「うわぁきれー」
「ホントだね」

君といると世界が全て愛おしくなる

        

散歩





小さな子供をつれて散歩をしていた
実を言えば散歩なんて忍犬としかしたことがない。
しかもあいつらと言えば思うがままに走り回って気が済んだら自分の元へ戻ってくる散歩のスペシャリストだもんだから自分はただ適当な広場にいって適当な所で本を読んでただけ。
あんまり散歩とは言い難い。

だってさー散歩って歩くんでしょ?
そんで風景みて
何が楽しいの?

だからつい最近火影の名称を手に入れたばっかりの、傍若無人な俺の先生に頼まれた時は心底嫌でたまらなかった


「お願ーーい。ナル君を散歩に連れていってあげて欲しいんだよーー。」
「いやです」
だからちゃんと意思表示はした
「んーナルくーーん。このお兄ちゃんがお散歩連れてってくれるからねーよかったねー」
「人の話を聞いてくれませんか」
「えー。カカシ君つめたぁい。こんなに僕が頼んでるのにぃ」
「いやむしろ強制参加に近いんですケド」

この人を相手にしたら理詰めでは敵わない。
なぜなら敵はすっとんだ思考の持ち主だからだ
理屈は通らず無理が何故か通る
それでもいい加減この人の面倒事をおしつけられるのは勘弁と思っていたから断固拒否する気だった
なし崩しはいけない。
それでずるずるとここまでこき使われてきたのだから

「ほらっナル君。カカシ君って言うんだよー怖くないから出ておいで」
「・・ほんと?」
どこからか声がした

いや存在は気配で感じてたんだけどね
注連縄先生の足下にへばりついた小さな小さな物体
金の髪がフワフワと見え隠れしてた
「先生顔が崩れきってます」
溶けきったデレデレの顔で愛息子を見下ろす元担任に呆れた声をあげた

「だってナル君ほど可愛い子はこの世にいないよっっ」
はいはい。
親ばかもここまでくれば立派だろう
いつまでたっても足にへばりついて離れないナルトに業を煮やしたのか先生は強硬手段にでた。すなわちヒョイと抱え上げたのだ。
「ほーらっ」
「やっとーちゃ、やーだーー」
「はーいはい。可愛いネェ」
「ナルおいえでお留守番してるのーお散歩いかないーー」
「なんでー?」
「だってとーちゃおしごと。ナルがまん」
むっとした表情で父をみあげる子供におや?と眼を丸くした。
理解できなかったらしい注連縄先生はキョトンと首を傾げていたが。
「?」

「先生。及ばずながら補足させて頂きますが、多分先生がお仕事なのに自分だけ遊ぶのはダメだと言いたいのでは」
「あっっ」
それにバカオヤジは感極まったような声をあげた
「なんて・・なんて可愛いんだーーーナルトーー大丈夫だよーお父さんは明日ナル君と遊ぶために頑張ってお仕事するからナルトはお外でたーーくさんいろんなもの見てきて後でお父さんに聞かせて?」
「・・・・・・ん〜」
それでも考えてるらしい子供に頬ずりをかます
それにキャッキャッと可愛い声をあげようやく頷いた
「わあった。いってくる」
「うん。待ってるね」


「じゃあカカシ君。解ってるよね?」
「はいはい。怪我の一つもさせないようきっちりガードさせて頂きますとも」
ここで行かないなんてダダでもこねてみろ、明日から長期地獄任務が待ってるに違いない

「あのね、あのね、かぁしくん」
「あー。かかしでいいよ。ナルト」
「かぁし?うん。あのね、かぁし。はじめまして、うじゅまきなりゅとです。お散歩つれてってください。おねがいしますっ」
「まっ♪」
なんて教育の行き届いた子供でしょう
バカ親が何か言っている

まぁ同意見だから突っ込む気はないけどサ


「こちらこそ、はじめましてはたけカカシです。」
ペコリと小さな子供に向かって頭をさげる。
それに隣りでまっ♪とか頬を押さえている先生は無視しておいて、
キラキラと期待に瞳を輝かせ、でもちょっと不安そうな小さな子供に微笑んだ。

「んじゃ行きますか。」
「うんっっ♪」
よっこいしょと抱き上げて右腕に座らせてみたらナルトはフワリと微笑んだ
おっと
不覚にも見惚れた

「かぁしと一緒」
「うん。」
「たのしみだねー」
「そうだね」
「あのね公園ね、ブランコ楽しいの」
「そうなんだ」
「いぬの広場ねたぁぁくさんお花咲いてるのきれーなの」
「うんうん。そこも行こうね」
「あとねー」

止まらない子供の舌っ足らずなしゃべりに一つ一つ相づちをうつ。
最初は先生の視線が怖かったから
でもそのうち適当な相づちでも子供が喜んでくれるのが解ったから
その笑顔が強張る心を溶かしてくれるのが自分で解るから。

そうして嫌いな筈の散歩をすませ火影宅へ戻ってきて、素直な感想を一言。

「ね、ナールト。」
「う?」
「またお散歩しようね」
「うん!」

子守も散歩も結構俺に向いているのかもネ
あっナルト限定だよ

縁真さんはチビナルにはまってしまったよ・・・
ついでにカカシもはまったね。よしっショタ(犯罪者)への第一歩だっっっ
By縁真