悪夢到来!!!  落下騒動2


コナン


「お祖父様っ」
「おおコナン。無事だったか」
ひしと抱き合う感動の再開だった。


自分を呼ぶ声に振り返るとお祖父様が五体満足で立っていた。
お祖父様は残念ながらコナンのように無傷とはいかなかったらしい。
目立つ外傷はちょっと右足を引きずっている事から捻挫くらいだろうか。
周囲の状況から考えてみれば奇跡的な軽傷である。
「お祖父様っ足怪我したの?」
「いや。ちょっとひねっただけだ。コナンは無事か?」
「うん。大丈夫」
難しい言葉は出来ないものの、ある程度は日本語が分かるマーシェリー氏は必至に単語を思い出しながら可愛い孫の身をあんじた。
『やはり私を狙ってのことか?』
一人ごちると氏は悲惨な周りを目にし眉をしかめた
『やはりあの組織が・・・』
気になる言葉だったが今は通訳がいないので会話が成立できない。
(しまったなーこんな事ならめんどくさがらず最初からこっちの言葉使っとけばよかった)
もちろんただめんどくさかっただけではなく、理由は他にもある。
快斗が事件の輪に入るようにする為だ。
コナンが話せたらきっと探偵役は任せたとばかりに傍観を決め込むだろうから。
偽者に興味はあるが事件はどーでもいい。そんな奴だ。
せっかく理由つけて無理矢理つれてきたのにそれを許すと思うか?当然毒を食らわば皿まで、だ(コナン談)
と言った訳で自分の代わりに話させ、行動させてきたが今ちょっと失敗したなと後悔している。
快斗と離れる事態を考慮してていなかったのだ。
敵をあなどりすぎである。
「さて。どうするかな」

カイト
一方片割れはというと
『シンイチーー危ないわよー』
『というか凄い体力ね』
『感心している場合じゃありませんわメアリお姉さまっこれも愛のなせる技。じっくり目に焼き付けておかなければっっ』
『それもそうね。記念に写真でも撮ろうかしら』
『さんせーーーい』
『賛成ですわっ』
メアリの言葉に二人が手を挙げ同意を示す。
この一同結局未ださっきの場所に居着いていた。

快斗は必至の形相でがれきの山を掘っていた。
今度は人命救助ではない(そちらは終えたらしい)
この部屋が閉じられている事に気付き外への通路を開拓していたのだ。
そんな頑張る彼を大きなお腹を抱えたカバが手伝う。
背後から無責任でノー天気な会話が聞こえても構うつもりは全くない。

だがあいにく今はモリス姿の彼を写真に収めておいてもあまり面白味がないと思った三人は(どうせカメラも無いことだし)白魚の手で瓦礫撤去の手伝いをすることにした。
単に暇だったのかもしれない。

『さて、この先は行きたい人しか連れていかないよ』
とカバの声。
瓦礫の撤去を終え、なんとか道が開通した。
だがいつ瓦礫が崩れてくるかわからないのだ。命の保証は出来ない。
『ここは上が開けているから安全です。私たちが道を探してきます。来たい人は来ても良いですが自分の身は自分で守って下さい。』
モリス調でおっとりと、だがシビアなセリフを口にする。
(しまったなーカラコン(カラーコンタクト)置いて来ちゃったんだよなー)
新一の姿に戻れないのはそれが理由だった。
あんな神秘の蒼い瞳の人間がそうそう居るはずもなく今はグレーのカラコンをしている。
外せばこれまた珍しい紫紺の瞳を晒す事になるだろう。
(この格好動きにくいんだよなー)
カバほどではないが小太り体型の為素早い動きの支障になる(とは行ってもほんのささやかな物だが)

モリスの毅然としたセリフにたじたじとした民衆の中、いの一番に手を挙げたのは相変わらず元気なマリアだった。
『私は行くわよ。ピエロちゃん達も気にかかるし』
『当然アリスも行きますわっ』
『一人置いて行かれるのはいやね、私も行くわ』
その後アリス、メアリが続いて手を挙げた。

そして一拍おいて、

『俺らも・・その・・仲間とはぐれたから』
と5、6人の正確には5人の若い青年達が立ち上がった。
そして次に女性が恐る恐る右手をあげ、次々と人は増えていった。
それに快斗が目を少しだけ細くし小さく頷く。
『それでは行きましょうか』




ピエロ

『うーん』
彼はさっきから一人で唸っていた
真っ暗闇の中、道が見つからず困っていたのである。
『何唸ってんだ?』
ほぼ真後ろからそんな声がかけられ彼、ピエロは声にならない叫びをあげた
『――――――――――っっっ』
ドクドク鳴り響く心臓を押さえ声の主に思い当たりクルリと振り返った。
『ボールさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん』
驚かさないで下さいようぅぅぅと恨めしい声をあげた。
目に涙が溜まっているが暗闇で相手に見えないだろうとピエロはホッとした。
見えていたら絶対からかわれるに決まっているのだから。
『なんだよ。ちょっと脅かしたくれーで泣くかフツー?』
『泣いてませんっっ』
『うっそこけーー目に涙発生させといて何言ってやがんだ』
『!!!』
み・・見えるのかこの人っっっ
ピエロは人間離れしたボールの特殊能力におののいた。
『なんだよ?』
『いっっいえ。もしや暗視ゴーグルでもしているのでは・・と思いまして・・はい・・』
『はあ?面白い事言い出すなお前。見えるわけねーだろこんな暗闇ん中で。単にお前の行動が予想できるだけだよ。っつーことはやっぱり泣いてたのか。はっはっはーーー』
シンとした暗闇にボールの笑い声が響くがそれに頓着せず彼は笑い続ける。
その見事なマイペースっぷりに
(さすがボールさん)
とかなんとか良く分からない感心をしてしまうピエロ。
そして笑った時と同様突然に笑いを治めるとボールは思い出したといったように手のひらをポンと叩いた。
『ああ。そうそう。さっきはあいつ助けてくれてありがとな。』
『え?』
"あいつ"が誰のことかとっさに解らず、初めてボールからお礼を言われたなーとビックリしていたピエロは少し照れた様子のボールに気付かなかった。
そしてようやく"あいつ"がアリスの事に思い至り納得仕掛けた頃

『んじゃま。探しに行くか。』
ボールはサクサクと一人背をむけ歩き出した。
それにピエロは慌てて追いかけた。
『待って下さいよーー』





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