シンと静まりかえった温室。
さてと、ナルトの手当てでもしてあげましょうかねぇとイノがゆっくり振り返った時
「ごめんな俺のせいでこんな・・」
抱えていた鉢植えをぎゅっと抱きしめ謝るナルトの姿がみられた。
何よりも花を大切にする少年は自分の傷よりも自分のせいで傷ついた花たちに心を痛めていた。
唇を噛み締め転がる残骸をゆっくり丁寧に救いあげるその姿。
胸がきゅんと鳴った。
切なくてたまらないその姿だというのに、何故だか無性に・・・ああ・・ああ・・ごめんねあたしの悪い癖。
「護ってあげたい」「あたしがどうにかしてあげるわーー」そんな気分がむっくむっくと沸きあがってくるのを感じてしまった。
こーゆーけなげな姿って弱いのよぅぅ。
もーーーどうしてくれようっって感じっっっっ。
(ちょっとーーーーーーーーーーーイーかもしんなぁぁぁい。パパーーおっけーよ!!あたしの好みにジャストフィーーーット!!)
何より、花を愛する心。
花に対する態度を見ればこれはもう、あたし以上の花好き決定じゃない?
そしてここの花たちを見てれば解る。
ここ一ヶ月ちょいで、充分なくらいに解った。
どれだけナルトが花に愛されているか。
(あーもーーパパの思うつぼっぽくて悔しいけどーーーー)
もはや、イノの中には押さえ切れない打算がムクムク沸き起こっていた。
どうせ旦那にするなら共通の趣味があったほうがいい。
それが植物ならば・・・言うことなし。
ってか植物好きならサイコーーー。
あたし程の花好きはいないって思ってた。
なのにここにいるじゃない。パパが言ってた通りの人物が。
どうよ?これを逃したらもうこんな花好き一生出会えないに決まってるわよ!!
恋?
と激しく疑問に思うが、イノにとって恋をするのに充分な衝動。
むしろ今の気持ちをきちんと言葉で表すならば
「この人に"恋したい"」なのかもしれない。
好きになれたら。
一生楽しそう・・・・。
「ナルト」
「え?あ、イノ、さっきはありがとってば」
彼女が追い払ってくれなければ被害はこの程度ではすまなかったことだろう。
覚悟していたことではあるが、それでもやっぱり花たちのこの無残な姿は哀しくて哀しくて。
ナルトは本当にイノに感謝していた。
「いーのよ別に大したことしてないし」
ほんのちょっと殺気ふりまいて、ほんのちょっと啖呵切って見せただけなのだから←一般人には充分な威力
最後はカカシの名で逃げていったようなものだし、あまり感謝されても嬉しくないかもしれない。
「でもこいつら助けてもらったし」
自分の身より腕の中の花たちの方が大切といわんばかりの言葉にイノはちょっとむっとした。
そりゃ花を護ったのは確かだけどー。
むしろついでって感じだったわよ。
「あたしは花たちじゃなくてナルトを助けたつもりだったんだけどー。そこら辺に対する礼はどーなってんのかしら?」
ちょっと押し付けがましいかな?と思いつつも、このくらいキッパリ言わなきゃ通じない相手っぽいのだからいっか・・・と口をひらけば。
「俺を?」
やっぱり解っていなかったらしい、キョトンとした顔を見せた。
本当、しんじらんなーーーい。
普通、花を助けるためにこんな可憐な乙女が(←誇張あり)あんな大人数の大人たちに立ち向かうと思う?
「いや、だって山中のおっちゃんがうちの娘は俺並みの花好きだぞって言うから・・・花の世話するイノ見てて俺もそう思ったし・・だから・・・」
きっと・・そのーてっきり・・・
「さっき言ったはずよ。あたしは未来のあんたの嫁!!未来の夫を守るのは当然でしょ」
あいつらをビビラせたくて一番効果のありそうな言葉を叫んだだけ(そうだったのか・・・)だが、それもいーかもと思い始めた自分が居る。←まだ打算が色濃いが(笑)
ようやく自分が乗り気になってきたというのに・・・いうのに・・・
「・・・・・は?」
あれ?話が通じない?
なんであんたがその反応よっっ?
「嫁?夫?何の話だってば?」
「えーパパから聞いてないのー?」
「山中の?えっと・・・・・」
思い出そうと額に手をやり目を瞑る。
数分後
「あああっっ何か言ってたってばよっっ」
ポカンと口をひらいてイノを見たナルトに。
そう、その程度の口約束だったのね。
ちょっと哀しくなってみたが、イノさまはへこたれないのだ。
口約束でもいいじゃない。あんたが自分でオーケーした以上約束はもーちーろーん守ってくれるんでしょうねぇ?
「そ、あんた了解したらしいし、これで成立ってね」
困った顔をするナルトにふふんとイノは笑ってみせた。
まだ早いかもしれない。でも誰かにとられる前にさっさと手を打っておくのはいいかもしれない。
そう、あの同期の男どもにでも掻っ攫われた日には泣くに泣けない。
一番やっかいなのはあの変態上忍だけどさ。
ねぇナルト
あたしと一緒に沢山の花に触れ合おう。
あたしと一緒に沢山修行しよう。
あたしと一緒に将来花屋さんやろうよ。
ねぇあたしを知って。知りたいと思って?
あたしはあんたを知りたい。
もっともっと。
1カ月であたしはあんたを少しだけ知ったわ。
ルーキー仲間から掛け替えのない同志にまで格上げした。あんたの株はあたしん中で急上昇中よ。
後1カ月もしたらもしかすると掛け替えのない、特別な人になってるかもしれない。
格下げしてるかもしれないけどねー。
でもね、格下げしてもそれでもやっぱりあたしは・・・将来あんたと花屋やりたいな・・・。
だからこれがあたしの、ファイナルアンサー。
うずまきナルトをお婿さんにしますか?
って聞かれたら
「さぁ?まだ解らないわ。」
だけど
うずまきナルトとこれからずっと一緒に居たいですか?
これにはイエス。
だからきっと大丈夫。
「いーい?あんたはあたしの未来の夫なんですからねっ。胸張って生きなさいよっっっ」
「へ・・はぁ・・」
歯切れの悪いナルトの返事にふふっと笑い強く強く宣言してやった。
いーいっっ2人で花に囲まれて楽しく生きて行くわよ!!
呆然としたままだったナルトはその言葉に一瞬で満面の笑みを浮かべてこっくり頷いた。
花で釣られたわねあんた・・・・。
よく解らないがいつの間にやら未来が決定していた。
なんだろう・・・うかつな自分がそもそもの原因だからイノに拒否の言葉を吐けなかった。
だって約束したの俺自身だし・・・。
イノの中でどうなってるのか解らないがなにやら俺の婿入り先が決定したらしい。
早すぎませんか?
いや、それよりサスケはどーなったのイノ?
おっちゃーーーーーーーーーん予想外だよーーーーう。
あの返事やっぱ保留にしちゃだめー?
目の前で楽しそうに自分の傷の手当てをしてくれる未来の妻らしき存在を見て、自分の軽率さに深く、ふかぁぁぁく溜息をついた。
〜おまけ〜
ぱぱーあたし決めたわっ
あいつ婿にもらうっファイナルアンサーよっ
この年でファイナルアンサーはどうかと思うが父は破顔した。
「そうかっさすがわが娘っ見る目がある」
「まだちょっと微妙なんだけどね、でもね、あいつ程の花好きなんてこの先ぜぇぇぇぇぇったいお目にかかれないもん。逃せないわっ。って事でちゃんとナルトに宣言してきたから♪」
「いのちゃん・・・パパはもっと乙女な気持ちでファイナルアンサーして欲しかったな・・・」
そんな政治的なノリで未来の婿決定しちゃうの?
「あら。最重要項目じゃない。ナルトの顔はまあまあいけてるし、忍として少しずつ強くなってるみたいだし、性格も植物に好かれるくらいよ?良いに決まってるじゃない。」
あたしと同じ年で、忍者やってて、将来期待できる顔立ちで、性格もよくて、あたし以上に花好きなパパが認める男。
ほんとパパが言ったとおりよね。
悔しくて悔しくて溜まらないけど。
あたしのために用意されたような条件を取り揃えたその人物。
青田買いの気分よ。
将来、あたしがあいつを好きになる。
可能性大だものっっっっ。
そう力説したイノに父はほんわりと笑い、それなら良い、と頷いた。
これで将来は安泰だ。
と満足そうな父はその夜奥さんと二人でささやかな祝杯をあげたという。
まだまだ先は長いぞ、山中夫妻。
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