悪夢到来!!!  偽者現る4



コナンの連絡でそのままマーシェリー家を素通りして家へと戻った快斗はさんざんボールとピエロに叱られた末、洗いざらい喋らされた。
とは言う物の全て話すわけには行かず、とりあえずあいつが偽物だったという事から始める。
『それで捕まえられたの?』
『すみません逃げられてしまいました』
マリアの問いに肩をすくめ両手を広げる仕草にボールはへっと鼻で笑うと
『抜け駆けするからだ。お前勝手な行動は慎めよ』
と柄にも無いことをいう。
(うっわーむちゃくちゃ説得力ねー)
と思ったのは快斗だけではないことは周囲のボールへと突き刺す白い視線が証明していた。

『えーっと・それであのKIDはどうやら本物の怪盗KIDではないみたいで―――――』
どうしましょう?と問いかけるように首をかしげると
『やっぱり』
『そりゃそうだな』
『当然よあんなのがKIDなわけないわっっ』
口々に納得し始めた。
それには快斗もコナンもあんぐりだ。
おいおいKID捕まえろってゆーわ、あいつのこと偽物って分かってるわ、どーゆー事だっ。

『初めから知ってたんですか?偽物だってこと』
『あら・・・そんな事ないわよビックリーー』
快斗の問いに焦ったように答えたのはマリアだった。だが非常に怪しかった。
『それで?そいつの正体は分かったのか?』
とりあえず話題を変えようとしたのかボールの言葉に
『ええ。その人物はナイトメアと名乗りました。』
と答えた瞬間のどよめき。
誰の顔も強ばっていた。
『知ってるんですか?』
『知ってるもなにも・・此処最近ロンドンでは有名よ。ナイトメア。』
快斗に狼狽えた口調でメアリが答える。
裏情報に詳しい筈の快斗が知らないと言うことは丁度コナンを探していた時期の話なのだろう。
なにせ4ヶ月ばかし裏世界にはブランクがある。
今もブランクを埋めるべく情報収集を以前の倍しているが、さすがに4ヶ月分となるとなかなかとおいつかない。

『世間では女性と噂されてますがホントのところは未だわかってません。彼女も宝石専門の泥棒として有名です。』
しかもKIDのように後で宝石を返すからKIDの再来。はたまた弟子と噂されているらしいとピエロは続けた。
『アリスも知ってますわーー。ナイトメアはへんそーの名人ですわ。家族とか知り合いとか後はーお手伝いさんとかに化けちゃうんだってボールが前に言ってましたーー。KIDみたいに事前にお手紙だすんですわよね?』
『よく覚えてたなアリス。そう。変装の名人かなりやっかいな相手だぜたんてー君よ。予告状が送られる。それを見て回りの誰もが敵のように思える。例え血の繋がった娘だろうが愛し合った夫婦だろうが・・な。それからが悪夢の始まりだ。』
そこから付いた名がナイトメア・・悪夢だ。

「ねーねー」
緊迫感漂う一室でコナンだけが訳が分からず唇をとがらしていた。
快斗の服を引っ張り説明を求めようとするコナンにピエロが横からそっと話かけた。
「コナン君僕が教えるよ。彼は忙しそうだから」
「あれ?お兄ちゃん日本語しゃべれたんだ?」
「うん日常会話程度はね」
謙虚にそう言うが滑らかな日本語に努力が伺え、この青年らしいと思った。
コナンはほっとした笑みを見せると
「よかったー新一兄ちゃん他の人としゃべっちゃって相手してくれないんだもん」
つまんないっと頬を膨らませるとそれに苦笑しつつ
「仕方ないよ探偵だからね。彼は」
と頭を優しくなでながらピエロはゆっくりかみ砕いてさっきの話をコナンに聞かせた。

「怖いねーナイトメアって人」
「そうだね。予告状と言っても日付も時間も書いていないから。いつかお前の家を狙うぞって脅迫状みたいなものだもんね。」
ナイトメアが現れるのが明日なのか1年後なのかだれにも分からないのだ。
だからこその疑心暗鬼。
精神はむしばれ、緊張する毎日に家庭は崩壊するわ、夜も安心して眠れないわ、まさしく悪夢がやってきたと言った感じだ。
一週間で戻ってくると分かっていても、周りを疑う事に疲れて、盗まれる前に宝石を手放してしまう人もしばしば見受けられるらしい。

「それで?これからどうするって言ってるの?」
「今、話あってるよ」
とりあえずKIDが偽物であり、その正体がナイトメアである所まで突き止めたのだから手をこまねくしかなかった頃に比べればぐっと前進している。
そして殺害の犯人はまた別の人間らしいと快斗が述べると更に混乱したような声があがった。
そりゃあ探す敵が増えたのだ、声もあげたくなるというものだろう。


『どうですかボールさん?』
『さっぱり思いつかねーよ。ナイトメアが次に狙う場所もわかんねーし、マーシェリーの先代狙ってる奴が別人だっつーならとりあえずそっち張るか?』
『そうですよね。シンイチ。貴方はどうですか?』
問われた快斗も腕を組み眉を寄せる。
『今の所打つ手なし・・ですね。先代のところは警察が固めてているでしょうから今の僕たちに出来ることはありません』
頼みの綱の探偵にここまで言われてしまいピエロはうなだれた。
「大丈夫だよお兄ちゃんきっと新一兄ちゃんがなんとかしてくれるからっねっ」
ピエロの落ち込みに何かを感じたらしいコナンが必至で慰めると快斗が目を細めてコナンを睨む。
(てめー俺に何か打開策見つけろってーのかっっ)
(うっせー一応今はお前が工藤新一名乗ってんだからその持ち腐れの頭脳フル回転にしやがれっっ)

『嫉妬ですわねきっと』
『いやーんピエロごときに嫉妬しちゃうなんてラブラブー』
なんて快斗の視線を邪推したアリスとマリアの会話はラッキーな事に今の二人には聞こえなかった。






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悪夢到来しましたっっ
かけていたのですナイトメア=悪夢(笑)
もちろん本当の悪夢も見ますけどね。
メアちゃんにはこの先張り切ってもらいましょーーー
とか思ってますが、思ったより出番少ないかも。
2002.9.3