20.没頭

本を読んだら寝食を忘れる。
そんな子供がここに一人。

「あのねぇいい加減に限度ってもんを覚えるべきだと俺は思うわけよ」

そんな子供に説教をかます快斗は毎度のことながらため息をついた。

三日間である。
博士の家にお泊り、という口実で工藤家に入り浸ってから三日。
コナンは一歩も外へ出ていないどころか、もしかすると書庫から数えるほどしか出ていないと思われた。

「最後にご飯食べたのはいつなの?」

厳しく問い詰めていけばうろ覚えなのか首をかしげた。

「えーっと」
「朝ごはんは?」
「食ってねー」
「昨日の夜ご飯は?」
「ん?多分食ってねー」
「昨日のお昼は?」
「昼・・・・食ってねー・・・」
「じゃあ昨日の朝は」
「食ってねー」

ここまでくると鳥肌が立ってくる。

怖い。なんでそれだけ食べないで平気なの?

「あっでも一昨日の夜は食ったぜ」
額を押さえて疲れたため息をついた快斗に取り繕うようにコナンはいう。

「何を?」
「カロリーメイト一箱」

うっわ自信満々に言ってるよこの人。

「それはきちんとしたご飯とはいいませーん」
「あ?あれ一箱で一日は持つぜ?」
「持たせないで下さい!」

なんでこの子は一人にするとこんな恐ろしいことを平気でするのだろうか。

「一人にするとってゆーより、本を読んでると、じゃねーか?」
「没頭しすぎっコナンちゃん」
「たまにしかこの家にこれねーからさ。」
つい。
本好きのコナンにとっては辛いところだろう。
分かる。
それはとても分かっている。
だから本を読むなとはいわない。
ただ、一人だと本の世界から抜け出せないというならば、それならば自分を呼んで欲しいのだ。

「今度から工藤家に来るときは俺に一声かけてね。無理やりご飯食べさせにくるからっ」
意気込んでそういえばコナンは一瞬目を瞬いて、それから

「バーろぅ。物好きなヤツだな」
可笑しそうに笑い出した。