21.色
彼に似合う色は何だと思う?
そう聞かれたとき、大抵の人間は口にする。
「オレンジ」
「金色」
明るい色を。
でも
たまに
「無色透明」
などと意味不明なことを言う人間も居るものだ。
「透明?」
質問を投げかけたサクラは予想外の答えに思わず聞き返した。
「シカマル何言ってるのよ?」
サクラの隣でイノもキョトンとした顔。
「んなもん人それぞれ感じ方が違うもんなんだから俺の勝手だろ、めんどくせぇ」
説明がめんどくさいのだろう。それなら最初から適当にオレンジと口にしておけば良かった
のにシカマルの心はそれを良しとしなかった。
「あいつは何色にでも染まる。でも何色にも染まらねぇよ」
それだけ言ってフイに顔を動かせば、視界の隅に金の髪をフワフワ揺らめかせながら走る1人
の少年がうつる。
少しだけ瞳を和らげシカマルはその無色透明と称した少年に向かって歩き出した。
「「無色透明・・・ねぇ」」
ガバァと抱きつかれバランスを崩し苦笑するめんどくさがり屋を眺め二人の少女は
「「それも良いわね」」
ちょっと納得した。
いつも明るい少年が幸せ一杯に生きてきた訳でないことは傍で見てきた自分達はよく知ってい
る。
太陽の光も、夜の闇も、夕暮れの朱も似合うあの少年はきっと
何に色にもなれて
何色にもならない。
無色透明という自由度が高い最高の色。
「負けた気分よ」
「結局1番わかってるのはシカマルってことね」
ちょっと悔しいと漏らしたサクラにイノもまた肩をすくめ苦笑した。
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