父思ふ


「シーカーマールー」
毎日の任務は意外と楽しかった。
たぶん興味深い先生がアカデミーにいるからだろう。

入学した時からどの先生にも忌み嫌われていたうずまきナルトに唯一普通に接する先生。
実に男気ある好人物だ。
最初の頃はなにかわだかまりがあったのだろう戸惑っていた風だったが、今ではテメーは俺の母ちゃんかってくらい口喧しい。

「宿題やれっ」
「野菜食えっ」
「遅刻するなっ」

何だか普通に子供扱いされてるよなぁ。
ちょっと新鮮。

そんな面白おかしい事件を相棒に教えてやろうと思ったのだがどうやらいない・・・。



「おうっナル坊じゃねーか。うちのアホなら今山中ん家行ってていねーぞ。ほらこいっ」

だから俺と遊べやとばかりに手を差し出すシカマルの父に唇を尖らせながら、おとなしく近づく。
バンバンッと自分の膝を叩くので文句を言いながらそこに乗ってやれば、シカマルの父はなんだか嬉しそうに笑い出した。
俺もさー結構ここ好きなんだけどそんなこと態度にだすの悔しいし、絶対いってやんねぇっ。

「ちぇーっシカマルいねーなら仕方ねー。おっちゃんで我慢してやるよ」
「そりゃーありがとよ」
子供っぽい悪態は、大人の余裕で軽く返されてしまった。
ちぇーっ

「そーいやさ、なんかあっちも任務って聞いたけど・・・どーせじっちゃんの画策だろ?」
「あー」

見抜かれてますよ火影様ぁ。
苦笑しながら頭を掻いて確言は避けておく父。

「まったく余計なことを・・・」

顔をしかめながら呟く少年を見下ろし奈良家の当主は頬をほころばせた。
なんだかんだ言いつつこの子供は3代目の気持ちをわかっている。
友達作って楽しい学生ライフを送って欲しがっているのに気付いて、その気持ちに報いてやりたいと思っている。

(ホント可愛い奴めぇ!)

ギュウっと抱き締めウリウリと頬をひっつけてくるおっさんに抵抗をしながら、
「急になんだよ、おっちゃん」
「んー可愛いナル坊に愛情ヒョーゲンだっ。」
「かわいくないっ」
「ああ?うちのアホより可愛いに決まってんだろ」
「ちげーもんっ。シカマルのが可愛いもん」

ぷぅっと頬をふくらます子供にシカ父は思わず吹き出した。

「ぶはっ。わははははは。あれを可愛い言う奴ぁ初めてみたぞ。お前大もんだなマジで」
「わーらーうーなぁぁ!!俺ってば真剣なのっ。ちょーマジだっての」

膝の上でクルリと後に向き直りポカポカ攻撃をかます子供に相好を崩しながらまたもやギュウと抱き締める。

「おーおーお前のだってばは初めて聞いたぞー」
「・・・・・・」

プクゥと膨れてそっぽを向くナルトに父はくくくと笑いだす。

(照れてる照れてるっっ)

「ほーらナル坊何して遊ぶ〜将棋かぁ?囲碁かぁ?それとも修行でもすっかー?」
「もーおっちゃんなんて知んねぇっ」
「ぶわははははっ」
「わーーらーーうーーなぁぁぁ」
「いやもうマジでお前かわいーーーー!」
「だーーかーーらぁぁぁぁ可愛くねって言ってるってばっっ」
「ほら。てば2回目〜」

指摘してやればぐっと言葉に詰まるナルト。
どんどん顔が赤くなって、恥ずかしさのあまりか、そのうち瞳がウルウルしだしてきた。
うわっすっげカワイー。

無言の抵抗で腕から抜け出そうとするのを押さえ込み幸せを堪能していると台所から妻がヒョッコリ顔を出した。
二人の様子を見て驚いたように声をあげる。

「あらあらナルちゃんどうしたの?うちの年寄りが何かした?」
「うえっ。おっちゃんが虐めるぅぅぅ」
「・・・・・あんた・・・」
「いやっ違うんだっっっ俺は純粋に可愛いがってるだけでーーー」
顔の前で手を振り落ち着かせようとする夫の言葉はウルウル見上げてくるナルトによって完全に耳に入らない。

「こんな・・・こんな可愛いナルちゃんを虐めるなんてっっっ鬼かいあんたはっっ」
「待てっだからオレは虐めてなんかっ・・・うわっ。か、家庭内暴力はんたーーいっ」
「問答無用!!」



「ヨシノママカッコいーっ」
「ナルちゃんを虐めるヤツぁあたしが殲滅してあげるわよっ」
「わーいだからヨシノママ大好きぃ」
「うっふっふ。あたしもナルちゃんが大好きよー」
ラブラブな二人に夫であるおっちゃんは慌てた。

「あ、おいこらっナル坊っ俺にはそんな事一度も言ってくれたこと・・・・」

いやこの場合可愛い未来の娘(←ここらへん微妙)の取り合いだろうか。

「だっておっちゃん意地悪だもーん」
「羨ましいだろう〜。虐めてばっかだから嫌われちゃったねぇ。」
「ち・・違うぞっナル坊は言わないだけでホントは俺の事大好きなんだ!!」
「妄想はそのへんでやめときなっ」
「ぐぇぇギブギブッッッ」

「あははは」

激しい夫婦喧嘩をおっ始めた二人を放っておいて、元凶のナルトは満足気にその場を後にした。

「シカマル帰ってくるまで部屋で寝てよーっと」

勝手しったる親友の家の親友の部屋で、ひたすら幸せな惰眠をむさぼることにしたのである。

ほのぼの奈良家話〜
呼び名を「ヨシノママ」にへんこーです。ちょっぴ悩んだわ。
勝手につけた名前だら真に受けないでね〜
縁真より