5.366
とんでもない思い違いをしていたのかもしれない。
そう気付いたとき、恥ずかしくて、いてもたってもいられなくて、俺は衝動的に駆け出
した。
「おーい快斗?」
不思議そうなコナンの声。まって。今はそっとしといて。かなり恥ずいの。かなり穴に
もぐりたい気分なの。
「もしかしてコレについてか?」
ピラと見せられた一枚の紙に体を震わせた。
うう・・・
バレてるっぽいよぅ
「俺もまさかあのキッドが間違えを起こすなんて思わなかったから理由があるんだろ
うと思ってたんだけどな」
その様子じゃお前・・・
「そうですー間違えましたーごめんなさいねぇ」
工藤家のソファの隅で小さくなってみたりして。
「ちなみにこれもう・・・」
「シクシク。中森警部に送っちゃったよぅ」
先程からコナンがヒラヒラさせていたのは怪盗キッドの予告状。コナンバージョンであ
る。
「あっちも間違えたのか?」
「うん。どーしよー中森警部にバカにされちゃうっ」
「いやそう言う問題よりむしろ解けない危険性が出るだろ」
「うう・・・なんで俺はこんな単純なミスをしたんだっ」
「まぁ4年に一度しかこねーしな。うっかりもあるだろ」
予告状にかいた365日の始まりを告げるとき・・・という一文が問題だったのだ。来年
は閏年。366日が正解。
気にしないでくれればそのままで済むが、へたに裏を読もうとされたらキッドは無駄な
恥をかくことになる。
現に盗聴器の向こうでさっそく言い争う声が聞こえてきた。
『ええ確かに中森警部のおっしゃる通り、単純に考えれば元旦でしょう。ですが僕は
この365日というのがひっかかります。来年は366日。何か特別な意味が・・・』
「あうう・・・この声は白馬だっやめてぇ重箱の隅をつっつかないでぇぇ」
「いやそれは探偵には無理な相談だろ」
呆れた顔で突っ込む。
「とりあえずごまかせ」
素敵な探偵のお言葉にヨロリと立ち上がると快斗は新たな予告状を作成しだした。
曰く
『先程の暗号は少々難しすぎたようですので』
そんな言い訳をのたまい恥ずかしい失敗暗号を回収し、代わりに新たに作成カードを
のこしておいた。
『やはり何か裏が隠されていたんですね。』
満足そうに納得した白馬。
『もう少し時間があればきっと解けたでしょうが』
自分の能力が侮られたと感じたのだろう、悔しそうに呻いた白馬になんだか無性に
罪悪感が募った
「ごめんよぅ白馬。」
良いように解釈をしてくれた白馬に感謝感激の快斗は盗聴器を耳から外すと思わず
目頭を押さえ、器用に男泣きをしてみせた。
「よかったな白馬の奴が天然で」
心から呟いたであろうコナンの一言に今度は笑い涙がマジでこぼれそうだったが。
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