バレンタインの季節です。 バレンタインなのです。 バレンタインなのですよーーーーー (Byカカシ心の叫び)
本日の7班の任務は草むしりーーーー いつものごとくです。 ただこの季節は実に寒いので一時間ごとに休憩を入れることにしていた。 その休憩のときのお話。 そわそわしているここ7班の中で唯一のほほんとしているのは金の髪をフワフワさせた元気な少年一人のみ。 その少年、ナルトは暖かいミルクをコクコク飲みながら暖を取っていた。 サクラはちらちらサスケを見てそわそわ。 サスケは何気なさをよそおってナルトを見てそわそわ。 そして担当上忍カカシはと言えば 「ナァァルトッ」 直球アタックである。 見てるだけなんて可愛いことをするはずが無い。 この男がこの小さなひよこさんに惚れ込んでから実を言えば数年たっているというのに無理やり事を運んでしまわなかったのは奇跡としか言いようがなかろう。 「な、なんだってばカカシせんせー?」 コクリと首をかしげる様に身悶えるのは二人の男。 さりげにサクラも胸を押さえているところを見るとキュンと来ているようだ。 「ナルトは明日何の日かしってるー?」 「明日?」 うーんと腕を組んで考え込みだした子供にカカシは大いにあせった。 待って。 待ってください。 よもや存在自体知らない? そんな馬鹿な・・ ナルトの存在は生まれた瞬間から知っていた。 何せカカシの担当上忍の息子である。 奥さんのおなかにいた頃からのお知り合いである。 そして恋しちゃったのはナルトが物心ついて、たまに遊びにくる暗部のオニイチャンと自分を認識したころ。 「あっおにーちゃんっいらっしゃいってばーーー」 コロコロと良く笑い。 会いに行けばピッタリへばりついて離れない。 懐いて懐いて懐きまくられたカカシはあまりの愛らしさに鼻血が止まらなくなったこともあるくらいだ。 もちろんそんな邪まなカカシの思惑を知ってのことだろうナルトに会うことを祖父がわりの火影より禁じられて数年。 禁断症状がでないよう定期的にナルトの様子を覗きに言っては禁を破りそうにっ・・・ていうか破って火影に長期任務に追いやられたり、したものである。 それが解禁っ(別に許したわけじゃないっわBy三代目火影) ずっとかねてよりお願いしていたナルトの担当上忍という地位を授けてくださった(もぎ取ったとも言う) 神様と火影様に感謝感激である。 こうしてほぼ毎日ナルトに会える状態になって初めてのバレンタイン。 期待しないわけがない。 存在すら知られていなかった去年までとは全然違う。 期待は膨れて膨れて、すでにカカシの想像では最後の行き着くところまで行ってしまっている。 「もしかしてナルト、バレンタイン・・知らない?」 「あっそうだってば明日はバレンタインーーーってカカシせんせー俺の事馬鹿にしてるってば?そんくらい知っててジョーシキ!!俺ってばちゃぁぁんと知ってたってばよっ」 ぷくぷく頬を膨らませて抗議をするナルトにカカシは胸をなでおろした。 よかった知ってたみたい。 「ごめんごめーーん。で?ナルトは誰かにチョコレートあげるの?」 ドキドキしながら核心をずばりと突く。 離れたところで耳をダンボにする二人の気配がした。 もっと離れたところでこれまた同様の気配。 あれは・・・他の班の子供たち・・・ お前ら別の任務があったはずだろなにやってんだっ? 紅とクマは何やってんだと気配を探ってみれば同じく二人も興味津々でこちらの会話に聞き入っていた。 おい。 「はぁ?」 だがしかしナルトの返事はとっっっってもつれないものだった。 心底意外なことを聞いたとばかりに呆然とカカシを見上げる青い瞳。 あ、可愛い。 うっとり見とれていると 「カカシせんせーもしかしてバレンタインの事よく知らないってば?」 いたずら気な顔をされた。 「へ?」 「だって明日は女の子が男の子にチョコをあげる日だってばよ?俺ってば貰うがわーー」 そういえばそんな習慣だったような気もする。 すっかり忘れていたが。 だがここで引き下がってはバラ色の明日はやってこないのである。 「あれーーナルトもしかして知らないのーー?」 素っ頓狂な声で言ってやれば小耳に挟んだだけの知識しかないナルトは一瞬で不安そうな顔をした。 「バレンタインってのはねー大好きな人にチョコをあげる日なの。男も女も関係なーいの。」 「そ、そうだってば?」 大嘘です。 「でも」 前サクラちゃんがそう言ってたってばーと続けようとするのをさえぎり 「でももへったくれもありませーーん。ッてことで明日は大好きな人にチョコをあげましょーーーうっ。さっ誰にあげる?」 え?え? 話をサクサク進められナルトは頭を抱えた。 大好きな人? 「イルカせんせーー!!」 一番に浮かぶのは優しいあの笑顔。 元気に答えたナルトに瞬間カカシは不機嫌な顔を見せたがすぐに笑顔に戻る 「それから?」 「それからーーえーーっとあっサクラちゃん!!」 かすかにカカシの頬が引きつる 「うんうん。サクラ大好きッ子だもんねーそれから?」 その後が続かなかった。 だって好きな人なんて俺にはほかにいないってばよ。 それに俺からチョコ貰っても誰も嬉しくないし・・・ しょんぼり落ち込みうつむいたナルトにおや?とカカシは首を捻る。 「あと・・一楽のおっちゃんに・・・」 いつも美味しいラーメン食べさせてくれるから・・・お礼にあげようかな・・・ 小さくつぶやく。 カカシぴきぴき来た。 待ってちょうだい。 俺はラーメン以下ですか? 「ナ・ル・トーーせんせーには無いのかなぁぁぁ?」 余裕をなくしたカカシの笑顔にナルトは 「え?」 と慌てて顔をあげた。 「カカシせんせーチョコ欲しいってば?」 心底不思議そうな問いに 「すっっっごく欲しい。めちゃくちゃ欲しい。何がなんでも欲しい」 意気込んでカカシは言う。 それにナルトはふにゃりと微笑んだ。 「んじゃカカシせんせーにもあげるってば」 やった!! やった!! やりましたはたけカカシ君っ 人生2×年っ これほど嬉しかったことがあるでしょうか!!? 無いっ 無いよっっ←悲しい人生だなお前 やったーーー カカシの心情を表すならばこんなところだろう。 「あ、でもカカシせんせーとサクラちゃんにあげるのにサスケになかったら可哀想?」 いつもはいがみ合っているくせに変なところで律儀なナルトが口にした言葉に カカシは即座に返した。 「ぜーーーーーーんぜん可哀想じゃないって。ほらっサスケは甘いもん嫌いじゃない?貰ってもふんっいらんっとか言うってーー」 「・・俺のなんか・・・いらない・・・かな・・・」 泣きそうな顔をされカカシは自分の失言を悟った。 違う違う。 ナルトのチョコをあんなヤツにやるなんて勿体ないってだけなんだよーーぅ どうしよう・・・とオロオロしていると 「おいドベ」 いつの間に近づいてきたのだろうかサスケの言葉にはじけたようにそちらを振り返ったナルト。 それに 「甘くないのなら貰ってやる」 偉そうに。 それでいて照れくさそうに。 な・・・・なんて美味しいところをとってくガキだろうか!! ナルトは驚いたようにパチクリとサスケを見やると 「任せろってば!!」 ひまわり満開の顔で笑った。 (サスケ抹殺決定ね) カカシの瞳がキラリと光った 「んでっ今からチョコ作るんだってばーーー」 帰り道。任務の報告に行った先でであったイルカに事の顛末を説明するナルト。 イルカは笑顔を持続するのがとても大変だった。 (あんた何大ホラついてるんだーーーーーー!!) カカシを射殺しそうなほど睨みつけるのはナルトの教育係と自分で決めているイルカである。 道を外れたら正してやり、知らないことは教えてやり、間違えているなら注意してやる。 父か母か兄か、そんな役割を自分のものと決めているのだ。 余計な大嘘の入れ知恵をしやがったカカシをぶん殴りたくなったとしても仕方ないだろう。 「いいかナルト。確かにチョコをあげるのはいい。いいけどな、恋人になって欲しい人にだけ『好きです』ってチョコやるんだ。他のやつらには『義理ですっ』て言うのが礼儀なんだぞ」 イルカは苦肉の策でフォローとなる常識を植えつける。 「え?そうなの?」 さすがイルカせんせー物知りだってばーー 感心されたイルカはといえば背後からバシバシ殺気を感じ背筋をヒヤヒヤさせていた。 「ああ、それとナルト。あげるのは別にチョコとは限らなくてな。この際沢山の人にあげるんならチョコレートケーキにするといい。」 「あっそっか。そしたら一回で沢山できるってばっ」 「うん。カットしてラッピングすればたぶんワンホールで全員分できるだろ。他の班のやつらにもやるのか?」 「うーん。一応そのつもりだけど・・・」 貰ってくれるかなぁ 消極的なナルトにイルカはこれもまたナルトが人と接するいい機会かと思いなおし、 「大丈夫。みんな喜んでくれるよ。」 強い口調で確信となる言葉をつむいだ。 パアアと広がる笑顔。 「あのさあのさっイルカせんせーも・・・貰ってくれるってば?」 「俺にもくれるのか?もちろん。ああ、そうだどうせなら一緒に作るか?」 更なる嬉しい提案をされナルトは勢いよく飛びついた。 「作るーーー一緒に作るってばーーーイルカせんせーダイスキーーーー」 「はいはい。材料はそろってるか?」 よいしょっと抱き上げそのまま尋ねれば 「んーと小麦粉と砂糖とーうん。あるってば。あ、でもチョコは買わないと・・・」 「だな。街に用事があるからついでに俺が買ってくるよ。準備して待ってろよ」 「うんっ」 「じゃぁ後でな」 「後でってば!!カカシせんせーまた明日っ」 すっかり忘れ去られたカタチになっていたカカシによい子の挨拶をすればイルカをずっと睨みつけていた視線を即座に緩めナルトに向かってニコヤカな笑みを見せた。 「あ、うん。また明日ね。楽しみにしてるよ」 「おーーーー!!」 バタバタと愛らしい忍びにあるまじき足音を立てナルトが去れば 周囲の気温は数度下がる。 イルカは怒っていたし、 カカシは嫉妬していた。 「あまり大嘘教えないで下さいね。あの子は素直だからすぐに信じてしまいます。」 ジロリと睨みつけられカカシは肩をすくめ 「はーーい」 唇をとがらせながら未来のお義父さん(笑)に向かってよい子の返事をした。 だがしかし、 (だってナルトのチョコ欲しかったんだもーーーん) なんて口とは裏腹の3歳時のごとき心の叫びを正確に読みとってしまったイルカは額を押さえやれやれと困った上忍に頭をふった。 イルカは街にゆき、いざチョコを買おうとして己の失態に気づいた。 「しまったナルトにお色気の術で変化してついてきてもらえばよかった・・・」 あの女性陣の中にノコノコ入っていくのは人生最大の勇気がいりそうだった。 だがしかし、彼はやっぱりどこかの誰かさんとは違って日ごろの行いがよいのだろう、 ナイスなタイミングにナイスな人間とであった。 「あら?イルカ先生じゃないですか。こんにちは」 「お。サクラか。良いところであったなぁちょっと手伝ってもらえないか?」 「え?」 心強い相棒をゲットしイルカはようやくチョコとラッピング用の袋を手に入れた。 「それってイルカ先生が?」 訝しげにみられ慌てて首を振る 「違う違うっナルトのだ。俺をカカシ上忍と一緒にしないでくれよーー」 「・・・・」 確かに失礼だったわねとサクラも思った。 「じゃ、サクラ助かったよ」 納得したらしきサクラを見届けようやく終わったとばかりにホクホク袋を抱えナルトの家へ帰ろうとするイルカは、 ガシィィィィと背後からつかまれ折角買った荷物を落とすところだった。 「ええ?」 「ナルトと一緒に作るんですかっっ」 「あ、ああ。そのつもりだけど」 「イルカ先生の料理の腕はアカデミーの家庭科の先生のお墨付きだって聞いてます」 「え?そうなのか?」 「そうなんですっっ」 鬼気迫るサクラの様子にドキドキする心臓を押さえイルカは慎重に答えを返す。 このくらいの年の子は切れると怖いって言うからなぁ。 「ってことで私も御一緒させて頂きたいのですが」 「は?」 ああ、それが言いたかったのか。 「いいですかっっ?」 とても嫌とは言えない雰囲気だった。 もちろんイルカに異存はない。ナルトも喜ぶだろうし。 ただ問題が一つ。 「じゃあチョコレート買い足さなきゃな」 「ただいまーナルトー」 「お帰りイルカせんせーってあれ?サクラちゃん?」 大きな目をまん丸にしてサクラを見つめる。 「私も一緒に作らせて貰うことにしたのよ、文句ある?」 「無いってばっっサクラちゃんも一緒っ嬉しいってばっ」 素直に喜びを表されサクラも思わず口元を緩めた。 「ならいいのよ。ほらっ準備しましょ」 「おうってばっ」 エプロン姿の三人はまるで姉妹と母親のように見えた。 |
三人中二人が男なのに何故姉妹と母親(笑)