42.早いね


夜のお仕事が思ったより時間食った。
「・・・こりゃ睡眠とる時間ねーな」
相方のつぶやきに俺は頷いた。
「だな。どーせあの人今日も遅刻だろうけど・・・なんで3時間も毎日待たされなきゃならんのだ俺等は」
はぁとため息をつけば相棒はあっさり言ってくださった。

「運が悪かったんじゃね?」
「仲間を大切にと言ったそばからこれだぞ。てめーは大事にしてんのかオラッて感じじゃーねー?」

毎度おなじみの文句に相棒は適当ながらも付き合ってくれる。
ありがたいよなーホント。

「ほらカカシって慰霊碑に毎日寄るって言うしな」
「感傷に浸ってるって?そう言うことは人待たせてねー時にやれっての」
「たしかにな」
「あーしゃぁね、今日はこのまま行くか」
「早すぎねぇか?」
「集合場所で寝るっ」
そうすりゃ誰かが起こしてくれるだろう。

「そりゃあいい手だ」
ドクは手を叩いて褒め称えた。
さすがに睡眠が足りてないと思考回路が麻痺するのだろう。
自分と比べて体力の少ないドクはすでにそんな事すら思いつかなかったほど頭が朦朧としている様子。

「俺もそーすっかなぁ」
一番睡眠時間がとれそうな方法だしな
ドクもそうすることにして、二人は今日は帰宅なしでそのまま昼の任務へ。



「ってお前もここで集合なのか?」
「今更何言ってんだか。合同だよ。いつもの3班合同」
「・・・またいい忘れやがったかあのクソ担任」
「いつもの事じゃねぇか」
「慣れたら負けだっ。文句は忘れず言うっ。怒りは忘れないっ。それが7班生徒の結束」
「いやな結束だな。」
「いや。これが意外といい感じにチームワークが生まれるんだぜ。」
サクラちゃんはもちろんの事、あのサスケまで一緒になって文句を言うのは結構楽しかったりする。

へへっと笑えばドクは苦笑を見せた。

「お前が楽しいならそれでいいさ俺は」
「なんだー?焼いてくんねーの?」
「焼くほどのライバルがいないんでね」
「ちぇっつまんねぇの。じゃカカシ先生にべたべたしてやろっかな」
「やめとけ。突然押し倒されても知んねーぞ」
「へ?カカシ先生が?んな事するわけねーじゃん。あの人チョー女好きだもん」
「・・・・・・・いや、うん。わかってねーとは思ってたけどやっぱりな。とにかくあんまりくっつくのはやめとけ後で苦労すんのはお前だ」
「?うーんドクがそう言うならそうなんだろーな。わかった。気をつける」

きっとよく分かっていないだろうが一応引っ付くのだけはやめてくれそうだ。
ドクはホッと息をつき、トンと木の上から地面へ降り立った。

「ここらへんでいいか」
草むらを指し、軽く印を切りドクは変化をとく。
「んーそうだな。ここのが寝易そう」
同じく変化をといてすでに座り込んでいるシカマルの隣にナルトはコロンと転がった。



「姉さま時間大丈夫ですか?」
「え?うんまだ大丈夫だから心配しないでねハナビちゃん」
「それならいいんですけど。でもお使いくらい一人でいけました」
「うん。知ってるよ。でもわたしがハナビちゃんと一緒に行きたかったの。」
ヒナタはニッコリ微笑む。
昔よりずっとずっとヒナタは綺麗になった。
一人の少年と出会ってから、ヒナタは沢山喋るようになったし、修行も倍以上するようになった。
努力の量がいままでと半端じゃないくらいに違う。
何よりも変わったのはきっと優しさ、心の広さ。

引っ込み思案で、ただの大人しいだけだった姉が、いつしか優しくて包容力がある、なくてはならない大切な尊敬するお姉ちゃんに変わった。

「えへへ。嬉しいです」
ギュッとヒナタの腕にしがみついて照れ笑いをするハナビにヒナタはフワリと微笑む。
(あん。もう姉さまかわいーー)

「そういえば姉さま今日は合同って言ってましたよね」
「うん。そーなの。楽しみ」
「あの人が来るからですか?」
「ハナビっ。」
「あはっ真っ赤ですよ姉さま。私はあの人が兄さまになるなら大歓迎です。」
「もーハナビちゃん。お姉ちゃんをからかうのはやめてね」
「からかってなんていません。大体姉さまもっとしっかりアタックしないとっ誰かにとられちゃいます」
「・・・・・」
「あ、もしかして思うところが?」
「ナルト君・・・もてるの。」
「そうなんですか?」
意外だなぁ。姉さまの思い込みじゃないの?
そんな視線を受けヒナタは小さく笑った

「太陽みたいな人だから。皆ナルト君に近づきたくなるのかな。」
「私にはよく分からないですけど、でも姉さまが好きになった人ですからきっと素敵な人ですっ」
「ハナビったら。」
クスクス笑いながら可愛い妹の髪をサラリと手のひらでなぜる。

実に仲むつまじい姉妹だ。

「あれ?あれってもしかして」
ハナビが驚くほど良い視力でかなり遠くの木を指差す。
それに目を向けたヒナタは驚きのあまり思わず声をあげた。
「ナルト君っ」


もしかして行き倒れているのでは、と慌てて駆け寄ってみれば、スヨスヨと規則正しい呼吸が聞こえホッ。

「そっか。ここ集合場所だから」
ここで待ってるのね。
そう理解はしたものの、

それにしても・・・

「早い・・・ね」
「早すぎじゃありませんか」
姉の腕にすがりついたまま覗き込むハナビ。
確かに早すぎる。

しかも隣にシカマル。
この二人ってそんなに仲良しだったっけ?
首をかしげる。
だが二人の気持ちよさそうな睡眠を破るつもりは毛等もなく、ヒナタはそっとこの場を離れるつもりだった。

(あ、そうだ)
ふと思いついて持っていた風呂敷を広げる

「ハナビちゃん。ちょっと手伝ってくれるかな。」
「あ、はい」

二人で両端を持ってフワサと広げて二人の上にかぶせる。

「まだ寒いですからね」
「うん。いこっかハナビちゃん」
小さな声で囁きあい、二人は悪戯が成功したような顔で笑いあった。

またもや仲良く引っ付いて去り行く姉妹。


「ふぅん。」
実は起きていたシカマルがその背を眺めながらボソリと呟いた。
隣のナルトは未だスイヨスイヨと夢の中。
気配を感じたはずなのに、きっとヒナタのものだとわかったのだろう。
すぐにまた睡眠に戻っていった。
器用だよなホント。

シカマルはと言うとヒナタだからと気を許すこともせず、何をするのか一部始終を目にしていた。

「日向ヒナタ・・・・か」
(安全リストに一人追加ってか?)

掛けてくれた風呂敷にもう一度もぞもぞと身を潜らせる。
確かにちょっと冷えてきたのでありがたい。

「んーぬくぬく。」
こりゃぁ気持ちよく寝れそうだ。

ほこりと暖かくなった胸の辺りに気分をよくしてフワワと大きな欠伸一つ。


「おやすみ。ナルト」

そんな気持ちを分けるかのごとくそっと金の髪を撫でた


WEB拍手用「100のお題」より