10.間に合わない
「やっべー遅刻だっ」
腕時計を見て空を見てため息をつく。
満天の星空。
月も煌々と輝いている。
なんでこんな時間にこんな小さな子供が外を走っているかといえば、いつものごとく例のバカから招待状が届いたからだ。
「あーこりゃ間に合わねーな」
諦めたのかすでに子供は歩いている。
夜中の街中でスケートボードを走らせるのは近所迷惑である。
よって彼は毛利宅をそっと抜け出してからずっと走り続けていた。
「抜け出すのに手間取ったしなぁ」
いつもならこんな日は博士の家に泊まりに行くのだが、本日はあいにくと博士は出かけていてその手が使えなかった。
「このまま帰っちまおうかな・・」
どうせ間に合わないんだし。
バレる前に布団に戻っておきたい。
そんな誘惑に駆られる。
大体において、こんな時間に呼び出す奴が悪いのだ。
相手は子供。
小学1年生である。
もう少し考えて欲しいものだ。
(なーんて、ドロボウに言ったところで意味ねーか)
所詮ヤツは犯罪者。
子供の夜歩きなんぞ何とも思うまい。
「あー疲れたー」
なんかめんどくさくなってきたし。
ピタリと足を止めしばし逡巡したのちクルリと方向転換。
「かーえろっと」
今まで駆けて来た道を今度はゆっくり歩き出す。
「ま、別に行かなくったってあいつが困る訳でもなし」
その夜、月に向かって吠える怪盗KIDの姿があったとか、なかったとか。
『名探偵の約束やぶりーーーーー!!』
別に約束してねーって
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