悪夢到来!!!  悪夢到来1



変化が起きたのは次の日お昼の事だった。
打つ手無しと言ったにも関わらず誰もがジッとしていられなかったのか朝から劇団に集まり、うだうだと実にならない事を話会っていた。
コナンはというと素晴らしい熟睡で延々昼までベッドに潜り込んで久しぶりの惰眠をむさぼっていた。
「コーナーンーちゃぁぁぁん暇だよーーー」
そんなコナンの横で話合いに参加する気も起きなかった快斗が駄々をこねる。
その声を綺麗きっぱり無視し続けるコナンに快斗はそのうち諦めコナンが大量に持って来た小説に手をのばした。
「まぁ仕方ないか。昨日遅くまで二人で話会ってたし・・・」


結局あの後話は進まず解散になったため部屋に戻ってきた二人。
快斗にあの場で明かさなかった事のあらましを全て聞かされると(一応電話回線は繋げていたが聞き取れなかった部分をフォローするために一通り聞いた)コナンは腕を組み考えるポーズを作った。
「信用できそうか?」
「いまいち・・でも父さんを知ってるのは確かだと思う」
「だな。わざわざJrって言うくらいだからお前が息子って事もバレてんだろうし」
「かといって気を許せると決まったわけじゃない。反対に警戒心が湧いたね」
「そうか。まあそれは仕方ねーよな。とりあえず仲間になったフリしておくって言う手もあるけど?」
「うっわー卑怯―」
「使わねーよ俺は。お前が使いたきゃ使えばいいってだけだ。」
「うーん・・。それは最終手段って事で。とりあえず信用できるんなら実にありがたい申し出なんだよな」
メリットばかりだもん。
資金について今まで困った事はない。寺井がどこからか調達してきてくれるので、きっと寺井が資産家なんだろうと思っている。
だが情報だけは限界があった。
ナイトメアと名乗ったあの女性が、パンドラを知っていたのはバックからの情報と見て間違いないと思う。父がそんな事を軽々しく人に話すわけがないからだ。
たぶん知っているのは寺井くらいなもののはず。母ですら知らないと思う。
快斗は情報が欲しい。
自分が探している組織と、コナンが探している組織二つの情報が。
その為にあっさり断りきれないのだろう。
うまくいい位置を勝ち取り情報だけ引き出せるなら万々歳。
うっかりそいつらの手下にされて、コマのように動かされては元も子もない。
「困ったな」
「確かに情報源は魅力的すぎだな今の俺達には」
コナンもそれが分かっているのだろう。断れとはハッキリ口にしない。
そして話はそのままコナンのあくびにより終わりすっかり夜が明けた空を背景に眠りについたのだ。

ベッドの傍にイスを運んできてコナンの寝顔を傍らにどっかりと腰を下ろした。
「仕方ねーよな。子供は睡眠が命だし」
ふう・・・と3時間しかねてないようには見えないほどハッキリした頭で小説をぱらぱらめくっていく。
そこに答えが載っていないか、すがるかのごとく。

そうしていつの間にか読書にはまった快斗がコナンのうめき声でハッと顔をあげたのは時計の針がすでに午前11時を指した頃だった。
「・・・と・・かい・・・と・・・」
「ん?」
何を言っているのか分からず近づくと、がばっと起きあがったコナンにしがみつかれた。
「快斗っっ快斗・っっっ」
「どうしたんだ?コナン」
「ごめん・・ごめんな約束守れなくてごめん快斗・・・・」
「はぁ?」
なんの話だ?
まだ寝ぼけているのかコナンの額にうっすらと汗が張り付き、しがみついてくる手は小さく震えている。
まるで怖い夢を見た後の小さな子供の姿だ。
「コナン。どうした?俺はここにいる。何も心配する事ないだろ?約束ってなんだ?何に怯えてるんだ?」
優しく優しく頭をなでながら問いかけるとコナンの体の震えが少しずつ落ち着いてきた。
「コナン?」
「・・・・・・・ん?」
「目、覚めた?」
「あれ?快斗?何やってんだお前?」
自分からしがみついておきながら快斗をどんと突き飛ばし、首をかしげるコナンに苦笑してしまう。

「お前寝ぼけてただろ?」
「マジかよ?っかしーなーあれー?なんか夢見てたような気ぃすんだけど・・うーん思いだせねー」
「いいじゃん?別に。快斗―ってしがみついてくれて俺超愛されてる〜って思ったしぃ」
クスクス笑いながら言う快斗にコナンはマクラを思い切り投げつけ真っ赤な顔で抗議する。
「バーーーーーーーカ」
「はいはい」
笑顔で軽々うけとると快斗はコナンにマクラを渡した。

実際そんな甘い雰囲気は全くなかった。
あんなコナン見たことない。
怯えるような何か全てに絶望したようなそんなコナンに快斗はどうしようもない胸騒ぎを覚える。
そんな気持ちを押し隠し、何気ない口調で尋ねてみた。

「コナン。俺お前と約束ってなんかしたか?」
「は?約束?あっしたした。今回の件に参加するかわりに冬休みの最後三日間ゲームに一緒に参加しろって脅したろっっ」
「あれ脅しー?どっちかって言うと俺の方が脅されたんだけどなー」
付いてこなくても一人で行くからいい・・なんて充分脅しだ。
んじゃ付いてくからちょっとゲーム大会のパートナー役やってくれる?って聞いたら「まぁいいぜ」と軽く答えてくれたのだ。
今になって脅しだなんて失礼なっっ。
というかそういう約束の話をしていたんじゃないけど。
まったくさっきの様子を見せない元気なコナンに安心してこの話は打ち切る事にした。
でないとまた癇癪起こしてマクラを投げられかねないし。


ピンポンパンポーン↑
どこからか校内放送の音が聞こえてきた。
この音を聞くと何故か皆聞き耳を立ててしまう不思議な音だ。
もちろんこの二人も例外ではない。
何事?とすぐさま口を閉じ耳をすます。
すると
ピンポンパンポン↓。

「・・・」
「・・・・」
放送終わりの音だ。
なにやら終わったらしい。
二人で顔を見合わせ意味なく笑ってしまった。
そこへ
『はっあーーい遅起きのお二人さーんグンモーニーン』
ベッドの下から声が聞こえた。

同時に顔を見合わせた。
「快斗」
「やだよ俺だって」
二人で嫌な役目を押しつけ会うとやはりコナンに弱い快斗がしぶしぶベッドの上から覗きこんだ。
そこからニュっと白く長い手が伸びた。
「うわっっ」
顔を跳ね上げると顔だけで背後を振り返り
「手が出てきた・・・」
とコナンにいちいち報告をする。
「なんの手だ?」
「人間っぽい」
「・・・・そうか」
真面目に答える快斗にコナンは額を押さえた。
そりゃ人間だろう?さっき人間の言葉しゃべってた訳だしよ。
そしてもう一度顔を戻した快斗は手を引っ込めて今度は細くて長い美脚が出てくるのを見た。

「・・・なあ。それ名前当てゲームか?」
『日本語ちょっとしか分からないから英語でよろしく』
ベッドの下からくぐもった声が聞こえた。
『・・・・俺にあんたの名前を当ててみろといいたいのか?』

『せいかーい。私は誰でしょうっ』

・・

もしこのままこの場から去ったらこの人物は実に滑稽な事態に陥るだろうな・・
やって見たい衝動に駆られたが、なんの用で来たのか気にならなくもないので仕方なしに二人は答えることにした。
今までの状況から行くとこんな事出来る人物はたった一人しかいない。

「「ナイトメア」」
二人でハモる。
『ピーンポーン。やっぱりこんなに美しい足を持つ人なんて私くらいだものね』
ふふ。と自慢気に長い足を延ばしゆっくりベッドのしたから出てきたその女性は乱れた髪をささっと手櫛で整えると人好きする笑顔を見せた。

『昨日ぶりねJr。それと初めましておちびちゃん』





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