75.見つけ出せ

「急いでくれ。マジやばいんだ」

切羽詰った声でそういったのは江戸川コナン(小学一年生)である。

「えーでも俺も忙しいしぃ」

のんびり答えたのは黒羽快斗(高校二年生)である。

ちなみにこの二人の力関係と言えば、


「ぐだぐだ言ってねーでさっさと探せっっっ」
「・・はい」

こんなものである。




「そんなねぇ子猫一匹を急いで見つけ出せって言われたって俺にも都合ってもんがあるんですけどーー」
ぶつぶつとコナンに聞こえないように文句を言うのが快斗に出来る最大の反抗
↑弱い

車の下を覗き込みながらそんな事を呟いていた快斗はヨッコイショと立ち上がり背後で近所のお宅を覗き込むコナンに問いかけた。

「ちなみにその子猫は一体なにやらかしたの?」
「・・・・・・・」
特徴はすでに聞いてある。
小さな小さな生れてからそんなに立っていない三毛猫である。

目印は首につけた小さな鈴つきの首輪。
赤いベルトに金の鈴。
まぁそれだけ情報があれば間違えることなく捕まえられるだろう。

その猫さえ目の前にいれば・・・ね。


さて、今きいているのは探す理由である。
そう言えば聞いてなかったなぁ、と言うかてっきり少年探偵団がらみで迷子の子猫ちゃん探しを頼まれたと思い込んでいたのだが、どうやらコナンの必死な様子から頼まれたというよりコナン自身が探している模様。

「コナンちゃん猫なんて飼ってなかったよね?」

じゃあなんで探してんの?

「そんなんどーでもいいだろ。とにかく探せって」

目の前のお子様は探してくれというだけで理由は口にしくさらない。
ええ、ええ。
大変使い勝手のよい快斗君といたしましてはーーそりゃーー言いたくないこと口にさせたくないですけどねぇぇ。
でもさーー

「俺、あと30分でお仕事に出なきゃなんないんですけどぉぉぉ」

こちらもお急ぎなんですよね。
遅刻したら怪盗KIDの名に傷がついちゃうじゃないの。
『怪盗KID、よもやの遅刻!!?』
なんて見出しのついた朝刊を明日読みたい?
ん?読みたいっていうの?



「ま、悪いとは思ってるけど・・・」
「理由はー?」
「・・・・・・いい、俺一人で探す」

そこまで言いたくないのか。
そうなると気になるのが人間ってもんだねぇ。
ああ、もっと時間があったらどんな手つかっても粘ってねばって粘りぬいて聞き出してみせるのに。
そんな事をやっている間に予告の時間が近づいてしまう。

時計を見て。
ちょっと考える。
ヒッジョーに後ろ髪惹かれるがやはり余裕はない。


「ん、じゃあ頑張ってね。お仕事終わってもまだ見つからなかったら是非呼んでくださいな」
「わかった。そん時は頼むな」

「あいさー」
時計を見てあと15分あることを確認。
さて、今から着替えてすぐに出発して・・あ、意外と余裕じゃん。
すでに準備は全て終えているからそんなに焦ることはない。
それでも、と早めに出発することにした快斗は空からの出勤(←なんか違う)中、鈴の音を耳に拾った。
とんでもない聴力の持ち主だからこそ聞こえたその音は、コナンの探している地点からそう遠くない場所から聞こえた。


「んー。ま、ちょっとなら間に合うか」
頭の中で計算して腕時計のタイマーをセットしておく。


「あーやっぱりこいつだー。はいはい捕獲〜。コナンちゃん困らせて悪い子ですねー。なぁにやらかしたの?」
ヒョイっと子猫を白い手袋を嵌めた手で抱き上げたKIDに扮する快斗は次の瞬間目をキョトンとさせた。

「お前何口に咥えてんの?」
まだ歯も生え揃っていないだろう子猫がしっかり口に咥えているソレ。
すっっっっっごく見覚えのあった快斗は先ほどのコナンの態度に合点いった。

「あー。そういう事かぁ。あげた時はあんなに要らないっていってたのに。やだなぁコナンちゃんったら照れちゃって。」

子猫を抱えたままトンと地面から浮かび上がる。
すぐにこれを返してあげないと。
せっかく探してくれているんだから。

子猫が咥えていた小さなソレを手の平に転がし快斗はとても嬉しそうに笑った。


ちょっと前に快斗がプレゼントした

銀色に光る小さな指輪。