「おうっナルトっ勝手に邪魔してるぞ。こないだ言ってた例のもんここに置くな」
温室で水をまいていたナルトは夢中で気がつかなかったが、いつの間にか大きな植木鉢を持った大人が背後に立っていた。
気配に敏感なはずのナルトがここまで気を許していると言うことはそれだけ付き合いが深いということだ。
「んー?あっ山中のおっちゃん。うんサンキュー。これかぁ元気がなくて困ってるって言ってた花は」
「そ。お前に預けるのが一番のクスリだろうからな」
花が大好きで、花からも好かれる少年は優しく植木鉢を撫でながら、くすぐったそうに微笑んだ。
その笑みにズキュンとやられた山中のおやじ殿は、思わずかねてから着々と自分と妻の間で進行していた計画を口にしてしまった。
いや、まだ早いかなぁと思ってたんだけどな・・・
でもこういうのは早いうちから手を打っておいたほうがいいだろうし・・
誰からに横から掻っ攫われたりしたら泣くになけないだろーし・・・
な?
心の中で妻に言い訳をかます。
だって奥さんと約束したのだ。
(一緒にナルト君にお願いしにいきましょうね♪)
先走ってすまん!!
そして先走った心は一気にズバっと遠慮なく核心のみを口上した。
「実はな、ナルト。お前うちの婿養子になる気ないか?」
そうこの一言を。
「はぁぁぁ?なに突然に言ってんだ?」
まぁ順当な反応だろう。実に突然だったのは認める。
だが言わせろ。
「お前花好きだろ?」
「うん」
間髪いれず帰ってきた返事に山中は調子にのる。
「じゃあ花屋とかやりたくないか?」
「やりたいっっ」
「だよな」
計画が順調に行きそうな状況にニヤニヤ笑いが止まらない。
「で、そこでだ。うちのかーわいーーい娘と結婚してみてはどうかと思うのだが?」
「山中のおっちゃんの娘ってーと・・・イノ?」
「そうっ。可愛くて、器量よしで、優しくて、強い。お買い得だぞー」
「いや、むしろ向こうが嫌がると思うんだけど」
「何いってるっ。綺麗で最強で、良い子で、包容力があって、そんでもって花好きなんだぞっ。イノが惚れるのは時間の問題だ」
「・・・・」
褒めてくれるのは嬉しいんだけどねぇ。
いや、そりゃームリな相談だと思うよおっちゃん。
と言いたいが彼は本気らしい。
目が真剣だった。
「ま、イノがいいならいいんじゃないの?」
将来山中のおっちゃんとおばちゃんが両親になるというのは捨てがたいし、花屋の店主なんて憧れの職業につけるのも最高に魅力的。
ちょこーっとイノのあの気の強さに目をつぶればそれらが手に入る。
逃す手はないだろう。
ま、間違いなくイノが嫌がってご破算だろうけど。
そんな軽い気持ちでナルトは返事を返した。
これがそもそもの原因だったのだろう。
「パパーここにあった花知らなーい?」
「あ?ああそれなら先週知り合いにあずけたよ」
「はぁ?なにそれ」
「最近元気なかっただろう?」
「うん」
だから図書館にかよって調べたりしていたのだ
「花の世話が上手な人がいてな、そのひとに任せた」
なるほど。それなら頷ける。
「ああそれと。いの、お前の婿候補ができたぞ」
「はぁぁ?」
この父はいったい何を言い出したのだろうか。しかもかなり気軽に重要な事を言われた気がする。
「何言ってんのパパ。あたしまだ12歳よ?」
「だから候補と言っているだろう」
ニコニコとうれしそうな父。
ふと、いのは嫌な考えを思いついてしまった。
「もしかしてうちすっっごくやばいの?可愛い娘を政略結婚させちゃうくらい貧乏なの?」
「は?バカ言うな。うちはこんなんでも老舗だぞ。簡単にやばくなるわけないだろう。」
「だってっっあたしには・・・」
「ああ例の少年のことか」
「そうよっ」
毎日毎日サスケくんサスケくん言ってればさすがに父も情報通になってくる。彼がどういう身の上でどういう性格で、どういう思考をするのか。
いやまぁ自分で調べたりもしたんだけどね。
顔がよくて、頭もよくて、ルーキーの中で一番将来性がある。
確かにそうだね。
でもね・・・・
どーーーーーーーーーーーーーーーー考えても婿候補の金髪の少年に劣ると思うんだよねぇ。
父はしみじみそう思った。
「まぁ、イノがどうしてもって言うならパパも反対する気は無いんだけどね・・・。もし結婚するとしてその彼は将来うちに婿入りしてくれるのかね?」
「・・・」
ムリだ。一族唯一の生き残りだもん
「よしんば入ってくれたとして店番なんてできるかね?」
ムリだ。愛想のあの字もあったもんじゃない客商売に向かなすぎる。
「私が聞いた話ではその少年は無理だろう。それとも花屋を継ぐのをやめるかい?」
いのが継ぎたくないならいつでも畳む覚悟だよ。
やさしい声音にブンブンくびを振る。
「いやよ。将来忍び引退したら花屋やるって決めてるもの」
生まれた時からそう思ってきた。両親の為もあるかもしれないけど、むしろ花が大好きな自分の為。
イノにとって壮大な夢なのだ。
うっかりしていたのは旦那の事だけ。
一人っ子の自分が家業を継ぎたいなら当然入り婿希望である。
そんでもって当然未来の夫は花好きであってほしい。
二人でよぼよぼになっても花の世話をしたいのだ。
「なんてことっ私としたことが迂闊だったわ」
そこまで考えていなかった。
「と、衝撃を受け中のイノに朗報だ」
「何よその候補とか言う人?」
「そう。なんとっっっお前以上の花好きだ」
グラリ
それは・・・それはすっごく貴重だわっ。
しかも婿候補として最高の人材っっっ。
でもそんな事間違っても口にできない。
ので、
「そ、そんな人いっぱいいるじゃない」
「そうか?」
山中父は苦笑しながら肩をすくめる。
小さなころから花に囲まれて育ったイノは大の花好きだ。
彼女以上といったら、それは花が生きがいといった人物でなければいけない。
いるかいっぱい?
いるわけが無い。
それはイノの動揺ぶりに如実に現れていて見ていて面白い。
イノはそんな父に楯突くように口早に言った。
「どーせ。おじさんなんでしょっ」
「まさかっ。お前と同じ年だよ」
笑っていわれ、え?と思う。
父が認める男が、同じ年令・・・。やるわね。
ちょっと興味が湧く。
「ど、どうせ一般より劣った顔じゃないの?やーよあたしかっこいい人じゃなきゃ」
「いや。後数年もたてばめんくいのお前も惚れると思うぞ」
「は?」
なにそれっっ。かなりの上ランクじゃない!
そんな奴いたかしら?首をひねる
「あっもしかして一般人じゃないの?」
私より弱い旦那だなんてやーよ。やっぱ一緒に忍びの世界を生きてくれなきゃね
「それがだなぁお前と同じ忍びだ」
ぐぅの音もでない。
何その好条件っ。後は・・・後はぁ。
ここまでくるとなんとしても難癖つけたくなってくる。
何がある?
なにか・・・・
あっ
「性格はっすっごい嫌なヤツなんじゃないの?」
「さぁな。それはお前の目で確かめてみるといい」
そう言いながらも自信満々のその顔が答えを物語っていた。
「ああっもう降参っ。誰なのそれ?」
良い男に関しては情報通を自認してたのに。悔しいがその条件に当てはまる男児は検索に
引っ掛からなかった。
あたしと同じとしで、忍者やってて、将来期待できる顔立ちで、性格もよくて、あたし以
上に花好きなパパが認める男ぉ?
あたしのために用意されたような条件を取り揃えたその人物の名前。
きいた瞬間頭がまっしろになった。
「お前も知ってるだろう?ほら金の髪の・・・」
うずまきナルト
ありえないわぁぁぁ!!!
イノ生まれて初めての衝撃だった。
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