誰がなんと言おうとトバッチリ。それ以外の何物でもない。
っつーか「仕方なかった」とかそーゆー適当なこと言うのはやめてくんねー?
あんたらにとってはしょせん人事。被害はすべて俺一人がひっかぶってんだからさ。


物心付いた頃からそれはもう。
猛烈に負の感情を背負ってた俺。
だってよー。どーやったら笑えるよ?
毎日毎日いわれの無い悪意ぶつけられて、命狙われて、何だ?俺に死ねってか?
いっそ清々しく殺されてやった上に腹ん中のブツを世にリターンさせてやったら爽快だろうなー。
なんてあの頃はいっつも考えてた。
とても楽しい妄想でしたとも。
そんでもって一番ムカつくのが一応俺のホゴシャとか自称してるジジィ。
『火影の立場上』とかぬかして助けてくれさえしねぇくせに家族面だけは一丁前。
腸煮えくり返る・・・なんてもんじゃねーって。

「ナルト。大丈夫だったか?すまなかったのぅ」
いや、それ何度目だ?ってセリフ。
暗殺者返り討ちにするたんび聞いてるからさー。
もーさー。それ聞き飽きたからそろそろ別バージョンにいかねぇ?
「別に」
そして返す言葉もかわらない。何年この言葉を繰り返してんだ俺。

そんなある日のこと。
ジジィが唐突に・・・ほんっとーーに唐突にとんでもない事を言い出したのだ。
曰く
「明日からアカデミーに通うのじゃぞ」
子供は子供らしく友達と遊んでくるのじゃ。
・・・・・・うっわぁ。
って思ったね。
生まれて初めて真剣に里抜けを検討したし。←めんどいからやめたが
「・・・・」
本気かよこのジジィ。と見つめていれば
「用意はここに置いておくからのう。明日はいつもの時間より少しだけ早く起きるのじゃぞ」
フォーーフォッフォー。言うだけいって楽しそうな笑いと共に去っていった。
マイペース万歳。怒る間もなかったな。
あのジーさんは外に出たとき俺がどんくらい被害受けるのか、とか考えねぇのか?
そーだよな。考えてたらあんな笑顔向けねーよな。
それとも全て計算づく?
俺を不幸にして楽しんでんのか?
なぁぁんて疑いたくなっても仕方ねぇって。
「・・・・・・・・アカデミー・・俺に何を学べと・・・?」
すでに暗部で活躍してる俺がそこに行く意味。
あいにくとんでもなく働くはずの俺の頭は1つたりともその答えをはじき出せなかった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はいシカマル。おやつ」
「ん」
もくもく手元の本から目を離さず煎餅をむさぼる。
昔からこう。
会話は日常として必要最低限。まれに一言も話さないことすらある。
慣れているのか、諦めているのかお袋は気にせず話かけてくる。
生れたときからすでに天才児。とりあえず化け物並みの頭脳を持っていた。
世の中の全てを理解し、その代わりだろう、人間としての感情が軒並み抜け落ちていた。
笑う。泣く。怒る。悲しむ。
めんどくさくなくて楽といえば楽なんだが、無表情無感動の子供を育てる親は
たまったもんじゃないだろう。
忌み子として抹殺されていてもおかしくない自分を両親は不思議なことに
大変大切に育ててくれた。
親がこの二人じゃなければ俺はとっくに殺されていただろう。
だから・・・・多分、両親にはかなり感謝してるんだと思う。
だが時々おこす親父の奇行は本気でどうにかして欲しい。

「そういえば、お父さんどーやらあんたのアカデミーの手続きしてきたらしーわよ」
「・・・・・」
フと顔をあげる。
アカデミー?あの忍者の登竜門?今更?
「そーよねー。今更よね」
顔から読み取ってくれるのがありがたい。
「まぁ文句はおとーさんに言ってちょうだい」
「・・いつから」
「明日入学式よ」
「・・・・・」
それだけ聞いてそのまま書物に視線をおとす。
(抹殺したらだめか?)
かなり本気で奈良シカク殺害計画が頭をよぎった。
しかし
「・・・めんどくせぇ」
後々やっかいだと考え直し、ボリッと煎餅を噛み砕いた。

  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
    出会って、それから
       ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

3代目火影様が彼らを組ませたのは偶然だった。
ただ、暗部の数が足りなくて、仕方なく・・・だったのだ。
誰が考える?
たった6歳の子供二人を組ませてSSランクの任務に行かせるなんて。
だがそれが良かったのだと今でも3代目は思う。
あの。
あ・の・ナルトが生まれて初めて言ったのだ。
 「今日組んだやつさ。けっこーいけてたから次もよろしく」
3代目火影様の「ナルト君成長日記」はその日5ページにも及び感動の言葉で
うめつくされたらしい。
ナルトが人に興味を持ってくれた・・・・・(感涙)

「どーも。」
「ん、どーも」
二人の挨拶は初めて会ったとは思えないほどに適当だった。
「こやつがナナ」
軽く眉をあげてみせる黒髪の20代半ばと思わしき青年。
「こやつがシシ」
同じく軽く目を細めてみせた茶髪の同年代っぽい青年。
どうやら挨拶は最初のあれだけで十分と互いに考えているらしい。

表情筋を動かさないことにかけてはこの二人大変似ていた。
言葉を発するのもうざい。
そんな考えも似ていた。
そして何より似ていたのがその空気。
互いにその第一印象を後に語ってみせれば
「「へぇ。ドッペルゲンガーみてぇ」」
だと言う。
もう一人自分がこの世にいたらこんな感じ?
だからこそ任務も息がピッタリでやばいくらいに爽快だった。

そして先の発言となる。
ナナ・・・ナルト(単純すぎてどうしようもない暗部名だがそれは置いといて)は言ったわけだ。
「次もよろしく」と。
火影を介してそれを受けてシシ・・・シカマル(もう何も言うまい)も同意を示して。
そして彼らは火影の命によりコンビとなった。
これまた後にナルトは語る。
「こんな時くれぇコネ(←3代目のこと)は使わねぇとな。他に役立たねぇし」
辛らつな内容のわりに結構満足そうな顔だったらしい。

だがしかし、3代目の誤算は彼らがなかなかお互いの私生活に踏み込まなかったことだろう。
二人の能力なら互いの正体を簡単に探し当てられるはずだと言うのにまるでそれが
ルールとばかりに任務以外では関わりを持とうとしない。
だから3代目は荒療治に出たのだ(たぶん)。
無理矢理外世界に押し出し、人間を知ってもらう。
そしてどれだけナルトがあの相棒を気に入っているのか考えてもらおうと。
ついでにアカデミーで友人でも出来たらめっけもん・・・ぐらいの考えであろう。
果たして吉とでるか凶とでるか。
それは火影にだって分からない。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「アカデミー・・・ねぇ」
めんどくせぇ。
呟きながらも彼、奈良シカマルはアカデミーの門をくぐっていた。
背後に(一応)幼馴染みという存在をぶら下げて。
「ねっねっシカマルーこの服変じゃない?」
「あーいーいー。じゅーぶんだ」
見もしないで手を振ってみせればプクゥと膨れるめんどくさい女。
それが山中イノ。
「僕もとってもいいと思うよ。そーゆー服イノ似合うもんね」
と見事なフォローをみせてくれるありがたい少年は秋道チョージ。
親が仲良いから必然的に・・・な関係を強要されている今日この頃。
波風立てるほうがめんどさいから適当に合わせて適当にあしらっている。

あーそこ行くとナナとのコンビは楽だよなぁ。
と夜に思考を走らせてみる。たんなる現実逃避である。
あそこまで言葉無しで以心伝心だと心のオアシス的存在になってしまうのかもしれない。
ボーっとしている間に入学式は終わり教室へとイノ達の手により運ばれていく。
あー楽だー。
そのまま幼馴染に促されるままにストンと椅子に座りボヘェとする。
あーいいなぁあいつ。俺も寝てぇ。
などと考える「アイツ」、というのは今頃のん気に熟睡こいている『奈良シカマル本体』である。
(っつーかフツー初日から影分身使うか?)
とは影分身であるシカマルの考えである。
分裂だけあって、思考回路は同じ。
ただ、本体より力が無く、正真正銘「忍者の卵の奈良シカマル」である。

はぁ・・と本体の非常識っぷりにため息をついたシカマルの耳にドタドタ荒々しい足音が聞こえた。
「ッセーーーフっセーフだってばーーーー!」
けたたましい叫び声と共に教室に駆け込んできた金色。
うわすっげぇ眩しいくらいの金髪だな。一度みたら忘れないだろうその強烈な存在感。
たしか入学式にはいなかったように思う。
遅刻か。あんまり関わりたくねーなぁ。
欠伸をしながらチラリと視線だけ向け、すぐに戻そうとしていたのだが・・・。
シカマルは目を見開いた。
そして飛び込んできたナルトもこちらを見て、目を見開いてポカンと口をあけている。

互いに恐る恐ると人差し指を突きつける。
そして声を発さず口元だけで問いかけた。
「「か・・・・かげ?」」
そう。奈良シカマル以外にも非常識なやつがこの世にいたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

一方そのころ本体は
「シカマルっおきなさいっっっ」
母の襲撃にあっていた。
「んーーー」
「どこの世界に影分身にアカデミー通わせる忍者の卵がいるってゆーのっっ」
普通はいまい。
影分身が出来るレベルでアカデミーに通っているほうがおかしいのだ。
じゃあアカデミーなんか通わせるなよなんてグチが胸の中にモヤモヤ発生してくる。
だがそんな文句が口をついて出る前にシカマルは跳ね起きた。
あまりの勢いに布団を持ったままコロンと母が転がるくらいに突然に。
そうしてシカマルは一言呟いた。
「・・・・・いた・・・・」
俺以外の非常識人発見。
影分身の動揺は100%シカマルにも伝わった。
そして本体はもう一度パタリと布団に体をもどす。

「うずまき・・・ナルト・・・」
シカマルの呟きに母のほうが驚く。
よっこいしょと起き上がり掛け布団を畳みながら尋ねた。
「あらあんた知り合いなの?」
「いや。誰だ?」
「狐を押し付けられた不幸な子供じゃないの。結構前に話したはずだけど?」
「・・・・・・・・・・・・ああ。あれか。」
サラリと里のトップシークレットを述べる母。
同じくサラリと受け入れる息子。
この家ではこれが普通である。
隠し事はむしろシカマルの専売特許で、両親はかなりオープン。
その心は、「シカマルなら言わなくても調べれちゃうし」である。
じゃあその調べる時間を省いてあげましょ♪
と言うのが奈良家の教育方針らしい。←それでいいのか?

「で、ナルト君がどーしたの?」
「同じ穴のムジナ」
「は?」
「影分身にアカデミー通わせる非常識な忍者の卵」
「はいー?」
珍しく良く話す息子に気分をよくしつつ、母はさっぱり要領を得ない息子の顔をマジマジとみた。
笑っていた。
(初めて見たわよこんな顔)
「おもしれぇ。ふぅん」
唇を持ち上げたまま、よっこいしょと体をようやく起こした。

「客がくるぜ。茶ぁ用意してくれ」
「え?」
「いいから。ここに。」
持ってきてくれ。
「ご飯は?」
「・・・適当に」
「リョーカイ。ま、いいわとりあえずパジャマぐらい着替えなさいよ。客がくるなら」
「ああ」
ありがたい突っ込み無しの対応に頷きタンスに手をかけた。
とりあえず、Tシャツとズボンでいいか。

数分とたたないうちに客はやってきた。
ただし玄関からではなく窓からでもなく。
シカマルの部屋に直接、突然ふって沸いた。
「じゃまするぜ」
「靴は脱げよ」
「ああ、忘れてた」
慌てていたのだろう。突如あらわれたその人物は靴を脱ぎベランダにポイッと放り投げる。
「改めておはよう」
「ああ、おはよう」
金髪の少年。影分身とは違い黒い上下姿のうずまきナルトは表情を動かすことなく挨拶を口にする。
同じくシカマルも。
互いに
突然あらわれたナルトに、そんな自分に驚かないシカマルに、驚くでもなく淡々と交わす。
「さっきはどうも」
「ああ、おどれーたぜ」
当たり障り無い言葉で会話を切り出したナルトに唇を持ち上げてニヤリと笑ってみせるシカマル。
「同じく。まさか俺以外にあんなアホな状況受け入れてる奴がいると思わなかったしな」
「だろーとも。俺だって思わなかったっての。んで?何しにきたわけ?」
シカマルの問いにナルトは金の髪をゆらしながら首をかしげてみせた。
「いや、確認・・ってわけじゃねぇけど。んーなんとなく?用は無い。」
「まぁそっちが来なかったら俺が行ってたけどな」
昼ぐらいに。←行動が遅い
くくっと笑い出すシカマル。それがどれだけレアだか知らないナルトは眉をしかめながらも

良く笑うやつだなぁと感心してしまう。
「じゃあ俺はこれで・・・」
トントンと階段を昇ってくる気配にナルトが姿を消そうとしたのをシカマルががっちり
手首を掴んで阻止した。
「ああ、まだいいぜ。もうすぐ茶ぁくるから座ってろよ」
「・・・・なら座る」
ナルトは握られた手首に眉をしかめつつ訳が分からないシカマルの言葉に半信半疑で頷いた。

「はい、お茶って・・・あらお客ってナルト君だったの。いらっしゃい。シカマルの母のヨシノです。」
「・・・・おじゃましてます。・・・うずまきナルトです」
扉を開いたのは女性だった。
ノックと同時に入ってきた女性はナルトの存在に驚きはしたものの嫌悪もなければ何故かあっさり受け入れた。
それに少々うろたえつつもナルトは軽く頭をさげる。
挨拶は人間の基本だと叩き込まれているのだ。←3代目頑張ったねっ
とんとんと目の前に用意されていくお茶&おにぎり。
不思議なものをみるようにそれを眺めているナルトにこれまた仰天な事に彼女は話しかけてきた。
「ナルト君朝ごはんたべた?」
「・・一応」
3代目が自ら用意して同席して食べるというのが日課なのだ。むかぁぁしに嫌で堪らなくなって
逃げたら火影業務のストライキを始めたのでおとなしく一緒に食べることに
しているナルト。←・・・3代目それはどうかと
だがあんなジーさんの顔見て食べても全く飯はおいしくない。って事でそんなに量は食べていないのだ。
「多めに作ってきたからお腹すいてたらそれ摘んでね。あっあとっこのお漬物奈良家秘伝なのよっ是非食べてって。」
「はぁ」
「あっそれとっそれとっ」
「・・・母さん・・・」
それではと漬物を摘むナルトを見て嬉しそうな顔をした母が更にエプロンのポケットから
何かしらを取り出そうとしたのを制止する。多分ヨシノが最近嵌まっているチョコレート
を勧めようとしたのだろう。
いい加減にしとけっての。
「もーっ。いーじゃないっナルト君とお話したいのよっっ」
「そのナルトが困ってるだろーが」
あらら?と横を見れば漬物片手に固まったままのナルト。多分現在の状況を理解するのが
困難なのだろう。頭の中は母の行動理由を求めるべく高速回転しているのだろうなぁと
シカマルは同情したくなってくる。
これだからうちの親は、と内心苦笑が漏れでる。
「え?あら。やだ。えーと・・・じゃごゆっくり。」
「はぁどうも」
慌しくにこやかに退場したシカマルの母親。
無理した様子のないことから彼女はナルトに悪意を抱いていない。どころか。
回転しまくったその頭脳でようやく、よーうーやーく、思い至った。
(むしろどっちかっていうと・・・・こ・・・・好意を抱かれているかも・・・・
しれない?)←初めてのことに自信がない(笑)
「あー腹減った」
「あの人お前のこと知ってんのか?」
「あ?ああ。さっきも影分身使って学校さぼるなボケって叩き起こされてたとこだ」
「・・・・」
素敵な家庭である。

なんとなく二人でモソモソおにぎりを食しつつペロリと結構な量を平らげ、それから・・ナルトは呟いた。
「お前の母さんいいな」
「まあな」
ニヤリとシカマルは笑ってみせた。

次の日から二人が本体でアカデミーへ通いだしたのは言うまでもないことだろうか。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「なぁ俺はお前を調べていいか?」
そんな質問を受けたのはアカデミー入学式から3ヶ月もたってからである。

あれ以来しょっちゅうシカマルの家に遊びにきているナルト。
とは言うもの、二人一緒にいてもだいたい別々に本を読んでいる。
それのどこが楽しいのか他人には理解できないかもしれないが、時々本から顔を
あげると視界に互いの姿が映るのが嬉しいらしい。
たまに一緒に暗号の解読をしたりするのもこれ以上無い楽しみだし、
二人で新しい技を編み出すのも楽しい。
だがしかし、本日の読書タイムはいつもとちょっと違い、シカマルから今の発言が突然とびでてきたのだ。

どちらも気にはしていたものの、踏み込んでいいのか読みきれず、なぁなぁに流していたこの件。
ようやく先にシカマルが動いた。
まぁ会いに来てくれたのはナルトの方からなのだから今度は自分の番だろう。
とさりげなく律儀なシカマルは思考の片隅で思ったのかもしれない。←だがやっぱり行動が遅い(笑)

ナルトは本から顔をあげると、最近ようやく覚えた笑顔をみせた。
「シカマルのことを調べる権利をもらえるならいくらでもどーぞ」
「っし契約成立。」
アカデミーでみせるのとは大違いの柔らかな笑顔に気分をよくしたシカマルは
パチリと指を鳴らしニヤリと笑ってみせた。
「どっちが早く調べられるか。」
「競争ってか。言っとくけど俺には大きなコネがあるんだぜ」
「3代目か?んなもんコネのうちに入るかっての。」
「・・・けっ。」
バレてたか。
こんな事もあろうかと、シカマルはすでに3代目に『ナルトには決して俺の正体
教えんなよ。』と脅してある。たとえ泣き落とそうが火影という立場上それは守ることだろう。
ナルトの顰めた顔に笑い出しつつ、シカマルは珍しいことにやる気全開だった。
「じゃとりあえずー」
「ん、とりあえず」

「「明日からってことで」」
満足気に頷くと、二人はシカマルの部屋でゴロリと読書を再開した。


「シカマルー。ナルトくーん。夜ご飯よーーー」

「今行きますー」
「んー」
最近当たり前のように用意されるナルトのご飯。
何気なくナルト専用茶碗と箸なんか用意されてて、すでに定着したいつもの席まであって。
ナルトとしてはかなり面映い。

「おうナルト。晩酌しろや」
そんな言葉が飛び出る程度にはシカマルの父との交流も深まっている。
だからと言ってついでやる義務はない。
「自分でどうぞ」
「つめてぇぇ。母ちゃんナルトの奴ひでーぞっ」
「はいはい。ナルト君一杯だけついでやってくれない?それ以上ねだるようなら
殴ってくれて構わないから」
ニッコリ頼まれたシカマルの母の言葉にニッと笑うと
「ほらよ。一杯限定だぜ。」
「おおぅっとと。ッカーーーやっぱ美人の酌した酒はうめぇ。もう一杯っ」
ドガッ
ナルトの強烈なデコピンが炸裂した。
だいぶ威力を抑えているところが奈良シカクへの好意の表れかもしれない。←あまり表れてないかも・・・
イスごと倒れたシカマル父に家族は白い視線を向けた。
「ナイスっナルト君っ」
「自業自得だ。くそ親父」
親指を立てる母親と悪態をつく息子にかまう事無く父は頭を抑えながらふざけたセリフを吐いた。
「く・・・ナルトの愛が痛いっ」
「そんなもんねーから。」
「いや。隠すな。俺にはわかってる」
「妄想癖?病院いったほうがいいんじゃねーの?」
「ふ。心配されちまったぜ。シカマルいい嫁貰ったな」
「「・・・」」
ガタリと無言で立ち上がった子供二人に思わずシカクは後ずさった。
「すまん。俺が悪かった。だから箸握り締めて近寄らないでくれっっ」
刺されるぅぅぅ。
大げさに叫ぶシカクに青筋を立てつつもとりあえず席に座る。本気で怒る自分達が
バカらしくなってきたのかもしれない。
「二度目は無いからな」
「次は追い出すぜ」
ナルトとシカマルの辛らつな言葉に「へいへい」と適当に相槌を打ちながら
シカクは奥さんと視線でニヤリと笑いあった。
ナルトが来てからよく喋るしよく感情を出すようになったシカマルに二人は大喜びなのだ。

「あ、そうだ明日からちょっとの間これなくなるから」
「え?なんで?明日の夜ご飯はミソラーメンにしようと思ってたのにっっ」
「・・・・シカマル夕飯食うのはありか?」
ラーメンで釣られるなよ。
と思いつつシカマルは苦笑しながら頷いてみせた。
「なぁに?シカマルが出入り禁止にしたの?」
「違げーって。ちょっと明日から勝負すっから決着つくまで会わないほうがいいかって話」
怖い顔で睨みつけてきた母にヒラヒラ手をふり、きちんと説明する。
「そ、だけど夜ご飯だけは解禁っ。助かったーヨシノさんのメシ食えなくなるかと思った」
「まっナルト君の為なら押しかけ家政婦やっちゃうわよ♪」
「そんで我が家のメシが困窮すんだろ」
「そーそーナルトが来てから母ちゃんの料理手が込むようになったもんなぁ」
息子と夫の言葉にお母さんはニッと笑ってみせた。
「あたりまえね。ナルト君はちゃんとおいしいって言ってくれるもの」
感想のないあんたらに手が込んだご飯作っても楽しくもなんともないっての。

ごもっともである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

勝負だっと宣言してから2日。
着々と二人は情報を集めていた。
ナルトは3代目を泣き落とすなんて無駄なことに時間を使わず、そして奈良の
両親に探りを入れるなんミョーに後ろめたい手を使わず正々堂々と自力で調査。
一方シカマルも、3代目を脅すなんてめんどくさい事をせず、ナルトが
シカマルの部屋に置いていくようになった荷物を漁るなんて卑怯な手を使わずこれまた自分のみの力で探索。

その結果分かったのはお互いが暗部所属であること。
「「へーー」」
思わず納得。
これなら修行も一緒に出来るなと期待が膨らむ。
「で、問題は暗部の誰かってことだ」
正体が明かされていない暗部のリストを作成し、とりあえず12年以上前からいる
人間だけ消し、それかしらみつぶしにしていくしかない。
「ギエイ、マイ、キトヤは違ったか。後は・・・・・」
残ったリストに載るメンバーに眉をしかめる。
まさかありえまいと思ってあえて後に回したってのにその「まさか」か?
昨夜の任務で背を預けた人物の名前がポッカリ浮かび上がるように残されていた。
「だってあいつ6年前から・・・いや俺もだけどよ」
シカマルは自分が非常識な存在の割りに他の非常識を簡単に受け入れられない。
変なところでモラリストである。

その点柔軟な頭をしているナルトは
「あーそっかー俺と一緒なんだー。俺と組んだ6年前にはすでに暗部ー。
でも確かこいつってその2年まえから暗部してたってゆーからやっぱり俺と同じで
4才から暗部所属ってことかー。へーへーへー」
ポコポコ机を手のひらで叩いてみせたナルト。
次の瞬間
「・・・って信じられるかっての」
柔軟?
時に人間は信じたくない事に関しては頑固になってしまうものらしい。だからこそ
「「ありえねーって」」


結局、雌雄がついたか、といえば微妙だが、間違いなく決着はついた。
5日目の夜、任務が入った。
あれからどれだけ調べてもやっぱりこいつしか居ないという結果しかでなかった。
いくら頭が理解しなくても、消去法で1人しか残らなかったのだ。

なんで信じたくないのかと言えば、
「「今まで6年以上組んできて、あいつが自分と同じ年齢だと気づけなかったなんて恥だぁぁぁぁ」」
なんて言葉が胸に渦巻くせいかもしれない(笑)
だがしかし現実とは無常なものなのである。
「ナナ、シシ。今夜の任務は・・・・・」
火影室に呼び出した二人は3代目のほうを全くみない。
互いの顔を見たまま微動だにしない二人。
(何事じゃ?)
と固唾を呑んで見守る(任務はいいのか?)火影様をよそにナナもシシも他事を考えられない状態だった。
現在、世界は二人だけのもの(笑)
疑わしげに見詰め合った二人は相手のその視線の意味にハッと気がついてしまった。
いつぞやの影分身のように恐る恐る互いを指差し、
「ナルト?」
「シカマル?」
ほぼ同時に二人言い放ち、そして
「「まじかよーーー」」
盛大に叫んだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後二人がどうなったかといえば。
なんてことない。
今までの5倍ほど仲がよくなっただけだ。←だけ?(笑)

「ナルーみろこれ」
「んぁ?うわなんだこの術式変則すぎー。シカお手製か?」
「ばぁか。ちげーって。こないだ新しく発表されたやつ」
「へー使えるのか?」
「全然応用きかねー」
「駄目じゃん」
「駄目駄目だ」
腹を抱えて二人で笑い転げる。

扉の影からのぞいている両親が
「ふふふ。外堀固めてナルト君ゲットよっ」
「嫁だ嫁っ。早く住み着いちまえよ〜」
なんて話し合ってるのなんてとっくに知っているが、二人はサラリと聞きながし、今日も楽しく読書中。
シカマルの部屋にはいつの間にかナルト専用のタンスまで置いてあって、一式服が入ってたりする。

ハブラシも、パジャマも。
自分の家よりよっぽどちゃんとそろっているもう一つの我が家。
そのうち専用の部屋まで用意されそうな勢いにナルトもシカマルも苦笑してしまう。



表も裏も関係ない。
変化した顔で出会って、それから影分身同士で出会って・・・・それからようやく本体が出会うなんて。
不思議な道のりを経て出会った二人。

出会って、それから。
泣いて笑って怒って。嫉妬して自慢して。安心して、ドキドキして。


二人で沢山の感情を手に入れた。



end