「はいこれが今日の分です」
最近彼には仕事がふえた。
とは言うものの全然苦にならないどころか彼自身楽しんでいる模様。
「ご苦労」
と渋くいってはみるものの火影様の視線はすでに茶色の封筒にいっている
「人数分刷っておきましたが・・・えーっと」
中から紙を取り出しピラピラとめくって二山にわけ片方を封筒にしまった
封筒を他の資料とまとめておき、取り出した数枚の紙を火影に手渡した。
「後はお願いします」
何事かわからなかった火影さまはくびを傾げ表にだされた数枚の紙をみたが、まぁいいか
と思いなおし大人しく受け取った。
「うむ。」
「それでは、失礼します」
退出した瞬間空気が慌ただしく動いた
「一番っ」
ババッと里の最高峰の忍の手から遠慮なく紙を奪い取る黒服の男が一名。
「ずりーっっよこせっ」
「引っ張るなっっ破けるっっっ」
「おいっだったらさっさと配れよっ」
「っていうか火影様そっちの封筒とって下さいよっ」
とにかくその紙を何としても誰よりも早く手にしたくて堪らない彼らは誰一人遠慮がなかった。
いつもなら畏まる相手に向かって怒鳴りまくる。
「これこれ喧嘩するでない。枚数はきちんとあると言うに。」
まるで子供のような取り合いに心広い(だが封筒はキープ(笑))火影様は苦笑してしまう。
「あれ?」
ようやく無事、全員に行き渡りそうしてピラリと一枚
思わず全員で顔を見合わせた
「はい火影様の分です」
「ああ余りは?」
「封筒外の紙はこれがラストです。あの中忍わかってたんですか」
微妙な顔をみせる上忍に火影は首をかしげた。
「・・・いやそんなはずは」
この部屋に潜む忍びの数など到底あてられるはずがない・・・のだが
「ピッタリですよ」
「じゃな」
先ほど外に出した紙の枚数はこの部屋に潜んでいた忍びの数+火影様。
ピタリ賞である。
細心の注意を払って気配を絶っていたわけではない。
・・とはいえ、相手は中忍。
こちらは上忍。
あなどりがたし万年中忍
「やっぱり偶然なんかじゃありませんね」
一人が言えば一斉に頷く
「しかも・・・」
いつも以上に気配を断ったと言うのに
自身喪失してしまいそうな出来事である
本日の忍人数6名。
しかもさりげに暗部なんかも呼び出して試してみた。
よもや・・・である。
「キリエ。お主暗部失格じゃの」
「ひっどーい火影様っそりゃー気配絶つの得意かって聞かれたらイマイチ〜って言うけどぉ。ナナシとドクに『お前の気配は読みにくいから気配消して近づくな』って怒られるくらいには出来るんですからねぇぇぇ」
それは最上級の褒め言葉である。
『あの』ナナシと『あの』ドクが、二人そろってそう言ったということは、キリエの気配絶ちは暗部内でもトップクラスのレベルだということだ。
思わず上忍5名と火影様が顔を見合わせた。
「キリエさんって凄いんですね」
「あのナナシさんとお話できるなんてっっ」
「なによーナナシのファンなのぉ?彼の内臓は私のものなんだからー狙っちゃだめよぉ」
「いえ。内臓は狙いませんから」
「それならいいのぉ」
内臓マニア。
今ようやく彼らはキリエのあだ名を思い出した。
「ま、それは置いといてぇ火影さま〜。あの中忍は明らかに私好みの内臓仕様ですぅ」
キリエの直感は凄い。
とくに己の趣味に関しては最強である。
その彼女が「好み」というのならば、イルカはそれはそれは立派な内臓を持っているのだろう。
キリエの「好みの内臓」=「ものすっごく強い人」
である。
強ければ強いほど内臓は美しい・・・・・・が彼女の持論。
隠していても彼女は近づいただけでトキめいてしまうらしい。
『あ、あの人(の内臓)素敵・・・』←うっとり
「・・・・そ・・そうか」
わかっている。わかっているのだが彼女の言葉に思わず腰が引けてしまう三代目。
「キリエがそう言うのならば確かなのだろう。ちょっと突いてみるかの」
上司の言葉に上忍一同は顔をあげる
「蛇がでたらどーすんです」
「それは幸運とスカウトするに決まっておろう」
なるほど
「ちなみに誰か希望者は」
シーン
普通にあんまり怒らせたくない人だけにだれもが視線を外した
「なんかバレたらすっごく叱られそーな気がするんですよね」
「そーそーめちゃくちゃ正当に叱られそう」
忍に属している人間が叱られるくらいでビビッてどーする
思ったが
「じゃあ火影様が行ってください」
と言われるとイヤなので口にはださない
最高峰の忍び達がビビル男って一体
「バレなければよかろう」
「確かに」
「まあそうなんですけど・・・」
「でしたら、バレたときに責任者として一緒に叱られてくれるなら引き受けてもいいです
よ」
「・・・」
三代目は明らかに視線をそらした
「一人だけ逃げようなんてそうはいきませんよ」
「だってナルトにバレたら怒られるじゃろう」
あんたの心配はそっちかーーーー
可愛い養い子は怒ったら口を聞いてくれなくなるのだ
大問題である
「では、すべてに於いて共同責任ってことで」
そこまで言ってからようやくその場にいた人間は気付いた
扉の向こうに誰かがいる・・・・
一斉に振り向いた瞬間バンッと勢いよくその扉が開放された。
「あのですね。一介のしがない中忍に共同責任で何する気ですか」
怒ったような呆れたような顔で元凶が立っていたのだ,
これだけの忍びが集まっていて今まで誰一人気づかなかったとはなんたる失態。
いや、もうこれは
「・・・疑いようがないようじゃの。」
彼の能力はこの場の誰よりも上だった。
油断していたことを差し引いたとしても彼の気配を火影である自分が気づかなかったのは事実。
うむ
火影は手招きしてイルカを呼び寄せるとその肩をポンと叩く
「おぬし暗部に入らぬか?」
火影様直々のスカウトだった
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