シノとナルトのご関係(シノ)

「ムリだ」


黒い眼鏡の奥からジッと見つめてくる視線を感じとり、ナルトはニコリと微笑んでみせた。
「シノはさ、気にしすぎだってば。」
「今までの経験ゆえだ」
「うーん。俺たちは大丈夫だって思うんだけど・・・ダメだってば?」
まっすぐに覗き込まれ、内心うろたえた。

「すまない」
「ま、すぐにはムリだろーけどさ。でもさ、諦めたらもーそこで終わり。前にはすすめないってばよ?それでもいいってば?」
彼らしい言葉に

「うむ」

頷いた。

キョトンとした顔に“しまった”と思う。
ああ。これが誤解される元だと言うのに。
まるで“進めない事を了承”しているかの返答。進まなくてもいいと思っているかのような返答。
そうじゃないのに。何で自分は言葉が足りないのだろうか。

うむ。わかってる・・・その事はしっかり解ってはいる。そう言う意味の頷き。


「じゃちょっとずつでも頑張れっ」
は、と目の前の少年をみた。
その瞳はやわらかく微笑んでいて、
(なんでナルトには解るのだろうか)
心底不思議だと思った。

言葉少なな自分の言葉を違える事無く読み取ってくれる人と出会ったのは両親以外で初めてだった。

「なぜ・・・」
「ん?そーだなぁシノの目ぇ見てると何でか言いたい事が解るってば」
また伝わった。
こんな時人の機微に疎そうなこの少年の本質を垣間見た気がする。

「だからさ。」
ニンマリ笑うと
「その眼鏡はずしたトコ見てみたいってば」
最初の問答へと戻った。

「すまない。やはりまだ・・・」
勇気が持てない。このサングラスの奥の瞳を覗いた者は肉親以外は例外なくおののいた。
あの時の嫌悪の表情とその後のぎこちない態度は忘れられない傷としてシノの中に残っている。

油目特有の金の瞳。細長い猫の目のような瞳孔。虹彩。
全てを識っていて、大丈夫気にしないからと言ってくれた友人だってこの瞳を見た瞬間恐れを抱いた。


もう、誰にも見せまいと思った。



「ま、いっか。でもさー俺ってば油目のおっちゃんの目見た事あるってばよ?」
「・・・」

目を見開く。
驚いたと一言で表しきれないくらいに驚愕していた。
あの父が。自分ですら数える程しか見たことのない瞳を、他人にさらした・・・。


「父とは・・・」
どう言う知り合いだ?
「んーと。俺の父さんの友人?とか言ってたってば」

あの男に友人と呼べる人間がいたのか!!

新たな驚愕がシノを襲う。

「俺の父さんが恐がらなかったから俺も大丈夫だろうって見せてくれたってば」
ニコニコとどれだけ驚かせれば気がすむのか。
「それでおまえは?」
「すっげー綺麗だったっ。すげーの金といろんないろが混じってキラキラしてんのっ」
どう感じたか尋ねればこの予想外の返答。

「そうか。」
なんだか意固地になってるのがバカらしくなってくる。
「みるか?」
だからだろうか。生まれて初めて自分から見せようと思った。

きっと自分は解ってた。
彼が
「見たいっ」
満面の笑みでこう言ってくれることを。
「やっぱりシノの目も綺麗だってば」
瞳をキラキラさせてこう言ってくれることを。

一歩くらいなら前へ・・・進めただろうか。グラサン越しに見るよりずっと蒼くて綺麗な瞳をみつめながらそう思えば。

「進めたってばよっっ」

ああまた。
これだから彼には適わない。そう思いながらも
「ありがとう」
たくさんの思いをこめて。

さて、この思いの全部を読み取れるだろうか。
なんて、内心楽しんでいたり。

シノナルではありませぇん。
ただ仲が良いんですってことで。
あ、でもシノはなるとの事きっと特別扱いですよねー