76.擦れて生じる


「擦れて生じる、これなーんだ?」

唐突に口にした無邪気な歩美のなぞなぞに少年探偵団の面々は一瞬首を傾げた後、素直に考え始めた。

まず最初に疑問を抱いたのは元太。
「擦れて生じる?ってどーゆー意味だ?」
「擦れるというのは、こすれる。ようするにこう・・擦り合わせた状態のことですね」
手の平を合わせまるで暖めるかのように動かす光彦の動作にようやく元太は納得いったとばかりに頷いた。

「ああ、その擦れるな。ほんじゃ生じるってのは?」
「発生する。新しいものが現れる。生み出す。作り出す。まぁ意味はいろいろあるわね」
辞書でも読んでいるかのごとくすらすら答えたのは灰原。
それにふぅんと呟くと元太は手の平を擦り合わせ始めた。

「んーーっつーと、こう擦り合わせてなにが出てくるかってことだよな?・・・あっ魔法のランプの魔人!!」
「違うのーもっと普通の生活で目にするものなのっ」
残念ながら駄目だしです。

「外れたみてーだな元太。」
「ちぇーコナンはもう分かったのかよ?」
「あ?ああ、まあな」

ポケットに手を突っ込んだまま余裕で微笑むコナン。
同じく隣で灰原も小さな微笑をみせる。

とても小学一年生とは思えない態度である。

それに悔しそうな顔をするのは元太。
自力で解いてやるとやる気を出すのは光彦。

「擦れて・・・・・・生じる・・・・・・ですか・・・」


「うーーん。こうゴシゴシやってなんか出てくるか?」
「そうですねぇ。別に手でなくても何かがこすれ合えばいいんですから例えば服と服とか。カバンと机とか。サッとかシュッとか・・・擦れ合う・・・・・シュッ?あっえ?もしかしてっっっ」

ハッと顔をあげた光彦にコナンの笑みは深くなった。

「なんだよ光彦まで分かったのかよ。」
「元太君もすぐに分かりますよ。そうですねーこう石と石をシュッとやったりすると発生するじゃないですか」
「・・・石?シュッ?さっぱりわかんねーぞ」
「もーー。じゃあ最大のヒントですっ。マッチ。」
「マッチ?シュッ?石?・・・・・・あーーーーー!!」
「分かりましたよね?」

あくまでも答えを口にしない光彦に元太は嬉しそうにうなづいた。
そんな二人の様子を満足そうに見ていたコナンと灰原は顔を見合わせ小さく笑う。

「さ、歩美ちゃん。もう一回問題出してくれる?」
「うん。なぞなぞでーす。擦れて生じる、これなーんだ?」

コナンと灰原と光彦と元太はニッと笑うと口をそろえた。

「「「「火」」」」


「あったりーー!!」