30.爪

「ちっちゃいなぁ」

突然ぽつりと聞こえた声。

読書に夢中だった小さな子供はフイに顔をあげた。

「ちっちゃいよねぇ」

「何がだ?」

眉を寄せて何事だと尋ねる。

「んーコナンちゃんの爪ー」
「・・・そりゃ手が小さいんだから爪も小さくて当然だろ?」
「うん。そうなんだけど・・・カタチもいいなぁ」
「そうか?」
「うん。ちっちゃくてカワイー」
「・・・・嬉しくねー」

コナンの手のひらを取り、爪に頬を寄せる。
「あーこの爪の先から頭のてっぺんまでぜぇぇんぶ俺のものっ」
「いつからテメーのもんになった!!?」
「ええー。告白してぇオーケーもらったその日からぁ」
「告白された覚えもなけりゃ、オーケーした覚えもねーけどな」
「・・・・・」

頬を押さえて目を丸める快斗に首をかしげる。

「あ?どうした?」
「ウッソー」
「ウソじゃねーよ。」
「意思の不通?両思いだと思ってたのに・・」
「お前の思い込み」

あながち間違っていない見解だが、正直に認めるのもしゃくなのできっぱり否定してやる。

「じゃ。今いうからいいもーん。快斗君はぁコナン君がぁ大好きでーーす。俺のものになってくださーい」
「きゃっかでーす」
「・・なんでぇぇ」
「お前が男だから」
「そんなの関係ないもーん」
「ある。一番重要なところにあるっ」
「いいじゃんっ」
「膨れてもだめだ」
「やだもんっ。コナンちゃんは俺のなのっ」
「こどもかお前は」
「子供で結構でーす。それでコナンちゃんが手に入るならねー」

あーもうこいつはっ。
盛大なため息をコナンがつけば、ニッコリ笑って快斗は言う。

「この爪も俺のものっだから大切にしてね」
「・・・切ってやるっっ」
「あっ切るなら俺がきるっっ」
「いらんっ。爪くらい自分で切れる」
「やーだー。切るもんっ」

なんだかむしょうに子供っぽい快斗にこりゃ駄目だと頭を振るとコナンは諦めて指を差し出した。

「俺の指まで切ったら法外な慰謝料を請求してやる」
「任せてちょーだいよ。俺の器用さは爪きりにも生かされるのよ!」


たまにある。
子供みたいに甘えたくなるときが。
そんな時、大好きなコナンに構ってもらいたくてついつい読書のジャマをしちゃう。
でもねー最後は文句をいいながらも折れてくれるからきっとコナンちゃんも俺の事大好きなの。

だからコナンの頭から爪の先までぜぇぇぇぇんぶ俺のものっ
奪うやつがいたら全力でぶっ潰すからそのつもりでいてね♪