「だーーーーなんでこんな日に雨が降るんだってばーー」
頭を抱えて雨宿りできる木を探す金の髪の少年
雨がしたたるその髪の毛はつやつやと光り輝いていた

先にその木にいたのは金の髪を持つ少年よりほんの少し年上の少年。
目が合うと二人はニコリと微笑み会った。


77.雨



青い目と茶色い目が交錯する

「雨やみそうにないね」
「うーんやっぱり?どーしよー」

茶色い瞳の少年の言葉に金の髪の少年は首を捻った

「もうすぐ僕のお父さんが迎えに来るから送っていこうか?」
「うーん・・・」
微妙な表情を浮かべる少年
「あ、もしかして知らない人だから警戒してるのかな?僕はムラキ。君はナルト君だよね。」
「へ?俺の名前知ってるってば!!?」

その表情はぽかんとしていて驚いているようにも見えた
けれど微かに感じるからだの強張り

「うん。一昨年までアカデミーに通ってたからね。残念ながら下忍になれなくてそのまま家業を継いだ口」
自嘲気味に笑う。
本当はね忍者になりたかったな

「家業ってなにしてるってば?」
「お医者さんだよ」

忍者になれたものと、なれなかった者。その差は激しく。今でも劣等感を感じる。
でも目の前の少年は優越感を見せ付けるような性格ではない。
それもアカデミー時代でよく知ってる

「凄いってばっお医者さんって沢山の人を助ける仕事だってば」
「まぁそうだね」
本気で言っているのだろう
目がきらきら輝いている。

「ほぇーちょっとしか歳違わないのに凄いってばー」
「でもナルト君は火影目指して頑張ってるんだよね。そっちのほうが凄いよ」

あんまり誉められてもこまってしまう。まだ見習いなのだから

「うん。俺ってばぜったい火影になって里のみんなに認めさせてやるんだってば!!」

強い瞳
僕にはないその瞳
彼が沢山の悪意の中で生きてきたのをアカデミーで一緒にすごした人ならだれでも知っているだろう
それでも負けない心を持っている彼を僕はとても凄いと思った
こうやって話してみたいと思った

でも彼を取り巻く人々は強い人で構成されているから
アカデミー時代全く近づくことが出来なかった。
きっと彼は気づいていないだろう
彼に惹かれる人は沢山いるのに近寄れるのは数えるほど
ドベ組みとよばれた昨年のナルトの友人たち
シカマルも、チョウジも、キバも三人ともああ見えて力あるものたちだ。
そうでなければとっくにナルトのそばから排除されていただろう
彼を思うもの達の手によって

「うん。僕もナルト君には火影になってほしいな」
「ほんと!!?」
意気込んで聞かれてしっかりうなづく

「ナルト君はアカデミー時代とっても人気者だったんだよ」
「は?」
「みんなねー友達になりたくってでも牽制しあっててねー」
「はぁぁ?」
「ナルト君のそばにいたのはサスケやシカマル、チョウジにキバ、日向や油目や春野や山中もいたねー」
「あ、うん。でもサスケはライバルだってば!!それにサクラちゃんとかイノはサスケにばっかかまってたしー」
そう見えたかもね
「油目とかは?」
「シノ?シノは良くわかんないってば。気がついたら後ろにいてビックリするってばよ」
「あはは。なるほど」
油目らしい近づき方だ
おっとそういえば言い忘れてたな

「下忍合格おめでとう」
突然の言葉にちょっとビックリしたような顔をしたがすぐに満面の笑みをうかべる
「ありがとうってば。そう言えば今いったの全員受かってるってばー」
なんか凄い偶然
そう笑うナルトに
「そうだね。みんな強かったから」
「えええーシカマルも?キバも?チョウジもーー?」
「うん。三人ともそういう家系に生まれてるからね。先生たちも期待してたと思うよ」
「へーー良く知ってるってば」
「有名だから」

あの三人が受かることはきっと周囲の人はわかりきった事実なのだろう。
サボり魔、居眠り魔、食べまくり魔の三人組みは
なんだかんだ言って強い。
実践でかなうものはほとんどいなかった。

サスケも、油目も日向も山中も家系的に有名で、当然のごとく下忍となった。
春野は一般家庭から出たとは思えないほど優秀で、くの一のトップを日向と山中と三人で争っていたほど。
下忍就任は納得だ。
一番驚いたのは目の前の少年。
ドベ
と最初に呼んだのはだれだっただろうか。
それはどちらかというと好意的な呼び方だった。

ナルト

とその名を呼べるのは近しいものだけ
俺たちパンピーはせいぜいドベと呼んでかまってもらうぐらいしか出来ない。
それも俺の時代では日向家の問題児ネジや熱血激まゆリーによって阻まれたものだが。

今思い出してもむかつく

ネジもリーも・・なにが
『弱い犬ほどほえると言うがそういうお前はどうなんだ』
だの
『弱いものいじめはやめなさいっナルト君は僕が守りますっ』

だの、よくもまぁ割り込んでくれたものだ

それでも平和な生活だった。
それも大人が絡まなければ・・・の話
イルカ先生以外は露骨だったなぁホント


「ねぇナルト君」
「ん?」
「なんで君はあんなに大人たちから目の敵にされるんだろうね」
「・・・・・・」
「君はきっとその理由を知ってる。それでもあえて受け入れている。」
「そんなことは・・」
「理由を知らない僕が言うのはおこがましいかもしれないけどね、そんなナルト君は強いと僕は思う。」
「強い?」
「そう。僕は君より先に生まれてるんだよ。だから僕の物心ついてから今までの間に君が何か里中を敵に回すような行動をしたか?
そんなこと有り得ないことを良く知ってる。これでも記憶力には自信があるんだ」
「それは・・・」
「だからね。きっと君自身には関係ないことで里は君をいじめている。そう悟った。それはたんなる八つ当たりと同じだろう?
それを解っていて人々の暴力を受け入れるナルト君はだから強いんだよ。
心が」

「そんなこと言われたの初めてだってば」
「みなバカだから。全然解ってないんだよ。僕が知りえる知識を総動員したらわかる事実をバカな大人はわからない。
それは・・・・きっと僕の父も。ごめんね。きっと送ってあげられない」

父のことは尊敬しているけれどこれに関しては別だ。
尊敬する父とはいえムラムラと怒りがこみあげてくる

「うちのバカな父が何か君に失礼なことを言う前につれて帰るくらいしか僕には出来ない。ごめんね」
「う・ううん。そんなこと無いってば。えっとえっと・・・ありがとうってば!!」

彼の言葉に目を瞠った
なんで彼はこんなにも強いのだろうか
こんな場面で笑って御礼が言えるなんて

「俺、もう行くってば」
「あっ」
「もうすぐお兄さんのお父さんが来るってばよ」
きっと気配がわかるのだろう
僕の家の方角に目を向け口元をもちあげる彼に僕はうなづいた
引き止めてもきっといい事はない

「うん。じゃぁまたね。」
手を軽く持ち上げてふる

「またってば!!」


せっかく乾き始めた髪の毛がまた濡れる
雨宿りすらゆっくり出来ないなんてね。ごめんね。
でもね
「また」
って返してくれてありがとう。
きっと次があると信じられるから


WEB拍手用「100のお題」より