イノの婚約者発言のほんの2日後。
山中イノイチと裏の任務で一緒になった。
猪鹿蝶トリオとはよく一緒になるのは俺が一番楽だからじっちゃんが手を回してくれてるのだろう。
ありがたいな本当に。


親ばかvs婚約者 

ちょっぴりハードな任務終了後。
のんびりと里へと帰還しながら先日の件を話していた。

もし、イノがあの時のヤツラに仕返しされたら申し訳ないから。気を付けてくれ、と。
謝罪とお願いを。

それからもう1つ。
「って事で、とりあえず婚約の件はーー」
保留ってのはいかがデショー?
ニコヤカに。
これでもかと外行きの顔を貼り付けて。

ザ・うっかり未来のお義父さんになりかけているお方へとお伺いたててみれば。

「うちのイノちゃんの一体どこが不満だと言うんだい?」
ズバッと切り捨てられた。
いやぁ不満っていうかさー。
なんてお気楽に答えられる訳がない。

にこやかだが、明らかな迫力。
並の男なら即座に謝り倒したあげく逃げ帰るだろう殺気さえ伴う笑顔にナルトは呆然としてしまう。

『あいつは娘を異常な程に可愛がってっからな』
とは目の前の男の悪友の言葉だ。


ナルトはしみじみ思った。

(…間違いなく異常だな)←しみじみ思われたく無い



奈良シカクの言葉は誇張でも揶揄でも比喩でもなんでも無かった。事実だったのだ。

「不満じゃ無くて、あー早まったと言うか。うかつだったというか…」
言えば言うほどイノイチの表情は険しくなっていく。墓穴だ。
しかしだからと言ってこの沈黙には耐え切れないのが悲しい己の性分。

「あー、んと。まだ早くないか?」
「なにも今すぐ婚姻届けだせってわけじゃないんだよ」
そりゃそうだ。
まだ12才の子供ひっつかまえて婚姻届にサインさせたらアホかと思う。

「とりあえず、だよ。」

とりあえずで12才の身空で婚約しろとおっしゃるか。

「だって私はナルト君のお父さんになりたいんだ。だから、ね?」

大変嬉しいです。それについては1mgも不満を持っちゃいないですとも。

「私の連れ合いもナルト君にお母さんと呼んで貰うのを楽しみにしてるんだよ」
心から本当にその言葉は嬉しいですともっ
俺がどれだけ山中夫妻を気に入ってるか解ってて餌をちらつかせてるとしか思えないツボをついたお言葉です。
例え娘の将来の為の戦略だったとしてもこうまでして自分を求めてくれるなんて神様ありがとーってくらい嬉しいさ。

でも

「たぶんさ、イノも勢いで言ってるだけだと思うんだよな」

あの猪突猛進の彼女の事だ。その場のノリでうっかり言ってしまった以上貫き通すわっな感じな気がする。
限りなく真実に近い推測である。

「だからさー」
「いーや。イノちゃんはそんな子じゃありませんっ」
…あー親バカって嫌だ

盲目的に信じきっちゃってるパパはきっぱり否定なさった。
ですけどね。
あの状況ですよ?
めっちゃありえますって。

もっとしっかり計画性をもって将来の事を考えた発言をした方が彼女の為・・・って思う俺は勘違いなのでしょうか?
そう尋ねたならば山中夫妻はサックリ否定してくださるのだろう。


「ぶっちゃけですよ山中のおっちゃんや。俺とイノが似合うと思うか?」
「思うね」
コンマ一秒も迷い無く答えてくださった。突っ込む力も沸かないってなもんだ。
「・・・じゃぶっちゃけその2。イノが本当に将来後悔しないと思うか?」
俺は狐持ちだし、暗部なんかやってるし、イノにいろいろ迷惑かけるだろう。
「さー?それはイノの気持ちだから私には解らないな。でも少なくとも私と奥方は幸せ全開間違いなしだね」
「・・・いや、おっちゃん。そっちのぶっちゃけ話はいりません」
イノと俺の話しなのに何故に山中夫妻の幸せ全開がここに出てくる。

「ナルト。」
「はい?」

真剣な表情でイノイチが尋ねたから。
真剣に聞き返して見れば。

「どれだけ頑張っても私と奥方は君達の婚約解消をする気はないよ」


満面の笑みで素敵な素敵なセリフを吐いて、

「じゃあ火影様への報告は私がしておくからナルトは早く帰って睡眠をとりなさい。明日も朝から任務だろう?じゃあお疲れさま」

それだけ言ってさっさと去ってしまった。


「・・・・おっちゃん。俺のお願いはばっさり切り捨てですかー」



その後、会うたびに掛け合ってみるものの、すべて笑顔で交わされしまい。
ナルトが諦めるまでその攻防は続いたという。


これも人生経験の差ってやつだろうか。




そりゃー掴んだ大物を放すわけが無いですよねー