悪夢到来!!!  スミスさん家の事情2



思ったよりまともなパーティーだった。
一見してお金持ちそうな人々が立ち並んでいた(実際に金持ちなのだろう)
きらびやかな世界。
『しかしてっきり屈強な男性が現れると思ったんだがね。』
モリスが連れてきた二人の人物を見て明らかに眉をひそめたマーシェリー氏。
『いかにも守ってますと見せると刺激しなくていいものまで刺激してしまうものですよ』
おっとり受け流す。
それは見事に先代の不審を取り除いた。
『なるほど。そう言う見方もあるな』
『そう。いざとなったら私が命に替えてもコナン様の事をお守りしますからご安心下さい』
この恰幅の良い体でいざという時どう機敏に動くつもりかは知らないがそれでも彼女の目は真剣で先代は満足気に頷いた。
『モリスがいれば一安心だな。心強い』
じゃあ連れの二人は要らないかと言えばそうではない。
味方は多ければ多いほどいいのだ。
『大丈夫ですよ。私の他にメアリさんとピエロさんがいらっしゃるのですから。』
確かにこの二人を見て心配になるのは頷ける。
方や女。方や貧弱そうな少年なのだから。
かといってあの犯罪顔のボールと完全な子供のアリスを連れてくるよりマシである。最初紹介されたときの呼び名に先代は首をかしげたが、コナンの『あだ名だよー僕が英語の名前長くて覚えにくかったからあだ名つけたの』の言葉に簡単に納得してくれた(笑)


『三人も美人がいて鼻が高いと思われません?』
茶目っ気を出すモリスにとなりで聞いていたピエロが吹き出した。
『三人ってモリスさんも入ってるんですか』
『そうよ。昔はこれでもモテモテだったんですよ。』
ふふ・・と失礼なピエロの問いに笑い返すとモリスは、笑いだすマーシェリー氏達を置いて医者と看護婦に守られるように立つ小さな子供の元へとジュースを片手に足を運んだ。

「コナン様オレンジジュースを頂いてきましたよ」
「ありがとーモリス」
ニッコリ受け取ったその瞬間花が咲いたかのような雰囲気が辺りに漂った。
その笑顔を見た人は思わず顔がほころび、その声を聞いた者は可愛らしい声の主を求めて振り返った。その先にその声にふさわしく愛らしい少年の姿を目にし、思わず微笑んでしまうことだろう。

『こんにちわ、ようこそいらっしゃいましたマーシェリーさん。可愛らしいお連れ様ですね』
主催者が親しげに挨拶をすると辺りにさざ波のような暖かな笑いが広がる。
『ああ。ご無沙汰ですな。今日はこんなおいぼれを呼んでくれて感謝するよ。それに突然の人数変更も迷惑かけましたな』
孫が誉められたのが嬉しいのだろう自然な笑みを浮かべ手をにぎりあう。
『こんなに愛らしいお客様でしたらいつでも大歓迎ですよ。飲み物は行き渡りましたか?』
『ああ。あの子も持っているな。では大丈夫だ』
『それはよかった。そう言えば今日は実に珍しい方がいらしているのですよ』
恰幅そうな腹を震えさせ含み笑いをする。
『珍しいと言うと?』
対してやせ細った体のマーシェリー氏が興味を持ったかのように尋ねた。それにもったいぶるでもなくあっさりと答える
『スミスさんですよ。現当主に代わられてから初のお目見えじゃないですか?』
『ああ。あのパーティー嫌いで有名な?私も初めてお目にかかるな。』
それは珍しいと驚くと男は嬉しげにそうでしょうそうでしょうと頷いた。
『確か前の当主の一人娘が婿を取ったとか言ってたな。結構なさわぎだったのは覚えている』
『ええ。もう12年も前の事ですね。庶民からは逆シンデレラと騒がれたあの方もさすがに今は当主らしさを身につけられたでしょうね』
『そうか・・もう12年も。月日が流れるのは早いものだな』
しみじみとつぶやくとコナンを見やる。
あんなに可愛い孫を見ることが出来ただけでこの歳まで生きていて良かったと思う。
『あっもしかしてあの人かな?』
ぐんぐん近づいてくる一人の男をあごで示す。

それにならって見てみるとタキシード姿の男が小さな女の子を腕にひっつけて歩いてくるではないか。人々の視線を集めているのは潔い行進のせいか、それとも綺麗な顔立ちの親子の為か。
長い足で迷うことなく一点へ向かう。
男は30代前半に見えるが確かに見たことのない顔のため、スミス氏である可能性が高い。
腕にひっつく少女が11.2歳なのも多大な根拠だ。
『赤いドレスに黒いタキシード。二人の調和が見事にとれてますねぇ』
うっとり見とれる周囲にかまわずその二人は脇目も振らずに行進していく。

そして―――――


『・・・・』
声なき声をあげたものが数名。

(どっっどうしたんだその格好はぁぁぁぁぁぁ)

マリアもメアリもカバもピエロも。
そしてコナンや快斗ですら指を指して大声を出しそうな程驚いた。

『よっ友よ』
軽やかに手を挙げたのは間違いなくあの男だった。






小説部屋   Next