落し物の日記帳。
中を見てみればイルカ先生作のナルト成長日記。
欲しい・・・
正直に言えばめちゃくちゃ欲しかった。
普段は口を開けば可愛げの無いことしか言わないあのナルトがアカデミーではやることなすこと全てが愛らしい。
ドベの仮面も、イルカに対する情愛のあらわし方も。
これがナルトの一面だろうと察しているからこそ微笑ましく、また読んでいて想像して頬が綻んでしまうのだろう。
このまま頂いてしまおうかと思ったのだが(おい)続きが気になるので大人しく返すことにした火影様。
ナルトがアカデミーへと入学してから毎日報告してくれるのはイルカである。
最初はそう。
誰もやりたがらなかったので人の良いイルカが押し付けられたのだ。
今では嬉々として報告にくるが。
「今日はですね。またいたずらをしかけまして。」
言ってる本人も聞いてる本人も楽しくて仕方ないというように困った悪がきについて語り合う。
「して?どんなことをしでかしたのじゃ?」
「それがですねー落とし穴ですよ。落とし穴。今時そんな古典的なっっと思ったんですけどこれが意外とーーーー」
興奮気味に心行くまで語った後二人は唐突にまじめ顔をした。
「と言うことで本日の報告を終了いたします」
「うむ。ご苦労じゃった」
まるで人が変わったかのごとき二人の応対。
そばで控えている忍びたちが思わず壁に額を打ち付けてしまうほど。
「あー。イルカよ」
「はい?」
いつもならこのまま退散なのだがその前に火影様が引きとめた。
「その・・・な」
いいにくそうに口を開く。
じれったいくらいゆっくりとキセルに火をつけ。
プハァと煙をくゆらせ・・・・・
それから
「実は。先日廊下でこれを拾ったのじゃが」
「あっ」
差し出した青いノートに声をあげる
「やはりお主のじゃったか」
「ええ。どこで無くしたかと探していたところだったんですよ。ありがとうございます」
丁寧に頭を下げられちょっぴり罪悪感がチクリ。
だが己の欲求のほうがそれよりちょっぴり勝った。
「ところでな。」
「はい」
「その日記。ワシに毎日提出してくれないか・・・のぉ?」
「は?」
いわれた意味が把握しかね、イルカはひどく悩んだ。
日記というのは心ひそかにしまっておく胸のうちを吐露する場所であり、決して人様に見せるものではない。
しかもこれは・・・・
「あいにく偏った内容しか書かれてませんので火影様に見せるようなものでは・・・」
「いや。それがいいのじゃ。むしろその前の日記から読ませて欲しいくらいでーーーー」
思わず前のめりになった3代目にイルカはニッコリ微笑んだ。
「読みましたね」
・・・・・・・
「すまぬ」
火影様は珍しく愁傷に謝った。
「そ、そこでだな。『日刊!!今日のナルトくんっ』を発行してほしいのじゃが・・・」
何かが「そこで」なのやら。
呆れた顔でイルカは図星をついた。
「火影様そんなにナルトに飢えていらっしゃるんですか?」
「最近つれないんじゃ(涙)」
「・・・・だいたい発行しても読む人なんて火影様くらいでしょう。報告書の端にでも走り書きしておきましょうか?」
それも捨てがたい。
「いや。実はもし発行するなら読みたいというやからがすでにこのくらい集まっておっての」
ペラリと一枚の紙を渡されイルカは目を通す。
そこにずらりと並ぶ人物名。
紙一枚じゃ足りなくて後ろにまで書かれている。
なんだか知ってる人が多かった。
いや、正確には名前を聞いたことがある。
有名な上忍とか。有名な暗部とか・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これはどういう人選なんでしょうか」
「いや。昔からナルトはよくコヤツラに遊んでもらっておってな・・」
「はあ。」
「アカデミーでの様子を知りたいと口をそろえて訴えてくるから煩くての。そのうちボイコットでも起こしそうな勢いじゃからそろそろ何か手を打たねばと思っていたところなのじゃ」
「・・・・・」
ボイコット
この人たちがボイコットしたら、この里機能しませんね。
イルカはうつろに笑った。
「イルカよ」
なんですかその目は。
ぽんと肩に手を置かれ。
「木の葉の里はおぬしの双肩にかかっておる」
かってにかけないでください。
そうしてイルカ作。
「日刊!!今日のナルト君」
が発行されることとなった。
っていうか内容は日記と同じだぞ?
いいのかそれで?
非常に複雑なイルカをよそに、読者たち(火影も含む)は狂喜乱舞したという
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