62.こわい


やばい

と思ったのはほんの一瞬

大切な大切な桜色の髪の少女が狙われた
担当である上忍への対抗手段として捕らえようと思ったとしか考えられないが、
狙いは狙った本人の予想以上に正確に致命傷を捉えていた

周りを囲まれているカカシ
接敵を一人(中忍以上と見受けられる)相手してギリギリ状態のサスケ

そして

「危ないサクラちゃん!!」

同じく接敵しているはずのナルトが真っ先に動いた

「え?」
クナイに気づいていなかったサクラは目前にせまったそれにあわてて反応しようとするが遅い
「てぇぇぇぇいっ!!」
ナルトがやけくそ気味に投げた一か八かのクナイが運良くそれを弾き飛ばす

ホッとしたのもつかの間
「ナルトっ」
今度はナルトのほうへとクナイが飛んできた

「大丈夫だってばっ」
予想していたのか笑顔ひとつで避けて見せた

それにサクラはほほ笑む

油断は禁物
解っていたのに油断した
それは一重に担当上忍の強さと、
仲間の強さへの甘え

サクラはきゅっと顔を引き締めると手になじんだクナイを握り締めた

「負けて・・・たまるもんですかっ」

敵にも

仲間である
あこがれのあの人にも
ついこの間までドベで守ってあげなきゃと思っていたあの子にも

負けられないっ


「いくわよーーーー!!」




「ナルトー今日は頑張ったなー」
「えへへ」
カカシにポンと頭をなでられ照れくさそうなナルト
それにサスケも悔しそうながらもうなづく

確かにさっきのは凄かった
自分の相手より少し弱かったとはいえ敵を一人相手にしながら他の敵へクナイを投げるのは下忍である自分たちには
まだ難しい
それをやってのけたのだ

「ま、運が良かっただけかもしれないけどねー。もしあれがサクラにあたってたら目も当てられないヨ〜」
「ヴ・・」
釘を刺されうなる
自分でも解っていたのだろう

そして愁傷にしていたサクラはと言うと、
「ナルト今日はありがと。でも次はあたしがアンタを助けるからねっ負けないわよっ」

「へ?」

ビシィと指を突きつけ

「じゃねっ」

走り去ってしまった
いつもなら無理やりひっつくサスケも置いて

「おーいサクラぁまだ解散って言ってないんだけどー」

情けない上忍の声を背に
サクラ色の髪を舞わせて弾むように去ってゆくその姿は
とってもかっこ良かった

「うーん。負けず嫌いで結構結構」
「サクラちゃんはいつも強いってばよ」
「・・・」
まったくだと同意するサスケ
「でもね、いざというとき動くのはいつもサスケかナルトじゃない?それが悔しいんだと思うよー」

「?」
「そうか」
最近ではナルトに負け気味のサスケはそっぽ向いて納得した
ドベは最近ドベじゃなくなってきた
それは7班の誰もが認める事実
誇らしくもあり、悔しくもある

「じゃあな」

サスケも舌打ちひとつ背を向けて歩き出した



「え?うん。バイバイサスケー」

「うーん。負けず嫌いが集合だぁねー」
結構結構こりゃ結構

満足げに腕を組むカカシにナルトは

「結構は結構だけど、サクラちゃんがピンチのときカカシせんせーなにしてたってば?」
「んー?敵と戦ってたでしょー?」
「カカシせんせーが手間取るくらいだからすっっっごく強い敵だったってば?」
「・・・・あーうん。まあね」
「ふぅん。」

納得したんだかしていないんだか分からない相槌をうちナルトはクルリと背を向けた

「カカシせんせーまた明日っ。遅刻するなってばよーーー」

颯爽と駆け出した

それを見て胸を押さえほぅと一息

「やー・・もしやバレてたー?実は本体は家で寝てたって・・・」
サクラがピンチのときは本当にあせった。
家でガバリと布団から飛び起きたくらいだ
ナルトがいなければ間に合わなかったかもしれない。
可愛い生徒の成長に満足気にうなづき、それでも。

いやいやまさかねぇと思う。
サスケにだって気づかれてなかったというのに
あの・・ナルトが、よもや今ここにいるカカシが影分身だよーんなんて
そこまで成長しているとは思えない

あーでも・・・
ばれたらたこ殴りかなぁ

あはは


カラカラと笑ってから
冗談でないことに気づきカカシは微かに青ざめ心でつぶやいた

(ズルはやめとこ〜)

我侭三昧のこのカカシでも
あの三人のお怒りはとっても怖かったようです。



WEB拍手用「100のお題」より