サスケ捕獲からずいぶんたった頃、ようやく戻ってきたアスマはひどく憔悴した顔で言った。
「あいつは今日は休みだと言い張ってやがる・・・」
説得に失敗したらしい。
みるみる怖くなっていく生徒達の目つきにビクビクしながらアスマは遠い目をしてしまう。
(あー危険信号発令・・・・ってか?)
「・・・・・・・・・今日の任務はなんですか?」
「ここら一体の雑草抜きだ」
イノのぶちきれ寸前の質問に重々しく答えるアスマ。
「焼きます」
「まて。雑草以外は・・・・」
「焼きます」
「分かった責任は全てカカシに押し付けるから今日の任務はキャンセルに・・・」
「焼きます」
さすがにアスマも言葉が出ない。
イノはバカの一つ覚えのようにそれ以外口にしないのだ。
(あー怒ってる怒ってる。俺にどーしろってんだ)
ったくカカシのやろぉ。うちのイノ怒らせるとこぇーんだぞ。
どこの班も紅一点は怒らせないほうが無難らしい。
「イノぉアスマ先生が可哀想だって」
「冷静に見せかけてお前めちゃくちゃ頭沸騰してんだろ。落ち着けよ」
あくまで焼くといいはるイノを幼なじみ達はなだめようとする。
この班は幼なじみ同士なだけあり、こんな時的確なフォローをしてくれる2人の少年がいる分、他の班よりかは幾分マシなのであろう。
だがしかし、
「「ま、気持ちは分かるけど」」
3人は変なところで似たような思考を持っていた。
彼らとて本心は彼女と同じなのであった。
なにせこれだけ待たされた上に来なかったのだ。
怒り心頭。
ここら一体それはそれは盛大な火の海にしてしまいたい衝動にかられるくらいにはムカついていたりする。
「おいおい。お前らまできれないでくれよー」
最後の砦まで失ったら俺はどうすればいいんだ。と思わず銜えていたタバコを落としてしまった。
「うちのウスラトンカチがすまない・・・・」
そんな険悪な10班の様子を見た1人捕獲されてしまったサスケは本気で申し訳なさそうに頭を下げた。
なんだかこの悲劇の末裔の彼が一番の被害者な気がしてならない。
「へ?昨日ほんとは任務あった?」
「カカシ先生が間違えた上に言い張ったですってーーー?」
「・・・そうらしい」
次の日朝から驚愕の事実を知らされた2人はサスケの悄然とした顔に疑問を覚え尋ねた。
その結果がこれだ。
「4人でなんとか山中のやつを止めて昨日の任務は今日に持ち越しとなった・・・・」
「・・・ヴ・・・お疲れさまだってばサスケ」
「な・・涙を禁じえないわ。イノの気持ちは充分わかるけど本当にお疲れさまサスケ君」
「ああ」
2人からの同情の視線に昨日の苦労を思い出しサスケは朝っぱらから疲労を感じた。
「どうせ今日もあのヤローは遅刻だろうからさっさと行くぞ」
「そうね」
「おうっだってばっっ」
サスケの案内によってやってきた彼らはなんとなく恐る恐るその場で待っていた10班に声をかけた。
「お・・・おはよってば」
「おはよう。昨日はごめんなさい」
「・・・・・」
振り返った10班から返事は返ってこない。
「お・・・怒ってるってば・・・よね?」
「そうよね。待つだけでも業腹なのにすっぽかしだものね・・・」
自分達が悪いわけではないのに、すごく罪悪感を感じてしまう。
シュンと縮こまる金色と桜色の頭を見ていた10班の面々はフと緩やかな空気を吐き出した。
「はぁ・・・分かってたわよ。あんた達のせいじゃないことくらい。ムカついてるのはあんた達の担任にだけよ。あんた達に怒るわけないじゃない」
ようやくイノが笑い出した。
それを聞き、昨日物凄い形相で掴みかかられた記憶が新しいサスケは思わず空を眺めてしまう。
(あれは怒るといわないのだろうか?)
多分タイミングが悪かっただけだと思われるが・・・。
「ごめんごめん。脅かしちゃったね」
ついでチョージがようやく止めていた手を動かしお菓子を食べ始めた。
実はこれはかなり怖かった。
お菓子を食べる気も起きないくらい怒っているのだろうかと。
「イノの奴がちょっとくれぇびびらせてやろうって言うからよ」
怒るということを滅多にしないだけにシカマルははぁ疲れたと、いつものだらけた表情に戻しコロンと草っぱらにねっころがった。
「わりぃな」
10班の担任は銜えていたタバコを指に挟み軽く手を上げてみせ、意地悪く笑った。
「だ・・・騙したってばーーーー!?」
「もーーー驚かせないでよーー本気で怖かったんだからねーー」
「・・・・」
昨日の帰りそんな策略を10班の面々がしていたのを傍で聞いていたサスケは内心「やはりそうか」と思いつつ胸をなでおろした。
そんな彼らを止めたりしなかったのかって?・・・出来なかったに決まっている。
「さ、もうさっさとやっちゃいましょ」
イノは勢い良く立ち上がると
「昼前に終わらせるわよっ。日焼けはお肌の大敵なんだからねっ」
自分の都合を述べるだけ述べ、もくもく雑草を抜き始めた。
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