悪夢到来!!!  小さな反乱1



「朝だーーあっさだよーーんコナンちゃーーんおーきーてぇぇぇ。お腹ぺっこぺこだようぅぅ」
今にもラジオ体操を始めそうなほど元気ハツラツの快斗に低血圧気味のコナンはもそもそと布団の中で蠢いた。

「こなんちゃーーーん」

耳元でもう一度囁くとモゾモゾと布団の奥へと潜っていく。
うーん起きる気なし?
困ったように腕を組むと昨日飲みかけていたコーヒーが目に付いた。

快斗にはちょっと苦かった。砂糖はそりゃバリバリにいれた。だが生憎ミルクが無いため美味しくは飲めなかった。
コーヒー通のコナンすら納得ゆく出来映えのコーヒーでも苦い物が苦手な人間にはタダの苦い物体Xだ。出来る事ならご遠慮願いたかったがコナンが飲め飲めうるさくて仕方なしに口を付けた。
だからカップの半分以上残ったそれがここで存在を主張しているのだ。

(やれやれ。この後かたづけは俺がやるのか?)

準備は喜々としてコナンがやったがどうせ片づけはめんどくさがるのがオチだろう。
困ったおこちゃまですねぇと小さくため息を付くと苦笑を浮かべる。
そしてその頭にピンっと一つひらめいた。


「ああ・・もしかして夜明けのコーヒー?」


なんでこの部屋にコーヒーメーカーやら豆やらが用意してあったのか気になっていたのだ。
普通はお茶のパックとかだろう?日本なら緑茶だろうがここなら紅茶かな?
だがコーヒーメーカーしかも自分でたてろと・・・
きっと夜明けのコーヒーを狙ったのだろう。二人で朝コーヒーを飲んで欲しかったのだろう彼女達の考えが解ってしまう自分が快斗は何故か情けなく感じた。
「はは・・」
残念だねー夜のうちに飲み終えちゃいましたー
それが無性に面白くつぼに入ったのかクク・・と笑いだしてしまった。

さっきまでさんざん五月蠅く自分を起こしていた快斗が静かになったと思ったら突然笑いだしたのに不審に思ったのかコナンは眠気を押しのけ布団からちょっとだけ顔をだした。

「うるせー不気味に笑うなっっもう少し寝かせろ」
「不気味?そお?こらこらまた布団にもぐらないのっ。夜ご飯食いっぱぐれた俺の腹はもう我慢できないんだから」
「俺はいらない。勝手に食ってこい」
「やだーーーー一緒がいいーーー」
だだをこねる快斗にコナンは重い瞼を仕方なくこじ開けた。

「眩し・・」

カーテン全開の部屋は東部屋のせいか朝日がサンサンに入り込んでいた。
快斗の朝の第一感想もそれだった。
確かに最初に日の当たる部屋かもしれない。
だが所詮起きるのは日が昇りきった頃。ロマンもなにもあったもんではない。

今何をご所望かと問われたならば迷わず二人は答えることだろう


『カーテンもってこい』




もう一度布団をかぶろうかと思った瞬間それを阻むかのごとく快斗がコナンを抱え上げた。
「さぁ行こう。飯だ飯っっ」
シワになるからと一応部屋に入った時に上着は脱いで置いたが、あとは昨日の服のままのため、確かにこのままでも外へ出られる。

「あーねちまったんだなー昨日。あれ?お前着替えたのか?」
「うん。早く起きたから一応ね。コナンちゃんも着替える?」
「・・・・いーや。めんどくせーし」

そう言うと思ったよ。コナンを抱えたまま器用に肩をすくめ昨日とは違いラフめの水色のシャツを着た快斗はコナンの靴を右手に持つと左の腕にコナンを乗っけるように抱きかかえ直した。
「あっそうそう。早く起きて暇だったからマーシェリー家についてちょっと調べて置いた。後で見せるな」
「さんきゅー」
現時刻は6時25分。早くって何時に起きたんだろうこいつ。


どこでご飯が食べられるのか分からない為、とりあえず昨日の部屋に向かうと、そこには新聞を広げるマリアがいた。朝早くとは思えないほどかっちりとスーツを着込み、髪もきちんと整っている。
眼鏡は外してテーブルの上へと鎮座していた。

『あら?シンイチ、コナン君おはよう。』
『おはようございます。マリア。昨日はすみません』
『いいのよ。予想どおりだったから。ナイトバロンもよくこちらに来たその日はご飯食べずに寝てしまうから、きっとそうだろうなと思ってたの。』
『そう言って頂けると助かります。それより今何か食べれますか?』
『ええ。ちょっと待ってて。今メアリを起こしてくるから』

お腹をさすりながら尋ねた快斗にマリアは微笑んだ。
現在ここに寝泊まりしているのはマリアとメアリだけらしいし。
後の4人は自宅へ帰宅し、今日は各自てきとうに来ると言うことだった。

『・・・はよ』

マリアに連れてこられたメアリはぼさぼさの髪を軽く束ね、とりあえずパジャマにガウンを羽織ってのご登場だった。
しかも未だ眠いのか動きがのろのろしている。

『おはようございますメアリ』
快斗が爽やかに挨拶をするとメアリはちょっとだけ快斗とコナンを振り返り、すぐにマリアに顔を向けた。
『そう言えばこの二人が来てたんだわね』

ぶつぶつつぶやくメアリの言葉に未だ寝ぼけているのだろうと判断した二人はとりあえず腹と背が引っ付きそうなほどの空腹をなんとかすべく(コナンはどちらかというとピークを超して食べたくない気分だが)マリアの案内により食堂へと向かった。

「うわー広――い」

通された食堂にコナンは感嘆の声をあげた。
机もイスもシンプルなものだが、とりあえず部屋の広さはなかなかのものだった。
たぶん劇団の全員で食事がとれるようになっているのだろう。
壁にはおしゃれな絵画もかざってあり、ちょっとした喫茶店の雰囲気を醸し出している。

長机の脇には
「にーしーろーはーとーーじゅういちーじゅうにー―――――――――――――――・・・・・53個だっ」←コナン捨て身の子供ぶりっこ

53脚のイスが並べてあった。
楽しげにイスを数えていたコナンに頬をゆるめるマリアと快斗。
メアリは未だ夢の中なのかテーブルに頬杖をついてボーっとそんな可愛らしいコナンの動作を見つめていた。

『はい。』

とりあえずドアから近い席に着くとマリアがてきぱきと朝ご飯を用意してくれる。
至れり尽くせりだなーと感心しているとどんどん前の席に座ったメアリの目が開いていった。

『・・・・・お腹すいた』
『目覚めた?』
『もうちょっと』
『ごめんなさいね。この子いつもこんな調子なのよ。ご飯食べ終わる頃には起きると思うから』
ぼーとしたままパンにかじりつくメアリにマリアは苦笑を見せた。
『いえいえ。気にしませんから』

どうせ起きたとしても大差ないし。
と内心快斗が思った事に気付いたコナンは目の前に用意されたクロワッサンを口に突っ込み笑いをかみ殺した。
「あーお腹ぱんぱんー。最近まともに朝ご飯食べてるなー」
この姿になってからの方が食生活はまともなコナン。
新一時代は一日一食でも過ごせたのに最近ではきちんとご飯の時間にお腹がすくから不思議だ。
やっぱり慣れってもんがあるよな。


「確かに。お前も目覚めたみたいだな?」
「うん。やっと覚めた。外天気いいから散歩いかない?」
「それもいいなー。」

コナンの意図は分かる。夜に備えてマーシェリー家を一度見ておきたいのだろう。
しかも昼間はきっと人通りが多いだろうからじっくり見るために朝っぱらから出掛けようと言うのだ。
そういう理由でもなければ散歩なんて思いもつかないだろう。

『今からちょっと散歩してきてもいいですか?』
『いいけど朝方は冷え込むから上に一枚羽織ったほうがいいわよ』
『はい。後、近辺の地図ってありますか?』
『地図ねぇ。普段使わないから・・どこに置いたかしら』

首を傾げるマリアの横の席にすわるメアリが突然ガタリと立ち上がりどこかへと消えた。
そしてすぐに戻ってきたと思ったら

『はい』
地図を持ってきてくれたらしい。
『ありがとうございます。』

思ったよりいい人かも。






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02.8.12