81.誕生日


この任務、危険度53%。
成功率75%。
余裕を持たせたいならば幻術が得意なアラキを入れるのが得策。


手渡された本日の任務について書かれた用紙。
ざっと斜め読みにしただけでそれだけ頭の中に浮かび上がった。

「火影様。アラキは手が空いてますか?」
「あやつなら・・・ああ、ちょうど暇しておるな」
手元の台帳をパラリとめくりキセルから煙をくゆらせ頷いた。

「では、シジマを抜いてアラキを投入することをお勧めします」
「そうか。ではそうしよう」

あっさり。理由を聞くこともなく三代目火影は決定する。
それだけ彼の能力を信じているからだ。

「それから明日とあさっては俺とナナシは参加不可能ですので。」
「・・・・それは困る」
「貴方が困ろうが困らなかろうが俺には関係ありません。明日はうちの母の誕生日ですから大騒ぎなんです」
「ならば明後日の夜ならば・・・」
「・・・火影様。ご存知でしょう?うちの母とナナシのあの砂を吐きそうなくらいの仲のよさと、見てるだけで倒れそうなくらいの飲酒量を」

う・・・
火影様はひるんだ。
実を言うと気づいていた。



目の前の青年、ドクことシカマルと友人関係を築いてからというもの、よく奈良家に遊びにいくようになったナルトは
いつのまにやらシカマルの母と懇意になっていた。
料理を教わり、洗濯の仕方を教わり、そのうち二人で編み物まで始めたくらいだ。



「なんだか知らないんですけどね、あの二人まるで親子みたいなんっすよ」
奈良家の当主が笑いながらそう言ったことがある。
しかも息子が増えたというよりまるで娘のように対応している妻にたまに夫は首を傾げたくなる。

「おいお前、ナル坊は男だぞ?」
「知ってるわよ。ナルちゃんは可愛い男の子。」
「じゃあ今作ってる服は誰のだ?」
「ナルちゃんのに決まってるじゃない。可愛いでしょ」
「いや・・確かに可愛いんだが・・」
それはワンピースというものじゃないのか?

「絶対ナルちゃんに似合うと思ってね、この生地買っちゃったんだ」
ふふ。と楽しそうに一針一針縫っていく妻。

(うっわーナル坊のヤツぜってー拒否できねーぞこれ)
愛情込めて縫われた服を拒絶するなんて不可能に近いだろうナルトの気性。
あ、でもそしたらこれあいつが着るんだよな?

「何色のリボンがいいだろうか」
「服と同じで青なんてどう?」
「そりゃいい。ちょっくら用意してくるわ」


いそいそと買い物にでる夫に妻もほくそえんだ。
なんだかんだいいつつ夫も娘が欲しかったもよう。
おっとじゃあ可愛いサンダルも用意しといてあげなきゃね。

これはさすがに趣味のイマイチな夫に任せるわけに行かない。

「シーカーー。ちょっとお使い行ってきてーー」

意外な趣味のよさを発揮する息子を呼びつけ、めんどくさそうに降りてくる息子にとんでもない買い物を押し付け、

「まじかよ・・うあーーどんな顔して買えって?めんどくせぇぇぇ」

女物の履物を店先でうんうん唸りながら探すであろう息子に今から大笑い。
「じゃ、行ってらっしゃい。ナルちゃんに似合うなら高くても許す!!」
「・・・りょーかいっす」

ため息と共に出かけていった。

さあってと。
後は来週の誕生日にかこつけてナルちゃんにこれを着せるだけね。
自分の誕生日なのだナルトはきっと大人しくこれを着てくれることだろう。
なにせ主役の命令なのだから。

たーのーーしーーみーーー



「と、まあそんな訳でたぶんあいつ向こう二日くらいはうちの母のおもちゃになってますんで」
そのダメージが抜け切らないだろう
そういうシカマルに三代目火影はキセルをポトリと落とすと、

「わ・・・ワシも明日参加してもよいか?」

身を乗り出して尋ねた。

「いいんじゃないですか。明日は家族水入らずですし。貴方はナルトの祖父のようなものですし」

明日の誕生日は母。
俺は息子で親父は夫。
ナルトは娘のようなもんで、その祖父のようなもんの三代目は母にとっては父にあたるのか?
だからきっと理にかなっている。
うん、たぶんな。

「仕事に支障が出ない程度で宜しくお願いしますよ」
「わかっておる。ナルトの姿をカメラに収めたらほどほどで退散するから安心せい」
ソウデスカ・・・
目をキラキラ輝かせる三代目にあきれ返った顔で答える。


明日は誕生日。
一番張り切っているのはきっと主役の母。
一番楽しみにしているのはきっと遊ばれるであろうナルト。

楽しい一日になるといいな。

3時間もかけて選んだちょっと値の張る女性物の履物を思い浮かべ、シカマルはクスリと微笑んだ。