53.かみなり
ドドドドーーーン。
「うっぎゃぁぁぁぁ」
ピカッッ
「ぐぉぉぉぉ」
ドカーーーーーン
「うっぎょーーーーー」
外から雷の気配がするたびにこの世のものとは思えない叫び声が聞こえてくる。
しばらくは無視して本に視線を落としていたのだが、次の叫び声でとうとう顔をあげた。
「イノ。お前さーもうちょっと女の子らしい叫びは出来ねーの?」
「な・・なるとぉぉ」
床にへたり込んでハート型クッション(勝手に持ち込んだ)を抱きしめているイノ。
同じ部屋にいる以上、さすがに無視しきれなかったナルトはため息まじりにイノの前にしゃがみこむ。
バリバリバリーーー
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」
その瞬間今までで一番大きな雷の音が鳴り響き、比例するかのごとく今までで一番最強のイノの叫び声を間近で受けてしまった。
「こ・・鼓膜が破れる・・」
キーンと鳴る耳をおさえるナルトを見て
「ごめんんんん。」
涙を湛えた瞳で見上げてくるイノ。
泣く子には勝てない。
それはナルトにも通じる言葉らしい。
文句を胸の中に押し戻し、ため息だけにとどめておく。
「はぁ・・。で。雷の何がいったい怖いわけ?」
「お・・落ちたら怖いじゃないっっっ」
「そう簡単に落ちねーって」
「に、人間なんて一撃なんだからねっっ」
「だから人間に落ちるなんて滅多にないし。お前そんなんじゃ雨の日の任務出来なくなるぞ」
「・・・・」
ナルトのもっともな言葉にイノは沈黙する。
雷は怖い。
でもここまで奔放に叫ぶことはあまり無い。
いつもは平気なフリで笑って雷の中でだって外を歩いてみせる。
それが意地っ張りのイノ。
イノの雷嫌いを知っているのは幼なじみの二人と両親だけだ。
サクラにだって教えていない。
「大丈夫よ。あんた以外の人間には平気なフリで通せるもの」
「じゃ俺の前でも通してくれ」
「やーよ。」
ふんっとそっぽ向く。
「ったく。いったい何がしたいんだか」
鈍いナルトはやっぱり気づかず、疲れたようにため息をつくだけ。
「あっやだ。もうこんな時間。そろそろ帰るね」
勝手に押しかけて勝手にくつろいでいた立場だが最後にナルトがちょっとでも構ってくれて嬉しかったので今日は十分満足だ。
いつもなんてホント空気みたいに扱われるもんね。
「は?いや帰るのは全然構わねーけど・・この雷の中をか?」
「そうよ。それ以外にどうやって帰れっていうのよ。」
ケロリとイノは事実を述べる。
確かにそうだけど。そうだけど・・・。
さっき叫びまくってたのはどこのどいつだーーー!!
ナルトは盛大なため息をつくと、重い腰を持ち上げた。
「送ってってやるよ」
仕方ねぇよな雷だしな。
嬉しそうに頬を上気させるイノをちょっとばかし可愛いなんて思ってる自分に内心苦笑しながら言い訳じみたセリフを何度も呟いた。
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