79.耐えられる



人生17年。
これでも結構深い人生を味わっていると自負している。
いや、ここ最近が特に濃いよなぁ・・・。

怪盗KIDという罪を背負い、復讐を志し。
パンドラという宝石を求め・・・・・。

そしてそして・・。

大好きな、心から本当に大好きでたまらない人が出来た。

たった1年の間に、今までの16年の人生を覆すほどのその衝撃。

2つのことはほぼ同時にやってきて。

父の死の原因を知り、嘆き悲しんだかと思えば、初めての恋にときめいて。
犯罪者としての罪に唇を噛み締めたと思えば、その人の不適な笑みに心が溶かされて。
どれだけ求めても見つからぬ罪深き宝石に溜息をつけば・・・・・彼が・・・・


「バァろー。んな簡単に見つかるくれぇならてメーの親父さんが見つけてるっての。たかが1年程度探したくらいで弱音吐いてどーすんだそこのへぼKID」

なんて・・・・。ああ、こんな言葉が嬉しくてたまらないなんて、おれってマゾの素質あったのからしら?とちょっと怖いけど。
でも彼が心から労わって言ってくれていると解るから、その気持ちが嬉しくて。

「貴方がいるから、私はこの一年、耐えてこれました。」
「はぁ?」
「そうでなければ、この怒涛の一年の間に自分を保っていられなかったかもしれません。」

父が世界的な犯罪者だと知って、正気でいられなかったかもしれない。自分がそれをついで、罪をどっしり背中に背負って、それでも隣の幼なじみの少女とその親父さんと笑顔で話すなんて・・・・そんな事出来なかったかもしれない。

たくさんの人を騙して。
たくさんの罪を犯して。
たくさんの・・・・傷・・・体と、心に受けてきた。

自分で選んだとはいえ、それでも辛くて辛くてたまらなかった日だって沢山ある。
きっとこれからだって沢山ある。

それでも。


「貴方がいるから・・・・耐えられる。きっと・・・・耐えて見せますから」
「ふぅん。」
「大好きですよ。私の名探偵」

「・・・・・バーカ。んな事言ってる暇があったら次の獲物でも探しとけ」
「名探偵自ら犯罪を勧めてどうするんですか」
「お前のは盗むっつーよりレンタルだ。たかがレンタルごときにガタガタ言われたくねぇな」
「・・・ハハ。レンタルですか。そうですか」

名探偵にかかれば世界的犯罪者のFBIですら手がやくほどの盗みも「たかがレンタル」。
貶められたような、罪を軽くしてもらったような・・・。
脱力気味に小さな少年を見ていたら彼の口から最高の殺し文句が飛び出てきた。


「っつか、さみーから帰る。・・・・送れよ」
「もちろん。毛利宅でよろしいですか?」
「や、今日は工藤家。」
「また嘘ついて出てきたんですね」
「わりぃか?」
「いえいえ。とんでもない。私の為に嘘をついてくださったのですからありがたき幸せですよ」
「・・・・・・お前が一々暗号おいてくから答え合わせのために仕方なく・・・だ・・・」

子供が夜中に家を出るのは難しいのだ。
本当のことをいえない以上嘘をつくしかない。

「ちゃんと解いてもらえて嬉しいですよ。なにせ名探偵専用の暗号は難易度アップしてありますからね。それとも次はいりませんか?」
「いる」
「はい。では次の逢瀬楽しみにしてますよ」
「・・・・ふん。さっさと送れよ」
「はいはい」


そのうち、すべてが終わったら昼の世界でも一緒にいられますように。

そう祈りを込めて、夜の世界を生きるから。

貴方は私の一条の光。


その光があるから・・・耐えられる。