ある日突然。
ホントーーーに突然だされた禁止令。

大好きな相方から突きつけられたソレに、暗部のトップともあろうものが絶叫
した。


「な・・・なんでっなんでなんだーーー!」
ラーメン禁止令
   うずまきナルト。いわずと知れた狐の器。 12才以下の子供たちにとっては「金髪のドタバタ忍者」。 そして相方からは「天然ボケの最強ヤロー」との素敵な称号を頂いているそん な彼。 ちなみに「最強ヤロー」というのは例えでも冗談でもなくさりげなぁぁく事実 であったりする。 2つ名を持つナルト。もう1つを『ナナシ』という。そして木の葉の里・・い や多分どの里にとっても『ナナシ』と言う名は憧れ満開で口にされる。それほ ど有名で、それほど凄い人であった。 どんなアイドルも太刀打ちできない。彼のサインにはとんでもない価値がある とまで言われるほどの生きた伝説の人。 ただし忍びの世界でのみの話だが。 いつの間にやら暗部を統括する立場になっていたナナシは最近本当に不思議で たまらない。 「なぁなんでいつの間に俺がまとめてんだ?俺この間まで班のリーダーですら なかったのに」 「お前先月どでかい任務で大量な忍び助けたろ」 「はー?そうだっけ?」 「あれだけの事しといて自覚ないってどーゆーことですかナナシさんや」 「いやー・・・なぁ本気で解らねーんだけど先月のどでかい任務ってなんだ? 」 冗談や謙遜であってくれたら・・・。相方(暗部名ドク、本名奈良シカマル)は 本気で思ったがナナシの真剣な瞳はそのささやかな願いを打ち砕いてくれる。 「ドク。ナナシはいつもこうだろう。性格なんだから諦めよう」 そういったのは傍に一緒にいた暗部仲間のアオ。正体は海野イルカだったりす るのだがそれはナルトやシカマルも知らない。逆にイルカもナナシとドクの正 体は知らないのが現在の状況。 三人ともそれぞれ20代前半〜後半に変化しているし、顔立ちも全く変えてい る。その為これだけ知り合いでありながらもまだ互いの正体は気づいていない のだ。 それでも暗部の姿の時によくつるんでいたりするのはなんとなく気が合うから だろう。 「はっ。アオに諭されちまったぜ。」 相方は俺だってのにな。 遠い目をしてちょっぴり現実逃避。だって相方はいつだって自分の自慢ではあ るけれど、たまぁぁにコンビ解消してもいいっすか?と言い出したくなるほど 本気でバカなのだ。 「先日というのはほら、珍しく私たち三人が一緒に組んだあれだよ」 詳しく言わなくても、あまりに珍しかったのでそれだけで通じる。いつもなら この三人のうち2人までしか組ませてくれない。単純に戦闘力トップ1、2、 3という3人を同時に使うのが得策でないという3代目の判断である。 「ああっ。あれすっげー楽しかったよなー。やっぱ三人で任務はいいなー今度 3代目脅して・・とと、お願いしてみよっかなー」 「慌てて言い直しても今更っつー気もするけどな」 「はは。まぁわたしに異存はないから頑張れナナシ」 なにげに黒いアオの言葉にナナシとドクは口許がゆるみそうになる。 脅しアリッすかアオさんや。止めないあなたが素敵です。 顔を見合わせ瞳で『アオのこんな所が好きだよなー』などと2人で再確認しあ っているとアオが話しを戻した。 「まーそういうわけで、あれでナナシファンが増えたみたいだね。」 「ヤローのファンなんかいらねぇ」 「まぁまぁ。おかげで融通が利くじゃねーか。ラッキーだなナナシ」 「お前に全部譲ってやろうかドク?」 「や、俺はいらねーや。お前のおこぼれでちょっとラッキー貰う程度が一番」 ドクがサラリと言ってみせた言葉にナナシ憤慨露わに詰め寄った。 「お前が一番いいとこ取りじゃねーかドクっっっ」 「そりゃめんどくせーのは嫌だしな。このバランスが難しいだぜ」 「むかつくっっっ」 「はいはい喧嘩はそこまで。とりあえず統括といっても他の人たちと一緒の任 務の時に全体のリーダーに推されるだけだよな?なら今までとほとんど変わら ないんじゃないか?」 アオの言葉によくよく考えてみればその通りだなと思うナナシ。 今までだって何だかんだで結局自分かドクにリーダー役が押し付けられてたの だ。 その「何だかんだ」とやる時間が無くなっただけ実は良かったのか? あーそうなのかもなー。 「そっか。それもそうだな。なんか最近のあの当然とばかりに押し付けられる アレに疑問が募りまくってたからさー。そっかーそっかー今までと変わらない じゃんな」 ((単純)) 物凄く納得している様子のナナシに2人は苦笑してしまった。        ◆ ◇ ◆ そんな木の葉の暗部のアイドル、ナナシにも生きる糧というものがある。 というか、それが無ければ生きて行けない。それほど重要なものが。 それは幼少からいつも一緒の相方。黒髪のやる気ナッシング男、ドクこと奈良 シカマル。彼がいなければこんなにも毎日楽しく生きることは出来なかっただ ろう。 次に生まれたときから庇護して可愛がってくれた3代目火影。態度に出したこ とは無いが本当に感謝している。 それから初めて3代目以外の大人で信用した人、海野イルカ。 それからそれから 「一楽のラーメン!!」 が、かなりの上位にランクインするのはきっと裏も表も変わらない彼の嗜好だ ったりする。 ラーメンが好きで。 一楽の人たちが好きで。 ソレが高じて今や立派な常連さん。 暗部の任務帰りに食べて、次の日昼間の任務帰りにイルカ先生におごってもら って、その夜シカマルと夜中の任務前に食べに来たり。そんな三食ラーメンで も幸せ男のナルトにシカマルがついに切れたのだ。 「お前なーほどほどなら俺だって文句いわねーぜ。でもな、先週から7日続け て夜ご飯と夜食にラーメンっつーのは俺が嫌だっっっ」 「むむっ実は昼も一楽にきたってばよ」 「このラーメンバカめっっっ」 そう、たまたま偶然が重なったのだ。 忙しくて食材を買い込めなかったナルト。 母が任務で出ていて夜ご飯が家で食べれない(父が作るはずもない)シカマル。 2人は昼の任務の後落ち合って一楽で夜ご飯を食べ、家でちょっとのんびりし てから暗部のお仕事へ。 その帰りにちょっと小腹が減ったとまたもや一楽へ。 それが7日続けばいくらめんどくさくて「食べれればなんでも良い」とまで言 ってしまうシカマルですらも嫌気がさすってなもんだ。←むしろよく7日も我 慢したものだ 「とにかくっっこのままじゃ俺もそうだがお前も体を壊すっっ。しばらくラー メンは禁止だっっっっ」 びしぃと指を突きつけられたナルトは目を見開いてシカマルを見つめた。 しばらく今言われた言葉を反復してたのだろう。 ようやく頭の中に浸透した瞬間ナルトは 「な・・・なんでっなんでなんだーーー!」 物凄い勢いでうろたえた。        ◆ ◇ ◆ そんなわけで禁止令を出されてから約5日。 うずまきナルトは絶不調だった。 「うう・・力が沸かないってばよー」 元気の無いナルトに当然ながら何故かと問うた下忍の仲間たちに 「シカマルに一楽のラーメン食べるの禁止されたから」 と返せば怪訝な顔をされた。 多分はぐらかされたと思ったのだろう。 酷いってばよ。本心なのにーー。 「シカマル君に内緒で食べればいいじゃない?」 そんな中、呆れながらも打開策をくれたのはサクラ。だがしかーし 「駄目なんだってばサクラちゃん。シカマルのヤツ、一楽のおっちゃんに告げ 口したってばよーー」 『ナルトのヤツラーメン食べ過ぎでやばいんですよ。しばらく禁止令だしたん で一楽来ても食べさせないでやってください』 一楽の人たちは夜中に来ているのがナルトとは当然気づいていない。なにせ変 化しているのだし。 だからナルトが家でもラーメンばっかり食べているというニュアンスを出して 見せたシカマル。←実際食べてるし それに彼らは笑顔で『そりゃー大変だ。成長期にラーメンばっかじゃ栄養が偏 るからな』と笑顔で協力を申し出たという。 ふふ・・俺ってば敵だらけ。 そんな訳で一楽禁止5日目。 家のラーメン達も没収。こっそりカップ麺の買出しに行こうとしたら見事シカ マルに発見されて叱られた。   いじめだっっ。 これは苛め以外の何物でもないっっ。 ナルトは本気でそう思っていた。 そしてそのうち。 「うう・・・俺ってば死期が近いのかも。なんかフラフラするってばよ。ぜっ てー原因不明の病気だっっ」 そんなことまで思い始めてしまった。ラーメンよりも栄養があるものをしっか り食べているのにコレってことは何か体に異変があるのでは?とナルトは最近 怖くなって来たのだ。 本日ラーメン禁止を命じられてから11日目。長い長い11日間であった、と ナルトは後ほど力強く語る。 最近は本当に自分の体調の悪さが「ラーメンが食べれないから」、なんて単純 なものではなく、九尾の力ですらも治せないとんでもない重病に侵されている のでは!?と疑っていた。 ・・いや、むしろそうに違いないと思い込んでいた。 「おい。ナナシがその口調で話すなっ」 「だって。うう・・・ドクが冷たいっ。もうすぐ死ぬかもしれない相方にっっ 」 この生命力が旺盛すぎるナルトがどうやったら死ぬというのだろうか? 確かにいつもより元気が無いのはわかるが、それでも多分シカマルよりもよっ ぽど生命力は溢れているだろう。   簡単に言えば『無駄に元気』。 「ナナシ。とりあえず話しは後だ。こいつらとっとと片付けるぞ」 「はーい・・・よっと」 手持ちのクナイをスイッと動かしあたり一面に赤い水を舞わせる。 フラフラするとか言っていたが、それでも見事な戦闘能力に 「それだけ動けりゃ充分だっつーの」 シカマルは呟いた。    全ての敵を屠り、ホッとしたのもつかの間ナルトがストンと地面に座り込ん だ。 「わっと」 「・・・・おい大丈夫か?」 「なーなー俺マジで病気?足に力入らなくなってきた・・」 本当に不安そうな顔で聞かれシカマルは深く深く溜息をついた。 「わかった。演技じゃないのもよぉぉぉく解った」 「は?なんで演技だって思ったんだ?」 「や、うん。とりあえず。」 シカマルはアホらしいという気持ちとウルウル潤んだ瞳で見あげてきた哀しげ な表情に『絶対折れるもんか』と思っていた決意がポッきり綺麗に折れてしま ったのを感じた。そんな己の意志の弱さを情けなく思いつつも 「『ラーメン禁止令』解除してやるよ」 次の瞬間。 「へ?」 ナルトの顔中にぱぁぁぁと笑顔が広がった。 「マジ?本当?ドクっ俺ラーメン食っていいの?」 「ああ。でも食べすぎるなよ」 「うん。うんうん」 「立てるか?」 手を貸そうかと尋ねてみせればナルトはキョトンとした顔でよっこらしょと 立ち上がった。 「なんか。フラフラするの無くなった・・かも。なんだったんだろー?なんの 病気?」 「あーナナシ君や。その病名を教えて差し上げましょうかね?」 「ええっ?ドクは知ってるのか?」 驚いたようにシカマルを見たナルトに。 シカマルはめんどくさそーに教えてあげた。 「お前の病名は『ラーメン禁断症』ってーんだよ」 後日、この馬鹿げた話を溜息交じりにアオにしてみせたら彼は腹を抱えて3 分ばかし笑い転げたという。 いやぁ笑いを提供してあげられて俺も本望だぜ。 ドクはやけっぱちにそう言ってみせた。 それでも今日もドクはナナシとコンビのまんま。 アホでアホでたまらなくアホだけど、ドクにとってナナシはやっぱりたった 一人の大事な相方なのである。


2008.9.22