「はいっサスケ。甘くないやつ」 次の日朝早くからやってきたナルトはにっこり笑っていつもなら文句しか言わない相手にお菓子を手渡す。 「あーっと。そうそう『義理です』ってぱ」 教育の行き届いたよい子はいわれたことを素直に実行 密かにドキドキウキウキバレンタインを期待していた黒髪の少年の夢を無残に砕いた。 「あ・・ありがとな」 なんとかお礼が言えたのは奇跡。 でもその言葉に見せたはにかんだような笑顔はサイコーに可愛かったので、その奇跡に感謝だろう。 そしてもろんもう一人 「はいっサスケ君♪♪」 一番乗りじゃなかったのは残念だけど大きさでは負けていない。 ナルトがカットした2切れのチョコパウンドケーキなら。 サクラはホールごとのでっかいケーキで勝負である。 正直に言おう。 いくら甘さ控えめにしてあろうが一人暮らしの少年にそれを贈るのは嫌がらせ以外の何物でもない。 渡された箱のでかさにため息をつきたい気分だがサクラが頑張ったのは分かっているのでなんとか礼だけ述べる 「ありがとう」 ここでいらないなんて言ってみろ。 傍の金色ポヨヨン少年が黙っちゃいまい。 何でだってばーーーー ひどいってばよーーー そんなサスケ大っ嫌いーーーーー 等々。 数々の罵声は本日あまり聞きたくない。 せっかくいい気分なのだから そしてもう一名。 いつもなら余裕で3時間4時間遅刻してくる担任が約束の5分前に現れた。 これこそ奇跡。 明日台風が来ても誰も驚くまい。 「ナァァァッルトーー」 「うっわーーーーーーー」 突然目の前に現れたと思ったら思い切り抱きつかれ盛大に叫んでしまった。 それこそ夜道に変質者に出会ったときのごとく←今の状況とあまり変わりない 「ど・・どうしたってばカカシせんせー。まだ5分前だってばよ?」 あれ?それとも俺の時計2時間くらい遅れてる? 二人の傍ではサスケとサクラが白い目でカカシを見ていた。 やればできんじゃないの。マッタクむかつくったらありしゃしないわ ウスラボケ上忍・・・ などと心から失礼な言葉の数々が愛らしい生徒たちからもれ出る。 いつもならふてくされるそんな暴言にも全くめげず溌剌な笑顔をナルトに見せた。 「おはようっバンレンタインデーー。今日もいい日だネ。バレンタインデーー。いやぁせんせー昨日ぜんぜん眠れなくって寝るのに1分もかかっちゃったよーバレンタインデーーーー!!」 突っ込みたい。いろいろと。 でもバカらしすぎて相手するのすら嫌だ。 サスケもサクラも近くの木にしがみついて己の衝動をこらえた。 あからさまなチョコの催促と。 寝付けなくて1分ってコトはいつもなん秒で寝てんだーーー 心の中で渦巻く突っ込み だがここで突っ込んだら相手の思うつぼ(←そうなのか?) アホな担任はかまわないのが一番なのだ そしてここに一人、そんなカカシの言動にまったく違和感を感じていない少年がいた。 「おはようってばカカシせんせー。んで、はいっチョコレートケーキ!!」 「ああ。ああ。嬉しいよこの日を何年夢見てきたことか・・」 「せんせー大げさだってば」 かなりの事実にまったく気づいていないナルトはからからと陽気に笑い出す。 そして運命の一言をにっこり口にした。 「んでー甘いのとー甘くないのがあるんだってば。どっちにする?」 「は?」 「だからー甘いのと甘くないのとーーーー」 「え・・・・選ばなきゃいけないの?」 かなりの難題がカカシに降りかかった。 ここ数年で一番の難題である。 先日火影様に明日までにこのAランクの仕事片付けてこい。と無理でしょって内容の仕事押し付けられたときだって こんなに困らなかった。 「ねーどっちーー」 こ・・・・・この子はこんな可愛い顔して 俺に選べと!!? お・・・・ 俺には・・・・ 俺には・・・・・・・・・ 「俺には選べなーーーーーーい」 「ええええーー」 正直な胸のうちを述べてみれば愛しい少年は唇をとがらせて「じゃあ」と提案してきた。 「他の人にあげて余ったほうをあげるってば」 ああ・・・ あまり物になってしまった・・・ 福はある? あると思います? めっちゃおまけって感じがするんですけど。 シクシク。 そしてこれがカカシの明暗をわけた |
いやン。カカシせんせってばいつもおばか〜