73.無知
『無知は罪』
誰が言ったか。
「さすがになぁ。なれたもんだよな俺らも」
「ってか思ったより楽しんでるけど。サクラちゃん達とも仲良くなったし」
「お前の初恋の君だもんな」
「や・・それは忘れてーー。ただの憧れだって。」
「で?どうする気だ?」
「なんの事?」
「この先だ。いつまでも火影のじーさんの言いつけどおり護衛任務を続けるつもりかってことだ」
「ああ。それならもう任は解かれてるって。今ここにいるのは・・・そうだなぁ。惰性・・・かな」
「なるほど。情ではなく惰性と言うか。で?お前はどうするつもりだ」
「あー。今決めなきゃダメ?」
「や、急かす気はねーよ。明日までに決めろ」
「めっちゃ急かしてるってのっ」
笑い出したナルトにシカマルはしかし表情を堅くする。
真面目な話をするときの顔だ。
「今の状況から鑑みるに俺たちはのんびりここで下忍の任務をしている場合じゃねー」
「分かってるってば」
「ついでに言えば今の火影様はそれを温かく見守ってくれるほど婆バカじゃねぇ」
「うー。じっちゃんは甘かったよなぁ」
「さて。お前はどうする?」
「うーー・・・。」
「今の居心地の良い場所を捨て、里の犠牲になるか。思うがままに『うずまきナルト』として生きていくか」
「別に里の犠牲とは思わねーけど。シカマルは?どうすんだ?」
「俺はどっちにしろお前についていくだけだ。」
「ずっけー。俺に押し付ける気かよー」
「いや。お前の意思を尊重してるだけ」
「モノは言いようだよなぁ。」
盛大なため息を一つおとし、ナルトは覚悟を決めた。
分かっているのだ。
シカマルがなぜ、今になってこんなことを言い出すのか、なんて。
「その時が来たら。俺は迷いなく里を守るために動く。それだけは揺ぎ無い事実だ」
だからこそ。
これだけは意思表示しておかねばならないだろう。
「ああ。それでいい。」
その言葉に満足そうにシカマルが微笑んだからきっとこの答えは間違っていない。
弱体化した里。
新任の火影。
もうすぐ里には試練の時がやってくるだろう。
きっとそう遠くない未来に。
「まぁさ。うちのバカ親父が命懸けて守ったんだ。無駄にすんのもな。」
どーかと思うしー。
弱った里をどうにかしようと他の里どもが総出で押しかけてきたとしても、どうにか出来るのはきっと俺ら。
自分とシカマルがいなければ100%確実に木の葉の里は落ちる。
アオだけじゃきっとどうしようもない。
分かってる分かってるからさ。
「『無知は罪』って誰が言ったかなぁ。俺は今チョー無知になりたい気分だってば」
「ばぁか。んなめんどくせー事になったら俺は見限るぜ」
「それはヤダっ。」
だからさ。
「安心しろよ。俺も一蓮托生だかんな。」
ニヤリと笑ったシカマルの顔。
ああ。ホント頼もしいよ相棒。
ホントはさ。
めんどくさがりの俺としては、知らないフリして楽したいけど。
きっと俺の相棒は後で後悔するから。
沢山の憎悪を受けて育ってきたのにあいつはすっげー綺麗で真っ直ぐな心を持っているから。
だからめんどくせーけどお前が後悔しない道を示していこうと思っている。
お前が無知になったなら。
あーホント、俺も楽でいいんだけどなぁ。
でもこれは秘密だな。
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