23.森


森の中調子っぱずれな声が聞こえる。
ちょっと高い少年の歌声。


「おかーをこーえーいこーーおよーーーくちーぶえーふきつーーつーーー」

「ご機嫌ねナルトったら」
「ふん。煩いだけだ」

「まーまー。こうやって班でピクニックなんて初めてだからネ。嬉しくて仕方ないんデショ?」

大きなリュックを担いだ少年が金の髪をフワフワさせながら大手を振って進んでゆく。

「せんせーっっカカシせんせーーっ。すっげーでっかい木があるってばーーー」
「はいはい。今いくヨー」

呼ばれたカカシは焦るでもなくのんびりナルトに近づいてゆく。
そんな年老いた動作の担任を追い抜いてサクラとサスケはナルトのほうへと駆け出した。

「わっすっごーい。本当に大きいわ」
「ああ」

これは凄いとサスケまでも目を細めて見上げている。

それにナルトは自慢そうにへへっと笑った。

「んじゃちょうど時間もころあいだしこの木の下でお昼ご飯たべよっか?」

カカシの言葉にサンセー
と元気な声が返ってきた。


「わぁサクラちゃんのお弁当おいしそー」
カラフルなおかずの山にナルトは目を丸める。

「ピクニックだもん。やっぱりタコさんウインナーは外せないわよね」

にっこり笑って食べる?と差し出した。
ナルトは勢いよくコクコク頷いてウインナーに手を伸ばした。

「うまいってば!!サクラちゃんのお母さん料理すっげー上手ーー」
もごもごウインナーをほお張りながらそんな可愛いことを言ってくれるナルトに微笑みかえす。
「ありがと。お母さんに伝えておくわね。きっと喜ぶわよ。サスケ君もどーぞ♪」

相変わらずおにぎりしか持ってきていないだろうサスケの為にちょっと多めに作ってもらったのだ。
きっとナルトだってカップラーメンとか手抜きのもん持ってくるし。

分けてあげようと思って。

「じゃあ玉子焼きを」
珍しく手を伸ばすサスケにサクラを頬を染めながらお弁当箱を差し出した。
キャーー
サスケ君が私のお弁当をーーー


サクラの分裂した魂を真正面から見てしまったカカシは苦笑しながらナルトのお弁当を覗き込んだ。
「あれ?珍しいじゃないの」
「へへっ」
「ちゃんと作ったんだ?」
「うんっピクニックだから頑張ったってば!!」

いつもとは違って手の込んだお弁当。
その中には大好きなラーメンではなく、ちゃんとおかずが入っていた。

「でも何いれればいーかわかんなくて」

テレながら力作を差し出す。

「一杯になっちゃったからせんせーも食べる?」

どーせせんせーってばまた怪しいクッキーとかで済ませちゃうつもりだったんでしょ?
これ一個で半日は持つんだよー
と以前食べていたクッキーをポケットから取り出そうとしていたカカシはアハと笑ってごまかした。

「じゃ遠慮なく〜」

まっさきに目を引かれていた唐揚げに手を出す。

「わ。めちゃくちゃオイシイっ」
「いるか先生ジコミだってばっっ」
自慢気なナルトにサクラとサスケは興味津々でナルトの弁当箱を覗き込んだ。

「ねっナルト。私も唐揚げもらっていい?」
「俺も」

「いーーっぱいあるからいいってばよ」

ニコニコと半分が唐揚げで埋まったお弁当箱を差し出した。


「なにこれお店で食べるのよりおいしいじゃないっ」
「ウマイ・・・」

二人りの絶賛にナルトは気分をよくする。

「これだけは誰にも負けないってば」
あ、イルカ先生には負けるけど。


「ナールトっ隣の油揚げもらってもい?」
「うんっ」
「これって鶉の卵が入ってるんだー。うわー器用だネー」
「そーっ昨日の夜からシコミしたってば!!」
「味が染み込んでておいしーー。これ初めて食べたよせんせー」

目を細め幸せそうにこれまた一杯作ってきたというサンドイッチにまで手を伸ばすカカシはもう遠慮がなかった。
おいしい。
うまい。
を連発しているカカシを羨ましそうに見ていたサクラとサスケまでそのうち遠慮なく手を伸ばすようになってきた。

「あっじゃあさ皆の真ん中において皆で食べよってば。」

ナルトの提案に一斉に頷き、真ん中に集合。

サクラはサスケのおにぎり片手にナルトのおかずをほおばり幸せ絶頂。
サスケはナルトのサンドイッチをパクパク食べながら時々サクラとナルトのお弁当をつまむ。
カカシはもちろん歓喜の涙を堪えながらこんなまともなもん久しぶりに食べたよとナルトのお弁当をひたすら平らげた。

「サクラちゃんのお弁当おいしー」
一人サクラのお弁当だけを食べ続けるナルトも嬉しそうで。
あっという間にすべてのお弁当は皆の腹の中へと収まった。


唯一つ最後までまったく誰も食べなかったどころか、見向きもされなかったカカシ持参のクッキーだけが、
むなしく真ん中にコロンと転がってたが。



WEB拍手用「100のお題」より