「お、俺は無理矢理連れてこられただけでっっ」
「・・・無理矢理きたのにさっきナルト蹴り飛ばしたわよねぇ」

最悪ー

「次やったら・・・あんたの名前を『ナルトを虐めた最悪人間』のリストにのっけてカカシ上忍にとりあえず渡すわよ。夜道が歩けなくなること間違い無しね」


カカシの名前を使うのは悔しいが脅しに1番効果的だからだ。なにせナルトにメロメロと言う噂は里中に蔓延しているのだ。
次は無いと思えと通告を渡した次の瞬間目の前の男だけでなくその場にいた全員が蜘蛛の子散らすかのごとき逃げ出した。
あら、1人ずつ脅していこうと思ったのに逃げられちゃったわ。


「そんなに怖いかしらカカシ上忍って?」
サクラ達に怒鳴られてる姿を見慣れているイノには『変人』というイメージしかない。
まぁ役立ったからいいけどさ。
あーあ。今度やったら本気で迷いなく半殺し決定なんだからねっ。
今日は一応見逃したけど、本当なら1人につき5、6発攻撃してもおっけーじゃない?とか思ってたけど、そんなことより先にナルトの手当てしてあげたいしねー。





急展開〜この話が書きにくかったのです。
だって里人だすの嫌いだもんっっ。全然進まなくてもう諦めようかと思ったよーーぅ。