「くはーホントに昼に終わったってばーー」
腰をトントン叩きながらナルトが叫ぶ。
「これだけ広いから無理だと思ったわ」
「ナルトもサクラも読みが甘いわよ。ま、雑草を見分けるのに思ったより時間がかかっちゃったけどね」
その際草花に詳しいイノとナルトが中心となって指示をしていた。
「ナルト凄い詳しいかったねー。」
「へへっ。」
「下手したらイノの奴より詳しかったよな」
イノが見たことの無い草花すらスラリと名前を答えていたのだから大した物である。イノの知識に常々感心していた10班の2人はナルトの凄さを褒め称えた。
「花の名前を覚えるのは得意だってば!」
「忍術もそれくらい憶えられたらいいのにね」
「ひどいってばよサクラちゃんっっ」
厳しい言葉ながらも柔らかな笑顔でナルトを見ていたサクラの手には雑草といって引き抜かれた小さな花がいくつか握られている。
イノの手にも。
「でもねー雑草って言っても可愛い花とかもあるから判断に困っちゃうのよねー」
「そーそーっ抜くのにいつも迷っちゃうってばよ」
クルクルと手のなかの花を回しながらのイノの言葉にナルトはぶんぶん首を動かし同意を示す。
そしてふと思い出したようにイノに話しかけた。
「あ、そういやイノ今日この後ひまだってば?」
「へ?」
な、何よ突然っ
「任務が思ったより早く終わったからさー。山中のおっちゃんから預かってる花があるんだけど様子見て欲しいんだってば」
あ…ああ、花ね。そうよね。そのくらいしかあたしとナルトって関係ないし…あードキドキして損した。
「それはいいけどパパは?」
「んーなんか忙しいからイノよこすって」
……罠ね
「バカ親父め…また余計なことをっっ」
「い…イノ?」
目を疑っている様子の少年に内心舌打ちを繰り出し、だが表面ではニコリと笑ってみせた。
「なあに?」
「な、なんでも無いってば…」
どうやらその笑顔に充分な効果があったらしい
どんな効果かなんて聞かぬが花ね。
間違いなく見惚れてるとは思えない様子だったのだから。
断る理由も特になく案内されてやってきたナルトのお宅。
思ったよりちょっと遠かったことと、予想よりちょっと大きなナルトの家に驚いた。
しかも・・・・
「へー。温室なんてあるんだ」
憧れの温室まであるなんて!!
「うん、前に山中のおっちゃんに教わって作ってみたってば」
「ってあんたが作ったぁ?」
「そーだってばよ、設計からやって日当たりとか計算して結構楽しかったってば」
うわぁ
凄いわあんた。
そりゃこんなん買うのは下忍の給料じゃムリだろうけどさー。
普通作る?日曜大工の域を越えてるわよ。
「まぁ組立はさすがにおっちゃん達に手伝ってもらったってばよ」
「へー」
そんな頃から仲良かったんだ
温室はだいぶ年季が入ってきている。少なくとも2年はたっているはずだ。
ほほえましい話しだと言うのにムショウにイノはむかついた。
「どうしたってば?」
そんなイノの様子に気付いたのだろうナルトが下から除きこむ。
人の気持ちに疎そうなのに実際かなり気遣い屋さん(←チョージいわく)のナルトらしい反応だった。
「気分悪いってば?」
「違うわよ単に…」
何と言えばいいのだ?むかついたなんて言えないし、
「単に?」
「うん、単に温室いいなぁって思っただけ。うちにはないから」
「そんならいつでも来ればいいってばよ」
嬉しそうな顔
誘われてる?
…んな訳ないわよねぇ
深い意味なんてサラサラないだろうに思わず深読みしてしまう自分が恥ずかしい
「そうね気が向いたらね〜」
この言葉を返すのが自分の精一杯だった。
1つ1つ大切な花を紹介されて。
以前よりずっと元気になった預けていたお花を見て。
愛おしそうに植物達に声をかけていくナルトを見て悔しいがドキリと胸が高鳴った。
悔しいが悔しいが・・・・・・いやーーこんな乙女なあたしなんてあたしじゃないんだからーーーー!!
見知らぬ花を見るのが楽しいのかナルトと一緒にいるのが楽しいのか。
まだ分からない。
それでもまた必ずこの温室を訪れるだろうことは・・・・・・100%確実。
全部見切れてないし、もうすぐ咲くっていう花見てみたいし、ナルトが開発したっていう肥料にも興味あるし。
ついでに・・・いや、むしろこっちが本命。
・・・・パパの罠にがっちり嵌まったみたいで悔しいけど・・・・
ナルトにも興味があるし、ね。
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