身辺調査は欠かせない! 3



「うずまきナルトは人気者」
そんなまたもや衝撃的な事実を目のあたりにしたイノ。
思った以上にダメージを受けているらしい自分にイノは苦笑した。

「ってゆうかさ、ホント何で今までまったく気付かなかったのよ」
ほんと。サスケバカと言われても仕方ないわよねー。しみじみ思った。

あれ?そう言えば今日は言われなかったわね。
小首を傾げて思い起こしてみれば・・・

「あ〜そっか今日はサスケ君にひっついてなかったわ」

必然的に取り合う必要がなかった為サクラもサスケの名を連呼することなく・・・
あら〜
意外と穏やかな一日だったじゃない。
久しぶりにサクラとじっくり会話をした気がする。

サスケさえ挟まなければ仲の良い二人のこと自然話ははずむと言うもの。
そこにあまり口を挟まないとは言え、的確な突っ込みをかますヒナタがいたのだ女三人作業をしながらいろんな話で盛り上がってしまった。

「は〜やっと終わった」
山と積まれた紙束が目の前から無くなりイノは盛大に背伸びをした。
「イノ達なんて朝からだもんね。お疲れ」
同じく肩を叩きながらサクラがねぎらう。
「そ、それ言ったらサクラちゃん達も・・・」
「そうよー朝から待ちぼうけかましてたんでしょ」
「別にあたし達はのんびりしてたからいいのよ。少なくとも最初の2時間は来ないと思って近くの演習場で特訓してたし」

ケロリと言ってみせるサクラに開いた口がふさがらない。
「なんて合理的な・・・」
「ゆ、有効活用・・・だね」
「最近はもっぱらそうよ。最初はナルトがチャクラの上手な練り方の特訓をしだしたせいなんだけどね」

そのうちどうせ来ないし近くの演習場に行こうと言うことになった。なにせ爆発しても演習場ならなんとかなるし。

「それにね。たまにナルトの知り合いの特別上忍とかが来て修業してくれたりするから」
実はカカシ先生の遅刻をそう怒ったりしてないのよ。
テヘっと舌を出して肩を竦めてみせた。

「なにそれっ。あたしも特訓してほしー!!!」
ズルーイとイノが叫べば、聞き捨てならないとばかりにヒナタも突っ込みをいれる
「な、ナルト君の知り合いって・・・」
いったいどういう知り合い?

「ずるくないわよ、別に。んーどういうって聞かれると困るんだけど。なんか昔よく遊んでくれたお兄ちゃん達・・・みたいよ。」
最初特訓中に乱入された時は驚いたが今では心待ちにさえしている彼ら。
「達って。たくさんいるの?」
「よく来てくれるのがハヤテさんにゲンマさんにイビキさんでしょ。それにアンコさん。あっあとちょっと顔出して退散してく人たちがチョロチョロと」
と指を折りながら口上してゆくサクラにイノとヒナタはポカンと口を開いてしまった。


はぁ・・・初耳よ。あいつがそんな人たちと知り合いだなんて。
何人か父から聞いたことのある名前がでてきたのだ。

『あいつらはなぁ・・・個性が強すぎて付き合うのが大変なんだよ』
ははと笑いつつ話してくれた、酒の席での暴れっぷりとか、普段の生活での変人っぷりとか。そんなこんなを聞かされていたイノは思わず心配してしまった。

「ねぇ・・無理矢理恐ろしい特訓とか受けさせられてない?」
「し、知らずに死の森に連れ出されたり・・・しなかった?」
「何よ二人して突然」
真剣な二人の顔にうろたえたサクラ。
「だってパパに」
「ち、父上に・・・」

「「聞いたから」」

上忍を親に持つもの同士ハモれば、
「今のとこそーゆーのは・・・」
考えるようにそう言って、それから
あっと声をあげた。
「そう言えば前にハヤテさんが驚いてたかも」

曰く
『ごほ、彼らがまともに修業を教える日がくるとは・・・ごほ、思いもよりませんでしたね。』
その時はただの冗談と思っていたのだが、
「もしかしてあたしたちって運がよかったのーー!!!?」

盛大に叫ぶサクラにイノとヒナタは迷いなくコックリ頷いた。

『あれらのたずなを握ってしまうとは、さすがナルト君ですね。』
付け加えられたハヤテの小さな呟きはサクラにもサスケにも届かず未だ彼らは特訓と称し
て遊びに来ている特別上忍達のストッパーが居ることを知らない。


「ただまいまぁ」
あー疲れたと首をコキコキ鳴らしながら玄関を開けると、そこには笑顔の両親が立ってい
た。
まるで待ちわびていたかのごとく。

「お帰りイノ」
「お帰りなさいイノちゃん」
「あ、うん。ただいま」
何事よ!?

「今日の任務はどうだったかい?」
言葉だけ聞けばいつも通りの質問。だけどこの裏がありそうな笑顔がなんとも警戒を誘う。
「どうって・・・いつも通りよ」
失敗することなくパーフェクトにお仕事をこなしてきました。
あー素晴らしい。
「うんうん。さすがイノ。」
頷きながらも目は語っている。
そうじゃなくて〜他にも報告すべき事があるでしょ?、と。

「・・・あのねぇ。口出し無用って朝に言ったはずなんだけど」
「でも気になるじゃないか?」
「ねっねっ。どーなのイノちゃん。進展は?」
「もーっ。ママもっあたしは、ナルトなんかを夫にする気は無いって言ってるでしょー」
「あら〜何が起こるかわからないじゃない。ナルト君の魅力をわかればイノちゃんもきっとメロメロよ」

うふふ〜と口元に手をあて怪しい笑みを浮かべる母にため息をつく。なぁにが魅力だか。
あいつ結局今日もサクラちゃんサクラちゃん叫んでたのよ。
腹立つったらありゃしない。

「とりあえずっ今日は全然話してません。あいつはシカマルとチョージんとこにいたからあたしはノータッチなのっ」
そんな事口に出来るわけがなく(狂喜乱舞されそーだから)無難な事実を口にしておく。
「奈良と秋道んとこか・・・油断できないな」
「ホント気に掛けておかなきゃダメね」
真剣な顔で話し合いだした親二人。
・・・何よ油断って。
「でも今は私達が断然リードよ」
「そうだな」

・・・だから何がリードなのよ。ちょっとぉ二人だけで分かりあわないでくれるー?
「ふ。イノも大人になれば分かるよ」
「大人の駆け引きというものよ」

・・・うっわ。分かりたくなーい。
「まあ、今のうちに先手を打っておくかな」
ボソリと父が呟いたかと思えば
「そうね。早いうちにしときましょ」
母が両手を叩いて同意する。

あのぉ・・・。
何する気よ?

斯くして相も変わらず当事者の二人を置いて山中両親は先走る。
まるで逃げ道を無くそうとするかのごとく。先の先のレールを敷いてゆく。

気に食わなければ敷かれたレールをドカンと打ち壊す事も辞さない可愛い娘と未来の婿養子の底力を忘れているのか気にしてないのか。
何にせよ山中夫妻の頭の中で未来はサンサンと輝いていた。

どこまで突っ走るんだ両親よ(笑)