31.去年
「あなたは〜もぉぉー忘れたかしらー」
「・・なんだやぶから棒にミョーに古い歌を」
知らない人のほうが多そうな古い歌。
いやいや、でも替え歌もあるし、かなり有名な曲だからまだまだ現役か?
手元の本から顔をあげコナンは快斗へ突っ込んだ。
「だって今日がなんの日か忘れてるでしょコナンちゃん」
「・・んん?」
首を捻る。
それから顎に手をやり探偵スタイル。
いや・・そこまで考え込むほど忘れてしまっているってのも哀しい話でして・・はい・・。
素直に聞いてくださるか、「忘れた」とあっさり言ってくれたほうが多分こんな物悲しさは少しですんだはず。
「去年のこと。覚えてないの?」
「・・・・・おお。」
ポォォォンと手のひらを叩いて
「もしや今日はエイプリルフールか?」
うわお。そっちを忘れてましたのねー。
「そっかそっか。あー良かった。さっきいきなり灰原が『実は好きな人が出来たのだけど・・相談に乗ってもらえないかしら?』なんていいやがるからビビッて慌てて逃げてきちまったぜ」
「いや、ビビる気持ちは解るけど逃げるなって」
「いやいやいや。この先聞けよ。更には『うちのクラスの人なの』だぜっっっっ」
「うおっっいくつ差よ哀ちゃんっっっ」
「だよな。かなり恐怖が募ってなー。そっかエイプリルフールか。よかったー」
ホッと胸をなでおろし。
「でも本気だったらどーしよう」
「俺は聞いてませーん。頑張れコナンちゃん」
「逃げる気かっっっ1人だけ逃れようなんざそーはいかねえっっ。ってかそっかお前に譲ればよかったんだな」
恋愛相談をコナンにする時点であきらかに「嘘」だろうが。
それでも「もしかして」がある。
「今度もし相談されたら快斗に相談するように伝えておくからな」
「やめてーーお願いやめてーー。」
すがりついてくる快斗にとりあえず気分をよくしてコナンは
「って事で去年ムカついた件はコレで水にながしてやるからな」
「は?」
言うだけいうと背を向け先ほどまで読んでいた本に目を落とし、また没頭し始めた。
「怒ってたの?あの大変失礼なKID仕様のセリフをしっかり覚えてて根深く怒ってたのーーー!?」
去年のことなんて忘れていると思ったら細部まで覚えててしっかり仕返しされるなんて。
快斗はシクシク泣きながらも邂逅記念日のゴージャス夜ご飯の準備のため工藤家のかって知ったる台所へと向かうのだった。
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