22.曇りガラス
俺達の間には一枚のガラスがあるのだと思う。
曇ったガラスが一枚。
お互いにこれだけ傍に居ながらも相手をしっかり見ることが出来ない。
まぁマジックミラーよりはマシか?
相手のことを知ってるけれど。
この暖かな関係が壊れるのが怖くて口に出来ない。
相手の心が全く読めない。
でも傍にいたい。
このガラスがある限り俺達は本当に分かり合えることはないのだろう。
「なぁコナン」
「なんだ?」
「明日来る?」
「・・・何の話だ?」
「もういいよ。解ってるのは知ってるし。そろそろいいじゃん?」
「・・・・なんかあったのか?」
いきなりの心境の変化にコナンの方が驚く。
今まで何気なく水を向けてもさりげなくスルリと逃げてきたこの男が。
「や、明日さ、多分結構危険だから。お前には来て欲しくない」
「それ聞いて俺が行かないと思うか?」
逆効果であることをこの相手はわかっているはずだ。
なのに何故?
「んー心構えの問題かな。知らないより知ってる方が警戒はしてもらえるでしょ?でも出来れば
本当に来て欲しくないんだよ?」
「・・・はぁぁぁ。お前は本当にわがままだな。」
心配一杯の瞳で覗き込まれコナンは苦笑した。
自分に出来ること。怪盗KIDなんてふざけた男はふざけたなりをしているくせにその才能は天才的
である。
多分今の自分は足手まといにしかならないだろう。
解っていて近づくつもりにはコナンはなれない。
だから
「解ったよ。いかねぇ」
「え?」
まさか、といった表情の快斗に「おいおい」と思ってしまう。
「お前が危険に晒されてるの解っていながらジッと待ってるのは性分じゃねーんだけどな。お前が
余計な事に気を取られないように表に顔はださねぇよ」
「それって」
「適当に警察動かしてやるってこった。周りと一般人のフォローは任せろ。お前は自分の身を護る
ことに専念しろよ」
「・・・・うん。うん、コナン。ありがとう」
曇りガラス。お前がたまに一生懸命拭いてくれるから。
そのうちこのガラスは綺麗になるだろうか?
それとも我慢できなくて俺が破壊しつくすか?
どっちが早いかな?そう思いながらコナンは当日の算段をその怪盗ですら惚れ惚れする頭脳をフル
回転させ緻密にくみ上げていくのであった。
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