8.うさぎ


「じゃじゃぁーんっ」
ナルくんに似合うと思って思わず買っちゃった〜と嬉しそうに見せられた物体に頬が
ほころんだ。

「よく見付けましたね」
「でしょぉ。こんなにキュートなのはなかなかないよ。さらにナル君が着たら食べちゃ
いたいくらいかぁわぁいーいー」

想像だけで身悶える怪しい大人を非難したいが人のことを言えない立場なので口を
謹む。
「ナルトにはもう見せたんですか?」
「まだだよー。さっきお昼休みにちょこぉっと町に買いに行ってきたんだもん」

嘘だ。
絶対ちょっとですむはずが無い。
困った大人への非難も言わないことにしておく。良い買物をしてくれたから。

「だからさカカシ君にも見せてあげよーと思って誘いにきてあげたの」
来るでしょ?
なんて聞かないシメナワ。
もちろん行くに決まっているのを見抜かれているのだろう。

「最近やっぱりイルカ君に負けてるからね挽回しないと」
物で釣る気かお父さんや。
呆れた顔をすれば、
「こらっ失礼なこと考えたでショ」
ぴんっとおでこを弾かれた。



「なーるくんっただいまぁ」
「とーちゃおかえりー。あっかあしぃぃ」
父の後に久しぶりにみる顔が見えて勢いよく抱きつく。
「久しぶり、ナルト。熱烈歓迎だなぁ」
怪しいマスクの下はデロデロに垂れ下がっていること間違いなし。

「久しぶりって、たった2日じゃない」
「ええ48時間も会っていなかったんですよ。ナルトーちょっと大きくなったなぁ」
「なるセーチョーキだもんっ」
ムムンっと偉そうに胸を張る
「そーなんだよ。前のパジャマが入らなくなっちゃったんだもんねぇ」
「ねぇー」
父の言葉に一緒に声をあげ二人同じように首を傾けあう。

そっくりな顔の親子がやると実に微笑ましい。

「ってことでジャジャーンっ。ナルくんにお土産だよー」
カバンからごそごそと取り出し広げてみせたその物体。

ウサギの気ぐるみ型パジャマ。

きっと目をキラキラさせ、「うさちゃんだぁぁ!」と大喜びすると思っていた父。
だが現実はそううまくいかないものである。
そう、数ヶ月前までならきっと大喜びだったであろうナルト。
最近はちょっと自我が目覚めきたのである。

「ナルうさちゃんは着ないのっ。」
「えぇっ」
不服そうな顔に父は衝撃を受けた。

「うさちゃんは女の子っ。ナル男の子なのっ」
「な・・なんで可愛いじゃない?」
「ナルは可愛くないのっライオンさんなのっガォーっ」
襲い掛かるように両手を振り上げるナルトにダメな大人たちは撃沈した。

「か、かわっ」
「可愛すぎ・・・」

「なる怖い?」
ワクワク尋ねる幼子にパパは思わず。
「なる君可愛いすぎー」
「違うのっ、なる怖いのっ」
ムゥと頬を膨らませるナルトに父はコクンとくびを傾げた。

「せんせい・・・」
カカシは額を押さえうめく。まったく話が通じない父を無視することにしてナルトは上
目遣いでカカシに尋ねる
「かぁし〜なる怖い?」

やっぱりすごく可愛いかった。
が、カカシは父と違って幼心が分かったので

「怖いよ〜すっごく怖い。カッコイイなあナルト」
「へへっかぁし〜大好きぃ」
嬉しそうにカカシに抱きついた。

「でもカッコいいうさぎさんになればいいんだから、これは着ようね」
「あ、そっかー。ナルうさちゃんも着るってば!」
カカシの説得にあっさり納得したナルトは、ニッコリ笑ってうさぎさんパジャマを抱きし
めた。


「ナルくんがうさちゃん着るのは嬉しいけど・・・・なぁんか納得いかないんですけどー
ー」
一人すねる4代目の相手をしてくれる人間は残念ながらこの場にはいなかった。