ある日金色の髪の少年がとんでもない爆弾発言を前触れ無く投下した。
「俺ってばセンギョーシュフになるんだってばっっ」
は?
火影はどーした?
ってよか主婦?主夫?
どっちにしろ相手は誰だよっ
なんて突っ込みがうずまく中。
「なっシカマル」
「ああ。」
めんどくさそーに肩をすくめナルトの嬉しそうな顔に小さく笑い返すシカマル。
「昨日付けで婚姻届け提出してきたから。晴れて俺らは夫婦だな」
「えへへー。」
婚姻届け?
12才で?
男同士で?
夫婦ぅぅ?
下忍一同はあんぐり口をあけ問題の少年達を見つめた。
爆弾発言を投下する2日前の事である。
「目標額が貯まった」
とホクホク顔のナルトに傍で本を読んでいたシカマルは眉をあげ関心を示した。
「もう貯まったのか」
「ああ。結構節約頑張ったしな」
節約でどうにかなるような額ではないのだがナルトが頑張ってたのはよぉぉく知ってたので労っておく。
「ご苦労さん。よく頑張ったな。」
ポンポンと頭を軽く叩いてやればはにかむような笑顔をみせた。
「実はさ、こないだ書いた論文が何かの賞とれてさ。ついでにその中の術式の一つがえらく人気で
頼み込まれて専属コーチしたんだよな。あれがすげー良い金になったってわけ」
「・・・お前か。これ」
ちょうど今読んでた本に目を落とす。
知らない著者だったがパラパラみたらなかなか面白そうで珍しく衝動買いしたこれが。
「そ。面白い?」
「ああ、盲点つきまくりの見方といい、さりげに厳しい突っ込みといい。読みやすいし飽きねぇ」
「っしゃっ。シカマルがそうなら自信もてそっ」
ああ。もて。すでに3度読み返してる俺が太鼓伴押してやる。
なんて内心思いつつシカマルは好奇心がムクムク湧いてくるのを抑え切れなかった。
「授業料いくらだ?」
俺にも教えろよ、
「ただいま受付終了いたしました〜」
「ああ?」
何だと。
「ってかシカマルなら式みただけで把握できるだろ?」
「まぁ」
出来なくはない。が、やっぱ本人のが間違いがないだろう。
「まぁそれは後にして〜シカシカっ俺お願いがあるんだけど」
「ああ?」
お前が?俺に?何を?
想像がつかなかった。
そんなシカマルにナルトは本日持ってきた大きなバッグをドンっと差し出した。
実はシカマル、本日ナルトが持参してきたこのバックが非常に気になっていた。
体力バカのナルトがふうふう言いながら背負って来たのだ。そうとうな重さであろう。
今ちょっと動かしただけでも床が抜けそうな音がしたのだ。
頼み事に関係するってことはわかったが・・・何故だろうか予測が1つも立たねぇ!!
こんなところがナルトの怖い所だ。
未だかつてこのシカマルが予測つけられなかったり、1つたりとも選択肢が浮かばないなんて
ありえなかった。
このナルト相手以外では。そしてやっぱりこの男はこれでもかっっと意外性100%なお言葉
を発するのだ。
ガバリとリュックの蓋を開き、ニッコリ笑顔で。
「これセットで俺をもらってくださいな♪」
これとはリュックの中の大量の紙幣。彼の目標額分入っているのだろう。
「もらってって・・・」
「もーシカマルにぶっ。俺プロポーズしてんだけど」
ぷくぅと頬を膨らまし衝撃的なお言葉。
(さすがナルト。やることのスケールが違うぜ)
朦朧とした頭で思わず感嘆の声をあげてしまう。
「さ、シカマル。返事は?」
バッグと共に詰め寄るナルト。
んじゃ何か。お前が目標額貯めるって言ってたあれは嫁入りの持参金で、本日のお願いは
お嫁さんにしてね♪なんて幼稚園児のお約束のようなもので、そんでもって
・・・・・・・・・迫られてるのは俺・・・・・・。
(マジかよ)
「シーカー戻ってこーい」
顔の前で振られた手をぐっと掴みとりシカマルは据わった目でナルトをみやる。
「し・・・シカ?」
「お前はすっとばしすぎだ!!」
「へ?」
「プロポーズの前に告白しやがれっ恋人ですらないのにフツー持参金片手に迫るか?」
「ぶぅっっ。だってヨシノさんもシカクもいいって言ったし」
シカマル脱力。
「なんで俺より先にあいつらに言うんだ」
「んーと。あ、違う。俺がシカの恋人になってもいいか聞きに行ったんだ。そしたら恋人より
さっさと嫁になっちゃえってヨシノさんが・・・」
「かあさん・・・」
「最近さーシカが中忍なったせーかしんないけどさー、何でかシカがモテるの。
ムカつくから俺のもんになれーーー!!
」
「や、なんっつーか嬉しいけど複雑だなそれ」
正直な胸の内を吐露されシカマルは床に転がった
ヤキモチなのか子供の独占欲なのか判断つかないとこがビミョーである。
(っつーか紙一重でただのお子様的独占欲な気がするのは俺の気のせいか?)
クラクラする頭を振ってシカマルは考える。
「嫁に貰うのに異存はねぇけどよ」
むしろ願ったり叶ったりだ。
キラキラ輝くナルトの瞳を覗きこみ
「離婚は永遠に許さねぇからな。当然浮気もだ」
自ら飛び込んでくれたのだ有り難く頂くに決まっている。
後は義理堅いナルトの性格を活用すれば・・・。
「当然だってばよ!!」
この通り完璧。
「っし。母ちゃーん。書類揃ってっかー?」
「へ?」
飛んで火に入る夏の虫とはこのことだろう。
「はいはい。用意してあるわよ。ほらさっさと書いちゃいな」
ナルちゃんの気が変わらないうちに。
なんて内心の言葉を空気で感じ取りつつニヤリとほくそ笑む。
「ここに名前と住所と印鑑」
「へ?へ?」
2人の間をいったりきたりする頭をポンと叩きペンを持たせれば言われた通りサラリと
綺麗な字でサインし始めた。
「あ、でも俺印鑑は・・・」
作ってない、そう言われるのは予想していた。
「母ちゃん」
「はいはい。勝手に用意させてもらっちゃったわよ」
やっぱり用意してやがったか。さすが俺の母親。ぬかりがない。
「これ何でじっちゃんのサインが?」
「ああ。うちのクソ親父が脅してきたんだろ」
ナルトの保護者欄の名前は明らかに歪んだ字。更にはシミまでみえる。
泣いたな三代目・・・。
まぁ何にせよサインさえあればこっちのもんだ。
「ナルト。これを提出すれば晴れてお前は俺の嫁だ」
「へ?あ・・ウン。そうだってばね」
あまりの早い展開にナルトは思わず「だってば」口調。
なに?何が起こっているの?
ってな顔をしたままキョトンとシカマルを見つめたナルトに、奈良親子はにんまり笑った。
「ようするにプロポーズの返事はイエスってことだ」
「・・・・・・・・え!ほんと?やったあぁぁぁぁ」
訳がわかってない筈なのに反射的にナルトは諸手をあげて喜んで見せた。
なんて可愛い生き物だろうか。
これがたった今から俺だけのものか・・・。
シカマルはほくそえんだ。
「な、なあなあシカッ。じゃあ今からシカマルは俺のもの?」
「そうだ」
「んじゃ俺が一番大事?」
「もちろん」
「えーっと後ーー」
満面の笑みで可愛い質問ばかり飛び出てくる。
「お前今日からここに住むか?それとも俺がお前ん家行った方がいいか?」
「へ?」
「夫婦だろ俺ら?別居なんて寂しいじゃねえか」
「あ・・・そっか夫婦・・・・・・」
その響きにうろたえたような反応を見せる。
なんだ嫌なのかよ?
「じゃあ・・・俺さ・・・・シカマルの為に専業主婦になるっ」
「・・・・・はぁ?」
またおかしな事言い出したぞ?と思っていたら。
「だって火影になったらシカとずーーっと一緒って無理だもんな。専業主婦ならいつでも
一緒だしおいしいご飯作ってあげれるし」
そんな愛らしい事言い出しやがった。おいこら暗部の稼ぎ頭っっっ。
可愛すぎだろお前ぇぇぇぇ。
「だからさ。専業主婦になってもいーい?」
首を傾げてお伺い。
もちろん良いに決まってるじゃねーか。
「っつーわけで、こいつ俺のだから宜しくな」
ニンマリ笑ってシカマルはナルトを攫って去ってゆく。
残されたのは訳がわからなく呆然としているか、涙を流す恋破れし者ばかり。
ナルトにもシカマルにも恋心を抱いていなかった元気なサクラとイノは馴れ初めを聞いて
やるっと勢いよく2人を追いかけていったのだった。
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